Artist Parannoul / Asian Glow / sonhos tomam conta

Split 『Downfall of the Neon Youth』

Tracklist
01. Nails
02. Insomnia
03. todos os sonhos que eu tive
04. Phone Ringing on Corridor
05. Colors
06. tons de azul
07. one May Be Harming
08. vento caminha comigo
09. 70 Seconds Before Sunrise
10. Love Migraine
ブラジルの大都市サンパウロ、韓国の首都ソウルときて、なぜ日本の首都である東京のZ世代からぶっ壊れミュージシャンが現れる気配がないのか?しかし、それはいかに今の東京が魅力のないオワコン都市であるかを裏付けているのかもしれない。その件に関してちょっと皮肉っぽく推測すると、世界でも有数の若者が政治参加しない国として知られる日本は、Z世代の若者が老害主導の日本の未来に絶望して既に“ぶっ壊れ三銃士”に匹敵するぶっ壊れメンタルになってるから(既に)、だから選挙の投票率も低いんじゃねぇか説w

Split 『Downfall of the Neon Youth』

Tracklist
01. Nails
02. Insomnia
03. todos os sonhos que eu tive
04. Phone Ringing on Corridor
05. Colors
06. tons de azul
07. one May Be Harming
08. vento caminha comigo
09. 70 Seconds Before Sunrise
10. Love Migraine
2021年度のBandcamp界におけるバズり音源の一つであり、庵野秀明の『新世紀エヴァンゲリオン』や岩井俊二監督の映画『リリィ・シュシュのすべて』をはじめとする日本の90年代サブカルチャーからの強い影響を公言する、韓国ソウル出身のParannoulの2ndアルバム『To See the Next Part of the Dream』は、全ての作曲工程をDTMで完結させるイマドキのインディーズ・ミュージシャンである彼の存在証明となる、そしてシューゲイザー史に名を残す歴史的な名盤となった。そんな彼と同じくして、今年のBandcamp界隈を賑わせた同郷ソウル生まれのAsian Glowとブラジル出身のsonhos tomam conta、そんな“ズッコケ三人組”ならぬ“ぶっ壊れメンタル三人組”が一堂に集結して生まれた奇跡のスプリット作品が本作の『Downfall of the Neon Youth』で、その内容も2021年の上半期に各々が発表したぶっ壊れローファイ作品よりもメンタルぶっ壊れまくってて、不謹慎ながらも大傑作としか言いようがない1枚となっている。
2000年にブラジルはサンパウロで生まれたsonhos tomam contaの人物像を簡潔に、それこそ彼が7月に発表した3ndアルバム『Hypnagogia』のセルフライナーノーツから引用させてもらうと、彼が14歳の時に初めて自殺を思い立ち、自分の人生にはもう何年も残されていないことを悟ると、毎週のようにセラピーを受けては抗うつ剤や抗精神病薬、抗不安薬などの20種類以上の薬に頼っても効果がない、そして毎日のように双極性障害や境界性人格障害、または社会不安との戦いに敗れて無気力状態に陥ると自傷行為に及び、アルコールやドラッグで自分を麻痺させる事にも2mgのザナックスを飲むことにも疲れ切った、言うなれば「ブラジルのParannoul」とでも称すべき完全に心がぶっ壊れちゃってるミュージシャンである。そんな彼もParannoulと同じく滝本竜彦の小説『NHKにようこそ!』をはじめ、今敏の映画『パプリカ』や98年のトラウマSFアニメ『serial experiments lain』をはじめとする日本の90年代サブカルチャーの影響を公言する一人だ。
