Welcome To My ”俺の感性”

墓っ地・ざ・ろっく!

2021年08月

花冷え。 - 開花宣言

Artist 花冷え。
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EP 『開花宣言』
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Tracklist
1. Cherry blossoms are blooming
2. Envy
3. TIME OUT
4. ghost mania
5. ZERO
6. ドラスティック・ナデシコ

Crystal Lakeのメンバープロデュースによる1stフルアルバム乙女改革にド肝を抜かれたのもつかの間、先日サブスクで再配信された吉祥寺バンド花冷え。の2018年のデビュー作であるEP『開花宣言』は、1stアルバムと同じくCLの田浦氏プロデュースであるのにも関わらず、その内情としてはリフ的にも音作り的にも、このEPの方がオリジナリティに富んだことやってんじゃねぇか説あって、とにかく推定十代の時点で音作りのセンスがコード・オレンジ級なのはちょっとヤバスギるというか、流石に逸材と言わざるを得ない件について。

推定十代の頃からほぼ出来上がってるユキナのグロいデスボイスは改めて感心するほどのポテンシャルを発揮している。しかし、このEPに限ってはギタリストのマツリによる多彩なギタープレイに注目せざるを得ない。悪く言えばメタルコアというイチジャンルに取り憑かれ過ぎていた1stアルバムとは打って変わって、このEPではメタルコアのブレイクダウンだけに囚われず、Djentからコード・オレンジまでの現代モダン・ヘヴィネス交えたリフに次ぐリフで組み立てていくメタルの王道スタイルを踏襲した楽曲を中心に、もっと自由にもっと広い視点から現代的なモダンメタルやってる印象。なんだろう、1stアルバムほど気負ってない肩の力が抜けた感じというか、このEPのが花冷え。の本性により近いものだったりするのかもしれない。確かに、このEPは1stアルバムならではの硬派なメタルコアとkawaiiメタルとヒップホップ要素のギャップが希薄な分、より現代的にアップデイトされたジャパメタを継承したような音に聴こえる。


このEPの何が凄いって、まず冒頭の一曲目がエレクトロニカのインストってとこ。だってデビュー作で普通そんな余裕なくない?みたいな事を平然とやってのける時点でアブノーマル過ぎる才能の塊しかない。もちろん、その電子音はその後のバンドサウンドが轟かせる“本性”とのギャップを狙った演出である可能性も無きにしもあらず。その後はしっかりと聴き手のナニを玉冷え。させる花冷え。の本性を現す#2“Envy”は、ユキナのデスボとマツリのクリーンからなるツインボーカル体制を中心に、ベース担当ヘッツによる「ベースいるくね」なグルーヴィなプレイ、そしてマツリのギターから放たれるゴッリゴリのヘヴィネスやソロワークまで、まさに次世代ガールズバンドの“始まり”を『開花宣言』するに相応しい一曲となっている。冒頭からマツリのソリッドなリフやスラッシーなキザミなどのテクニカルなギターで構成された#3“TIME OUT”、そして日本の現代メタルコア界を代表するA Ghost of Flareのボーカルをゲストに迎えた#4“ghost mania”は、(さっきはメタルコアだけにとどまらないとか書いたけど)これがメタルコアじゃなかったら何やねんってなるくらいにはゴッリゴリのメタルコアで笑う。

で、冒頭から爽やかなクリーンギターを擁した青春真っ只中のガルバンらしいメロコア的な疾走感に反してピチピチのガルバンらしからぬ鬼ヘヴィネスが緩急を織り交ぜながら複雑怪奇に展開される、それこそ花冷え。の類まれなる楽曲構成力の高さを垣間見せる#5“ZERO”、要するに伊賀忍法帖的な“くノ一”に関するユニークな歌詞とともに、和風テイストのアレンジを効かせたブレイクダウンやブラストビートを交えたコード・オレンジ級のブルータルかつスラッジーなヘヴィネスが日本のメタルシーンを揺るがす#6“ドラスティック・ナデシコ”まで、ヘタしたら1stアルバムよりもトータルバランスの取れた完成度と、現代ヘヴィネスに対する音作りのセンスが光る玉冷え。不可避のデビュー作だ。

正直、1stアルバムは楽氏プロデュースのお陰でゴリマッチョなサウンドになったと勝手に解釈してたんだけど、このデビュー作聴いたらある意味でもっと硬派な事やってて笑ったわ。なにこの娘たち。キャッチーな聴きやすさとかポップさとか、リスナーに対する歩み寄りなんか微塵も考えてなさそうなドSっぷり、これぞまさに「吉祥寺初期衝動」としか形容できない、暴力的な音の塊で脳天ぶん殴られたような気持ちよさ。なんだろう、やっぱラウドロック/メタルシーンも今は「女の時代」なんだってことを証明するかのよう。ともあれ、何の因果かこのタイミングで活動休止中のLOVEBITESの後継者、その受け皿となりうるガールズバンド界の救世主が現れたことに喜びと期待を覚えた。

Chvrches - Screen Violence

Artist Chvrches
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Album 『Screen Violence』
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Tracklist
01. Asking For A Friend
02. He Said She Said
03. California
04. Violent Delights
05. How Not To Drown
06. Final Girl
07. Good Girls
08. Lullabies
09. Nightmares
10. