Welcome To My ”俺の感性”

墓っ地・ざ・ろっく!

2021年10月

Parannoul / Asian Glow / sonhos tomam conta - Downfall of the Neon Youth

Artist Parannoul / Asian Glow / sonhos tomam conta
0026298594_10

Split 『Downfall of the Neon Youth』
ab67616d0000b273741f6ff6faa5a3876784c4b2

Tracklist
01. Nails
02. Insomnia
03. todos os sonhos que eu tive
04. Phone Ringing on Corridor
05. Colors
06. tons de azul
07. one May Be Harming
08. vento caminha comigo
09. 70 Seconds Before Sunrise
10. Love Migraine

2021年度のBandcamp界におけるバズり音源の一つであり、庵野秀明の『新世紀エヴァンゲリオン』や岩井俊二監督の映画『リリィ・シュシュのすべて』をはじめとする日本の90年代サブカルチャーからの強い影響を公言する、韓国ソウル出身のParannoulの2ndアルバム『To See the Next Part of the Dream』は、全ての作曲工程をDTMで完結させるイマドキのインディーズ・ミュージシャンである彼の存在証明となる、そしてシューゲイザー史に名を残す歴史的な名盤となった。そんな彼と同じくして、今年のBandcamp界隈を賑わせた同郷ソウル生まれのAsian Glowとブラジル出身のsonhos tomam conta、そんな“ズッコケ三人組”ならぬ“ぶっ壊れメンタル三人組”が一堂に集結して生まれた奇跡のスプリット作品が本作の『Downfall of the Neon Youth』で、その内容も2021年の上半期に各々が発表したぶっ壊れローファイ作品よりもメンタルぶっ壊れまくってて、不謹慎ながらも大傑作としか言いようがない1枚となっている。

2000年にブラジルはサンパウロで生まれたsonhos tomam contaの人物像を簡潔に、それこそ彼が7月に発表した3ndアルバム『Hypnagogia』のセルフライナーノーツから引用させてもらうと、彼が14歳の時に初めて自殺を思い立ち、自分の人生にはもう何年も残されていないことを悟ると、毎週のようにセラピーを受けては抗うつ剤や抗精神病薬、抗不安薬などの20種類以上の薬に頼っても効果がない、そして毎日のように双極性障害や境界性人格障害、または社会不安との戦いに敗れて無気力状態に陥ると自傷行為に及び、アルコールやドラッグで自分を麻痺させる事にも2mgのザナックスを飲むことにも疲れ切った、言うなれば「ブラジルのParannoul」とでも称すべき完全に心がぶっ壊れちゃってるミュージシャンである。そんな彼もParannoulと同じく滝本竜彦の小説『NHKにようこそ!』をはじめ、今敏の映画『パプリカ』や98年のトラウマSFアニメ『serial experiments lain』をはじめとする日本の90年代サブカルチャーの影響を公言する一人だ。

そんな彼の音楽性も眠らない街サンパウロを華やかに照らし出すネオンを遠目に真夜中の公園で独り佇むような、アルペジオギター中心のシューゲイザー/ポストロックや90年代のMidwest emo(イーモウ)の影響下にある、そして彼がインスパイヤされたと語るデイヴィッド・リンチ脚本の映画『マルホランド・ドライブ』の迷宮を彷徨うかの如し、リアル白昼夢のイーサリアルかつアトモスフェリックなサウンドスケープを繰り広げている。特に3ndアルバムの『Hypnagogia』では、孤独に苛まれて凍え死ぬかのような荒涼感溢れる轟音ノイズと、毎日リスカして自殺を試みるも死にきれないメンヘラ男の悲痛な叫び声や苦痛に満ちた金切り声をフィーチャーした、いわゆるBlackgazeやポストメタル指数を著しく高めたデプレッシブ然とした作品となっており、聴いているだけで危うくそっち側に引きずり込まれそうになる。