そんな彼の音楽性も眠らない街サンパウロを華やかに照らし出すネオンを遠目に真夜中の公園で独り佇むような、アルペジオギター中心のシューゲイザー/ポストロックや90年代のMidwest emo(イーモウ)の影響下にある、そして彼がインスパイヤされたと語るデイヴィッド・リンチ脚本の映画『マルホランド・ドライブ』の迷宮を彷徨うかの如し、リアル白昼夢のイーサリアルかつアトモスフェリックなサウンドスケープを繰り広げている。特に3ndアルバムの『Hypnagogia』では、孤独に苛まれて凍え死ぬかのような荒涼感溢れる轟音ノイズと、毎日リスカして自殺を試みるも死にきれないメンヘラ男の悲痛な叫び声や苦痛に満ちた金切り声をフィーチャーした、いわゆるBlackgazeやポストメタル指数を著しく高めたデプレッシブ然とした作品となっており、聴いているだけで危うくそっち側に引きずり込まれそうになる。
2001年に韓国ソウルに生まれたAsian Glowは、ブラジルのsonhos tomam contaやParannoulとも共通する内省的なアプローチは元より、アコースティックなインディーフォークを基調としながらもMidwest emoやマスロック、ノイズ・ポップやシューゲイザー要素を取り入れたオルタナティブなスタイルを特徴としており、また全編英語詞で歌っている点からも三人の中では最も90年代のemo(イーモウ)へのリスペクトが強いインテリ系ミュージシャンと言える。他の二人の音楽性が暗く冷たいウェットなイメージだとすると、このAsian Glowは比較的カラッとした明るく温かいオーガニックな音像みたいな。また、先日リリースされた16分にも及ぶシングルの“pt.2345678andstill”では、ノイズ/マスロック~プログレ要素みならず、エイフェックス・ツインばりのエレクトロニカやグリッチ方面へのアプローチを垣間見せる、著しく実験的な側面が強すぎるバグった名曲を産み落としている。
このスプリットにおける一番バッターを飾るAsian Glowは、#1,#4,#7の計3曲を担当しており、ソロというか自身の作品と比較するとインディー路線というよりも、正直かなりParannoulを彷彿とさせるノイズロック/マスロック寄りのコアな方向性に引っ張っれている印象。露骨に16分シングルの実験的なアオリを受けた#1“Nails”をはじめ、本作における彼の“コアさ”を象徴する#4“Phone Ringing on Corridor”では、プログレ然とした転調やカオティックなブラストビートやグリッチ/ノイズをもって、自身のぶっ壊れローファイメンタルをバリバリと激しく音を立てながら突き破るような新時代のノイズロックを、そして#7“one May Be Harming”では(ほのかにThe Pineapple Thiefみを醸し出しながら)日本のオルタナレジェンド=NUMBER GIRLに肉薄するオルタナティブなハードコア/マスロックを繰り広げている。もしかすると彼は、今回のスプリット音源と今年ドロップした音源の乖離が三人の中で最も大きく、最もぶっ壊れ性能高ぇんじゃねぇかってほどに。
このスプリットにおける一番バッターを飾るAsian Glowは、#1,#4,#7の計3曲を担当しており、ソロというか自身の作品と比較するとインディー路線というよりも、正直かなりParannoulを彷彿とさせるノイズロック/マスロック寄りのコアな方向性に引っ張っれている印象。露骨に16分シングルの実験的なアオリを受けた#1“Nails”をはじめ、本作における彼の“コアさ”を象徴する#4“Phone Ringing on Corridor”では、プログレ然とした転調やカオティックなブラストビートやグリッチ/ノイズをもって、自身のぶっ壊れローファイメンタルをバリバリと激しく音を立てながら突き破るような新時代のノイズロックを、そして#7“one May Be Harming”では(ほのかにThe Pineapple Thiefみを醸し出しながら)日本のオルタナレジェンド=NUMBER GIRLに肉薄するオルタナティブなハードコア/マスロックを繰り広げている。もしかすると彼は、今回のスプリット音源と今年ドロップした音源の乖離が三人の中で最も大きく、最もぶっ壊れ性能高ぇんじゃねぇかってほどに。