2001年に韓国ソウルに生まれたAsian Glowは、ブラジルのsonhos tomam contaParannoulとも共通する内省的なアプローチは元より、アコースティックなインディーフォークを基調としながらもMidwest emoやマスロック、ノイズ・ポップやシューゲイザー要素を取り入れたオルタナティブなスタイルを特徴としており、また全編英語詞で歌っている点からも三人の中では最も90年代のemo(イーモウ)へのリスペクトが強いインテリ系ミュージシャンと言える。他の二人の音楽性が暗く冷たいウェットなイメージだとすると、このAsian Glowは比較的カラッとした明るく温かいオーガニックな音像みたいな。また、先日リリースされた16分にも及ぶシングルの“pt.2345678andstill”では、ノイズ/マスロック~プログレ要素みならず、エイフェックス・ツインばりのエレクトロニカやグリッチ方面へのアプローチを垣間見せる、著しく実験的な側面が強すぎるバグった名曲を産み落としている。

このスプリットにおける一番バッターを飾るAsian Glowは、#1,#4,#7の計3曲を担当しており、ソロというか自身の作品と比較するとインディー路線というよりも、正直かなりParannoulを彷彿とさせるノイズロック/マスロック寄りのコアな方向性に引っ張っれている印象。露骨に16分シングルの実験的なアオリを受けた#1“Nails”をはじめ、本作における彼の“コアさ”を象徴する#4“Phone Ringing on Corridor”では、プログレ然とした転調やカオティックなブラストビートやグリッチ/ノイズをもって、自身のぶっ壊れローファイメンタルをバリバリと激しく音を立てながら突き破るような新時代のノイズロックを、そして#7“one May Be Harming”では(ほのかにThe Pineapple Thiefみを醸し出しながら)日本のオルタナレジェンド=NUMBER GIRLに肉薄するオルタナティブなハードコア/マスロックを繰り広げている。もしかすると彼は、今回のスプリット音源と今年ドロップした音源の乖離が三人の中で最も大きく、最もぶっ壊れ性能高ぇんじゃねぇかってほどに。

このスプリットにおいて#3,#6,#8の計3曲を担当するsonhos tomam contaに関しても、Asian Glowと同様にParannoulぶっ壊れローファイ/ノイズ全開のスタイルに引っ張られている印象。確かに、Parannoul名盤To See the Next Part of the Dreamにおいて、『リリィ・シュシュのすべて』『NHKにようこそ!』のサンプリングを駆使して超絶エピックな激情ハードコアに化けたかと思えば、“Age Of Fluctuation”に象徴されるような初期デフヘヴンmeet後期アナセマみたいなBkackgazeやノイジーなギターロックやってみたりと、現在進行系でシューゲイザー/ノイズの新しい形をシーンに提唱してみせた。そんなParannoulの革新的なスタイルに面食らったsonhos tomam contaの不安定な精神状態とシンクロするぶっ壊れローファイメンタルが炸裂する轟音ノイズと、一転して街頭のネオンが薄明かりに照らし出すドリーミーなアルペジオギターが交錯する#3“todos os sonhos que eu tive”をはじめ、Asian Glowのぶっ壊れメンタルとシンクロするようなぶっ壊れブラストビート主体の#6“tons de azul”、そして#8“vento caminha comigo”ではローファイ・ブラストビートと金切り声を撒き散らしながら、初期KATATONIA級の自殺メンタルとシンクロするアトモスフェリックな世界観をもって、いわゆるアンダーグラウンドなローファイ・ブラックメタルの領域を超越した、もはやぶっ壊れメンタルの美学すら覚えるような、そのローファイ・ブラックメタルをZ世代の視点から紐解いたある種のローファイ・ブラックゲイズだ。

そんな彼ら“ぶっ壊れ三人組”に共通するのは、2000年生まれを中心とするいわゆるZ世代の若者であるということ。そしてもう一つ、ブラジルの大都市サンパウロと韓国の首都ソウルという都市部に生まれた若者がこの現代社会に感じる孤独と将来への不安、それこそParannoulの名盤『To See the Next Part of the Dream』のセルフライナーノーツから言葉を引用させてもらうと、妄想」「劣等感」「過去」「不適応」「逃避」「妄想と幻滅」「闘争」「最も平凡な存在」「無気力」「自殺などの、現代のストレス社会に適合できなかった若者たちが心の内に抱えた、さしずめ“ぶっ壊れメンタル”代表こと碇シンジくんばりに内省的で憂鬱な感情や自己嫌悪(身体的コンプレックス)やどうしようもない絶望感を、それぞれ自身の音楽に投影しているシンクロ率にある。彼らを映画『シン・エヴァンゲリオン』のリツコのセリフから引用して例えるなら、ゲンドウに対する神に屈した絶望のリセットではなく、希望のコンティニューを選びますの名ゼリフを真っ向から否定するような、むしろ積極的にTVシリーズ以前のエヴァにおける絶望のリセットの世界線に向かった人達であり音楽なんですね。

なんだろう、ぶっ壊れメンタル三人組の各々が心に宿すATフィールドを持ち寄って中和された薄くて脆いガラスハートのパリパリATフィールドを、「自分の心の中にあるクソみたいなATフィールドを3㌧ハンマーでぶっ壊せ!」とばかりに「ロンギヌスの槍」「カシウスの槍」「ガイウスの槍」という“三本の槍”をもって各々が自分自身にブッ刺すことで、最終的に彼らにとって効き目のない薬よりも最良のセラピーであり精神安定剤として機能する今回のスプリット作品は、負け犬は負け犬でも“アクティブな負け犬”による地球の裏側に住むアクティブな負け犬のための、あるいはブラック企業に11年勤務してメンタルぶっ壊れた僕みたいなケーセッキ(犬野郎)に贈る真の人間讃歌である。その薄くて脆い㍉のガラスハートが粉々に砕け散った鋭利なローファイ/ノイズ・ミュージックは、昨今のトレンドであるローファイ・ヒップホップに対するZ世代なりの解釈であると同時に、内省的というエモを司る概念を超越した古谷実漫画の主人公のぶっ壊れメンタルともシンクロさせながら、最期は三人のぶっ壊れメンタリストが持つ“コア”な面と“コア”な面を重ね合わせたハードコアな負け犬根性をもって、このクソサイテーな世界を覆うATフィールドを3㌧ハンマーで叩き割って無事にエンディングを迎える。

彼ら三人のシンクロ率を高める、その内省的な感情の根幹部にあるハードコアな90年代エモムーブメントを象徴するミッドウェスト・エモをルーツとするミュージシャンでありながらも、各々が全く違う角度から一種のエモリバイバルとして咀嚼するZ世代の音楽センスに改めて脱帽する。また、エモならではのおセンチな感情をさらけ出す姿にはミレニアル世代のケーセッキとしてシンパシーを感じえないし、それこそ碇シンジ級のぶっ壊れローファイメンタルを煮詰めたような作品なので、今現在メンタルが弱ってたり病んだりしてる人やニートの僕みたいなリアル負け犬が聴くと別の意味でガンギマるからガチで注意したほうがいいですw

今回のスプリット作品における大本命であり大トリを担うParannoulにいたっては、65daysofstaticPendulumを連想させるドラムンベース的なエレクトロビーツを刻みながらPost-Progressiveなアプローチを垣間見せる#2“Insomnia”を皮切りに、グリッチーな導入から本家本元のぶっ壊れハードコアメンタル~ポストメタルラインの轟音を叩き込みつつ、トラップやピアノ/アンビエント/ニューエイジの要素を折り込みながら俄然ポスト・プログレッシブに構築する#5“Colors”、タイトル通り70秒のアンビエント/ニューエイジ系インストの#9を挟んで、本作の大トリを飾るラストの#10“Love Migraine”では、さすがに“ぶっ壊れ三人組”のリーダーだけあって、前半のメランコリックなムードからヘヴィ・シューゲらしい激しくエモーショナルな轟音が炸裂する後半まで着実に泣かせてくれる。

今回のスプリット、他の二人がリーダーのParannoulにシンクロしているだけあって全体的にPost-Progressive、すなわちana_thema化が顕著に現れた作品であると同時に、それこそ音楽ジャンルや性別の垣根を超えたLiturgyハンターハント・ヘンドリックス並の超越的(transcendental)な革新性を露見してて溜息しか出ないというか、上半期の音源からたった半年足らずで更に進化している彼らZ世代の成長力の高さにビビる。そのように国籍も言語も違うZ世代なりの解釈をもって、それぞれの得意分野で全く新しい音楽ジャンルを生み出さんとしてるのは、もうなんか笑うしかない。やっぱ各々のぶっ壊れATフィールドを互いに中和させた結果、その相乗効果によって限界突破したとしか思えない。とにかく、その音楽制作における常識や固定観念(ステレオタイプ)などの既成概念を叩き壊さんとする革新的なハードコア精神に溢れたアクティブな負け犬のカッコよさに慟哭不可避。