このスプリットにおいて#3,#6,#8の計3曲を担当するsonhos tomam contaに関しても、Asian Glowと同様にParannoulのぶっ壊れローファイ/ノイズ全開のスタイルに引っ張られている印象。確かに、Parannoulは名盤『To See the Next Part of the Dream』において、『リリィ・シュシュのすべて』や『NHKにようこそ!』のサンプリングを駆使して超絶エピックな激情ハードコアに化けたかと思えば、“Age Of Fluctuation”に象徴されるような初期デフヘヴンmeet後期アナセマみたいなBkackgazeやノイジーなギターロックやってみたりと、現在進行系でシューゲイザー/ノイズの新しい形をシーンに提唱してみせた。そんなParannoulの革新的なスタイルに面食らったsonhos tomam contaの不安定な精神状態とシンクロするぶっ壊れローファイメンタルが炸裂する轟音ノイズと、一転して街頭のネオンが薄明かりに照らし出すドリーミーなアルペジオギターが交錯する#3“todos os sonhos que eu tive”をはじめ、Asian Glowのぶっ壊れメンタルとシンクロするようなぶっ壊れブラストビート主体の#6“tons de azul”、そして#8“vento caminha comigo”ではローファイ・ブラストビートと金切り声を撒き散らしながら、初期KATATONIA級の自殺メンタルとシンクロするアトモスフェリックな世界観をもって、いわゆるアンダーグラウンドなローファイ・ブラックメタルの領域を超越した、もはやぶっ壊れメンタルの美学すら覚えるような、そのローファイ・ブラックメタルをZ世代の視点から紐解いたある種のローファイ・ブラックゲイズだ。
そんな彼ら“ぶっ壊れ三人組”に共通するのは、2000年生まれを中心とするいわゆるZ世代の若者であるということ。そしてもう一つ、ブラジルの大都市サンパウロと韓国の首都ソウルという都市部に生まれた若者がこの現代社会に感じる孤独と将来への不安、それこそParannoulの名盤『To See the Next Part of the Dream』のセルフライナーノーツから言葉を引用させてもらうと、「妄想」「劣等感」「過去」「不適応」「逃避」「妄想と幻滅」「闘争」「最も平凡な存在」「無気力」「自殺」などの、現代のストレス社会に適合できなかった若者たちが心の内に抱えた、さしずめ“ぶっ壊れメンタル”代表こと碇シンジくんばりに内省的で憂鬱な感情や自己嫌悪(身体的コンプレックス)やどうしようもない絶望感を、それぞれ自身の音楽に投影しているシンクロ率にある。彼らを映画『シン・エヴァンゲリオン』のリツコのセリフから引用して例えるなら、ゲンドウに対する「神に屈した絶望のリセットではなく、希望のコンティニューを選びます」の名ゼリフを真っ向から否定するような、むしろ積極的にTVシリーズ以前のエヴァにおける「絶望のリセット」の世界線に向かった人達であり音楽なんですね。
なんだろう、ぶっ壊れメンタル三人組の各々が心に宿すATフィールドを持ち寄って中和された薄くて脆いガラスハートのパリパリATフィールドを、「自分の心の中にあるクソみたいなATフィールドを3㌧ハンマーでぶっ壊せ!」とばかりに「ロンギヌスの槍」「カシウスの槍」「ガイウスの槍」という“三本の槍”をもって各々が自分自身にブッ刺すことで、最終的に彼らにとって効き目のない薬よりも最良のセラピーであり精神安定剤として機能する今回のスプリット作品は、負け犬は負け犬でも“アクティブな負け犬”による地球の裏側に住むアクティブな負け犬のための、あるいはブラック企業に11年勤務してメンタルぶっ壊れた僕みたいなケーセッキ(犬野郎)に贈る真の人間讃歌である。その薄くて脆い㍉のガラスハートが粉々に砕け散った鋭利なローファイ/ノイズ・ミュージックは、昨今のトレンドであるローファイ・ヒップホップに対するZ世代なりの解釈であると同時に、内省的というエモを司る概念を超越した古谷実漫画の主人公のぶっ壊れメンタルともシンクロさせながら、最期は三人のぶっ壊れメンタリストが持つ“コア”な面と“コア”な面を重ね合わせたハードコアな負け犬根性をもって、このクソサイテーな世界を覆うATフィールドを3㌧ハンマーで叩き割って無事にエンディングを迎える。