ブラジルの大都市サンパウロ、韓国の首都ソウルときて、なぜ日本の首都である東京のZ世代からぶっ壊れミュージシャンが現れる気配がないのか?しかし、それはいかに今の東京が魅力のないオワコン都市であるかを裏付けているのかもしれない。その件に関してちょっと皮肉っぽく推測すると、世界でも有数の若者が政治参加しない国として知られる日本は、Z世代の若者が老害主導の日本の未来に絶望して既に“ぶっ壊れ三銃士”に匹敵するぶっ壊れメンタルになってるから(既に)、だから選挙の投票率も低いんじゃねぇか説w

The World Is A Beautiful Place & I Am No Longer Afraid To Die - Illusory Walls

Artist The World Is A Beautiful Place & I Am No Longer Afraid To Die
A-2074432-1368651925-5260.jpeg

Album 『Illusory Walls』
a2340103311_16

Tracklist
1. Afraid To Die
4. Blank // Drone
5. We Saw Birds Through The Hole In The Ceiling
6. Died In The Prison Of The Holy Office
7. Your Brain Is A Rubbermaid
8. Blank // Worker
9. Trouble
10. Infinite Josh
11. Fewer Afraid

フィラデルフィアはペンシルバニアを拠点に活動する、コネチカットはウィリマンティック出身の5人組ことThe World Is A Beautiful Place & I Am No Longer Afraid To Dieは、それこそ90年代のエモシーンを象徴するMidwest emoを産み出した中西部生まれだけあって、そして西海岸サンフランシスコを代表するDeafheavenとレーベルメイトのエピタフ系ならではの伝統的なemo(イーモウ)/ポスト・ハードコアの精神性および「死」にまつわるリリックを軸に、ポストロックならではのリリカルでミニマルな叙情性とプログレ/オルタナならではのアトモスフェリックでドラマティックな楽曲構成、そしてボーカルのデヴィッドと紅一点ケイティからなるツインボーカルの絶妙な距離感が保たれた奇跡的なバンドで、そんな彼らの約4年ぶりとなる4thアルバム『Illusory Walls』は、これまで地域性に根付いた情緒豊かな音楽性を貫いてきた彼らが、ここにきてemo(イーモウ)というイチジャンルを超越したスケールのデカいバンドとして覚醒している。


それこそ幕開けを飾る世界は美しい、もう死ぬのは怖くないというバンド名を冠する#1“Afraid To Die”からして、中西部ネイティブらしいアルペジオ・ギターのメロディがAlcestの1stアルバムに通ずる映画『エコール』ばりに幻夢的なおとぎ話のロリータ世界に誘うと、一瞬暗転してダイナミックなバンドサウンドが合流して近年のBTBAM顔負けのプログレっぷりを垣間見せる。紅一点ケイティのケロケロボニトばりにバブルガムみのあるポップな歌声をフィーチャーした#2、Rolo Tomassiのエヴァみのあるケイティのボーカルとサイケ/アトモスフェリックなシンセを効かせたヘヴィ・プログレ志向の高い#3、バンドの持ち味の一つである優美なストリングスをフィーチャーしたインディ指数の高い#4、その流れを引き継いでストリングスを駆使したアトモスフェリックな静謐的空間を形成する前半から、SWソロみのあるヘヴィ・プログレ然としたギターリフを駆使しながら後半にかけて徐々に強度を上げていく、確実にdredgの正統後継者を襲名しにきてる#5、夜空に煌めくシンセとギターが織りなすポストロック然としたスペーシーな叙情性が織りなす冒頭から一転して、メロコア風に疾走したりヘヴィなギターを駆使したりと転調を効かせながらダイナミックに展開していく、もはや確実にBTBAMの正統後継者を襲名しにきてる#6、その喜劇的な流れを引き継いで壮麗なオーケストレーションとヘヴィなギターとケイティのフィメールボイスをフィーチャーした#7、フィラデルフィアを代表するThe War on Drugsリスペクトなインディロックの#8、本作で最もポスト・ハードコア気質の高い#9、そして本作のハイライトを飾る約16分におよぶ#10“Infinite Josh”と約20分におよぶ#11“Fewer Afraid”という二大超大作まで、バンド史上最長となるアルバムトータル70分超えに耐えうる作品としての強度のみならず、一曲の長さとしても最長を立て続けに更新するこの二つのポストロック大作は、まさに本作を司るコンセプチュアルなロリータ物語の解像度を著しく高める真珠の名曲と言える。物語が結末を迎える#11では、バンド名のThe World Is A Beautiful Place & I Am No Longer Afraid To Dieがメインコーラスの歌詞としてガッツリ引用している点も、冒頭の“Afraid To Die”で起こったこの物語の起承転結を暗示している。

なんだろう、アルバムと楽曲の尺までフルアーマープログレ仕様となった本作を例えるなら、メタル界で言うところのBTBAMがマクロな存在だとすると、このThe WIABP&IANLATDはemo(イーモウ)界におけるミクロなBTBAM的な存在というか。端的に言ってしまえば、完全にコッチ側の領域に足を踏み入れてきた作品であることは確か。それはメタル耳にも確実に刺さるギターの音作りやトリッキーなリフメイクを耳にすれば一瞬でセンスの塊と理解できるくらいに。リアルな話、『普通の堕落した人間の愛』あたりのDFHVNに影響を与えた張本人なんじゃねぇかって、そして昨今のトレンドとは真逆をゆく一時間超えの音源を久々に途中で飽きずに最後まで聴いた気がするほど、本作はとにかく楽曲の強度が尋常じゃなく高い。もはやBTBAMと一緒にツアー回っても全然おかしくないレベルだし、とにかく一昔前の洋楽ロックのステレオタイプみたいな雰囲気、あるいは初めて洋楽聴いた時の懐かしさだったりノスタルジーを誘うメランコリックなメロディが最高のバンドだから聴いて。とりあえずというかなんでもBTBAMが好きなら絶対に聴いて。

星街すいせい - Still Still Stellar

VTuber 星街すいせい
d30268-522-28ecadc09acd803d0198-0

Album 『Still Still Stellar』
FAsaZ-tVEAAtriy

Tracklist
01. Stellar Stellar
02. NEXT COLOR PLANET
03. 天球、彗星は夜を跨いで
04. GHOST
05. バイバイレイニー
06. 自分勝手Dazzling
07. Bluerose
08. comet
09. Andromeda
10. Je t'aime。
11. Starry Jet
12. 駆けろ

今やサンリオをはじめとする一端の企業の広告塔としてリアル社員採用されるまでとなった、今をときめく“バーチャルYouTuber”ことVTuber界隈を牽引する天下のホロライブプロダクション所属の“永遠の18歳”を自称する“すいちゃん(愛称)こと星街すいせいの1stアルバム『Still Still Stellar』は、すいちゃんの共同作曲者としてアニメ・ゲーム関連楽曲に携わっている複数のコンポーザーを迎え制作された王道アニソン系のポップスを繰りホロげている。

それこそ、新海誠映画『君の名は。』のティアマト彗星に乗り移ったすいちゃんが地球を一周して、その蒼い彗星のごとく美しい軌道を描く歌声が世界中に轟く#1“Stellar Stellar”を皮切りに、ジャジーでアダルティなピアノが軽やかに舞うマイナーチューンの#3“天球、彗星は夜を跨いで”、すいちゃん“キレイなAdo”と化すアクションアニメの主題歌にタイアップ不可避のエモーショナルな#4“GHOST”、もはや『カウボーイビバップ』の新キャラとして登場する勢いのジャズ/フュージョン風のオシャンティな#5“バイバイレイニー”、従来のアニソンにはないイマドキ風のアレンジを効かせたギャップ萌えすいちゃんの#6“自分勝手Dazzling”、ピコピコした打ち込み中心の少女漫画原作アニメのタイアップ不可避な#7“Bluerose”、すいちゃんの歌い手としての表現力の豊かさを裏付けるロックバラードの#9“Andromeda”、再び“キレイなAdo”と化して貴重なラップを刻む#11“Starry Jet”、四つ打ち邦ロック志向の強い#12“駆けろ”まで、ホロかにAdoみのあるすいちゃんの歌声は、90年代のJ-POPを彷彿とさせるビーイング系のアレンジや『カウボーイビバップ』でもお馴染みの菅野よう子風のジャジーでファンキーなアレンジを駆使しながら、銀河系の数ばりに多彩なすいちゃんの歌声を聴かせる。