彼ら三人のシンクロ率を高める、その内省的な感情の根幹部にあるハードコアな90年代エモムーブメントを象徴するミッドウェスト・エモをルーツとするミュージシャンでありながらも、各々が全く違う角度から一種のエモリバイバルとして咀嚼するZ世代の音楽センスに改めて脱帽する。また、エモならではのおセンチな感情をさらけ出す姿にはミレニアル世代のケーセッキとしてシンパシーを感じえないし、それこそ碇シンジ級のぶっ壊れローファイメンタルを煮詰めたような作品なので、今現在メンタルが弱ってたり病んだりしてる人やニートの僕みたいなリアル負け犬が聴くと別の意味でガンギマるからガチで注意したほうがいいですw
今回のスプリット作品における大本命であり大トリを担うParannoulにいたっては、65daysofstaticやPendulumを連想させるドラムンベース的なエレクトロビーツを刻みながらPost-Progressiveなアプローチを垣間見せる#2“Insomnia”を皮切りに、グリッチーな導入から本家本元のぶっ壊れハードコアメンタル~ポストメタルラインの轟音を叩き込みつつ、トラップやピアノ/アンビエント/ニューエイジの要素を折り込みながら俄然ポスト・プログレッシブに構築する#5“Colors”、タイトル通り70秒のアンビエント/ニューエイジ系インストの#9を挟んで、本作の大トリを飾るラストの#10“Love Migraine”では、さすがに“ぶっ壊れ三人組”のリーダーだけあって、前半のメランコリックなムードからヘヴィ・シューゲらしい激しくエモーショナルな轟音が炸裂する後半まで着実に泣かせてくれる。
今回のスプリット、他の二人がリーダーのParannoulにシンクロしているだけあって全体的にPost-Progressive、すなわちana_thema化が顕著に現れた作品であると同時に、それこそ音楽ジャンルや性別の垣根を超えたLiturgyのハンターハント・ヘンドリックス並の超越的(transcendental)な革新性を露見してて溜息しか出ないというか、上半期の音源からたった半年足らずで更に進化している彼らZ世代の成長力の高さにビビる。そのように国籍も言語も違うZ世代なりの解釈をもって、それぞれの得意分野で全く新しい音楽ジャンルを生み出さんとしてるのは、もうなんか笑うしかない。やっぱ各々のぶっ壊れATフィールドを互いに中和させた結果、その相乗効果によって限界突破したとしか思えない。とにかく、その音楽制作における常識や固定観念(ステレオタイプ)などの既成概念を叩き壊さんとする革新的なハードコア精神に溢れたアクティブな負け犬のカッコよさに慟哭不可避。
今回のスプリット、他の二人がリーダーのParannoulにシンクロしているだけあって全体的にPost-Progressive、すなわちana_thema化が顕著に現れた作品であると同時に、それこそ音楽ジャンルや性別の垣根を超えたLiturgyのハンターハント・ヘンドリックス並の超越的(transcendental)な革新性を露見してて溜息しか出ないというか、上半期の音源からたった半年足らずで更に進化している彼らZ世代の成長力の高さにビビる。そのように国籍も言語も違うZ世代なりの解釈をもって、それぞれの得意分野で全く新しい音楽ジャンルを生み出さんとしてるのは、もうなんか笑うしかない。やっぱ各々のぶっ壊れATフィールドを互いに中和させた結果、その相乗効果によって限界突破したとしか思えない。とにかく、その音楽制作における常識や固定観念(ステレオタイプ)などの既成概念を叩き壊さんとする革新的なハードコア精神に溢れたアクティブな負け犬のカッコよさに慟哭不可避。
ブラジルの大都市サンパウロ、韓国の首都ソウルときて、なぜ日本の首都である東京のZ世代からぶっ壊れミュージシャンが現れる気配がないのか?しかし、それはいかに今の東京が魅力のないオワコン都市であるかを裏付けているのかもしれない。その件に関してちょっと皮肉っぽく推測すると、世界でも有数の若者が政治参加しない国として知られる日本は、Z世代の若者が老害主導の日本の未来に絶望して既に“ぶっ壊れ三銃士”に匹敵するぶっ壊れメンタルになってるから(既に)、だから選挙の投票率も低いんじゃねぇか説w