その楽曲を聴いていると、すいちゃんが目指す武道館ライブで青いサイリウムを振り回してフッフ~と奇声を上げながら推しジャンしてる景色が頭の中に浮かぶような、そしてライブの最後にはホロホロと涙をこぼしているのが容易に想像できる。事実、先ほど豊洲PITで開催された1stソロライブ『STELLER into the GALAXY』において、リアルのライブ会場とネット回線を介したデジタル配信という双方の観客を前にしたライブパフォーマンスは、まさにポストコロナ時代の“今”を密に映し出す歴史的なライブとなった。そのライブでも垣間見せた、CD音源を凌駕するすいちゃんの歌声は「たかがVチューバー」と侮るなかれ、俄然“キレイなAdo”としてAdoの名曲“うっせぇわ”のカバーをキボンヌしたいレベル。また、先日の1stソロライブでは“comet”のジャズアレンジなどの粋な演出やVチューバーのAZKi戌亥とことのコラボ曲を披露し、改めてVTuber界隈の横の繋がりはVTシーンの繁栄に直結する最大の要因と言える。

個人的に、この手の非実在ナンチャラの流行からフラッシュバックするのは、大昔に2ちゃんねるのVIPと今はなき『こえ部』で若本規夫御大の声真似してアナゴさんごっこしてた、ある意味でVチューバーを先取りしていた黒歴史が頭ん中に蘇って「うっ・・・頭が」ってなった。こうなったら、すいちゃんに触発されて今日からエセ若本規夫ボイスの33才のおっさんVチューバーとして頑張っていきたいと思います!よろしくお願いします!(←需要ねぇからカスw)そして、ホロライブ入りに成功したアナゴさんとすいちゃんが熱愛発覚して2秒で炎上するまであるぞこれ・・・!(←ねぇよカスw)

Knocked Loose - A Tear In The Fabric Of Life

Artist Knocked Loose
A-4265602-1566882505-5588.jpeg

EP 『A Tear In The Fabric Of Life』
a1285157503_16

Tracklist
01. Where Light Divides The Holler
02. God Knows
03. Forced To Stay
04. Contorted To The Faille
05. Return To Passion
06. Permanent

【ゴジラ+メシュガー=メシュゴジラ】という“10年代メタル王様ランキング”の上位ツートップがシーンに示した、いわゆる“10年代のヘヴィネス”と2020年以降の“20年代のヘヴィネス”を紡ぎ出す後継者としての新世代メタルを代表するコード・オレンジやボストン・ハードコアのvein、そして現にゴジラのツアーサポートとしてフックアップされているケンタッキー州はオールダム出身のKnocked LooseのEP『A Tear In The Fabric Of Life』は、彼らの専売特許であるビートダウン連発のデスウィッシュ系ハードコア・パンク/メタルコア側から、ライバルのveinに負けじとゴジラに代表される10sヘヴィネスの継承者を名乗り出るかのような一枚となっている。


何せ、Every Time I Dieveinの作品でもお馴染みのプロデューサー兼エンジニアのウィル・パットニーお抱えのバンドって時点で色々と察せなくもない立ち位置にいるバンドではあるが、中でも筆頭すべきは精神的な根っこはゴリゴリのハードコアながらも、スラッシュメタル王のスレイヤーの影響下にある殺傷力の高いソリッドなリフやHatebreedのジェイミー・ジャスタもビックリの無慈悲な脳筋ヘヴィネスをはじめ、特に20年代初の作品となるこのEPに限っては、往年のゴジラが生み出した白鯨が引き起こす大津波級のヘヴィネスはもとより、ライバルのvein的なインテリジェンス溢れるマス系のヘヴィネスとEPならではの実験性を垣間見せる、俄然スラッシーかつメタリックな過去イチで“メタル”やってる作風となっており、もはやいつロードランナーに引き抜かれるか状態にある。

出自がボストン・ハードコア系のveinといい、出自がガチデスウィッシュ系のコード・オレンジといい、ゴッリゴリのハードコア文脈から徐々にメタルへシフトしていく一連の動きはこの界隈における既定路線みたいなもんで、ここにきて若手ハードコア界の大本命が新世代メタルと邂逅してきた事に対しては、メタラー的には素直に歓迎したい所存ではある。そんな彼らの“新世代メタル化”を象徴する、まだ“生みの親”であるスラッシュメタル四天王の影響下にあった時代の白鯨を20年代仕様にアップデイトさせたような、Knocked Looseにとってある種の“生みの親”である白鯨への回答としての2“God Knows”は、1stアルバムの“Deadringer”でもお馴染みの急な転調から謎のムード歌謡ブッ込みギミックを踏襲している。ともあれ本作は、間違いなくバンドの底上げとなること必須の作品であり、それすなわちバンドの未来を指し示す、彼らの今後の方向性を暗示するかのような作品でもある。

slowthai - TYRON

Artist slowthai
slowthai-15

Album 『TYRON』
inini

Tracklist
01. 45 SMOKE
04. VEX
05. WOT
06. DEAD
07. PLAY WITH FIRE
08. i tried
09. focus
10. terms feat. Dominic Fike & Denzel Curry
11. push feat. Deb Never
12. nhs
14. adhd

「デンゼル・カリーの新譜カッケー!」と思ったら、どうやらイギリスはノーサンプトン出身のラッパーことslowthaiだったらしく、そんな彼が今年の2月にリリースした2ndアルバム『TYRON』の何が凄いって、アルバム前半の大文字タイトルはエイサップ・ロッキーKenny Beatsをフィーチャーした曲をはじめ、それこそデンゼル・カリーの名盤『タブー』の系譜にあるトラップやパンク・ロックの新しい形と謳われるグライム・パンクをベースとしたUKヒップ・ホップに対して、アルバム後半の小文字タイトル曲はオルタナティブな側面を強調したスタイルに楽曲の雰囲気や世界観が反転するそのギャップにある。


それはまるで、先日リリースされたZellaKamiの1stアルバム『DOG BOY』におけるジャンルとジャンルの垣根を超えた次世代ラッパーとして共鳴するかのように、アルバム後半の小文字シリーズの幕開けを飾る、倦怠感丸出しのローファイ・ヒップホップ風なチルいトラックをフィーチャーした#8“i tried”や#9“focus”を皮切りに、SSWのドミニク・ファイクとデンゼル・カリーをフィーチャリングしたバキバキのエモ・ラップで泣かせる#10“terms”、からギャップレスに繋がって内省的な雰囲気から世界観が一転する#11“push”は、それこそUK産SSWのマリカ・ハックマンばりのアコースティックな癒やし系インディフォークとスロウタイのラップが極自然に馴染んでいる光景に衝撃を受けたというか、もはや「こんなラップありなん?!」と頭の切り替えが追いつかなかった。その癒やし系な雰囲気のまま、今度はピアノ主体のアンビエント・ポップとラップが邂逅する#12“nhs”、そしてUK音楽界のレジェンド=ジェイムス・ブレイクとコラボした#13“feel away”、そして最後までローファイで内省的な感情をハードコア・ラップばりに吐き散らす#14“adhd”まで、とにかくアルバム前半の大文字シリーズにおける英首相をディスるマクロなラップと、アルバム後半の小文字シリーズにおけるミクロなラップのギャップが本作のコンセプト、そのガキを握る作品となっている。

このslowthaiの新譜とZellaKamiの新譜、言うなれば双方の「新しいラップのあり方」を耳にして改めて思うのは、ラップってオルタナ/グランジやメタルのみならず、畑違いが過ぎる女性ボーカル系のフォーク・ミュージックやアンビエント・ポップすらも許容する寛容のジャンルなんだって事。また、奇しくもUKとUSを代表する若手ラッパーが揃って90sロックのレジェンド=Nirvanaに影響を受けているという意味でも、あのロック全盛時代から約30年が経過した今なおNirvanaは元より90sロックが現代のラップ界に与える影響は計り知れないものがあると痛感すると同時に、ラップこそロックでありパンクだと語る炎上芸人の言葉が俄然身に詰まされる。ともあれ、今年のラップ部門はロックやメタルの影響下にあるスロウタイとジラカミの新譜2枚と、デンゼル・カリーとKenny Beatsのコラボ作品『UNLOCKED 1.5』における“So.Incredible.pkg”が見事入選しました。
記事検索
月別アーカイブ
アクセスカウンター
  • 累計: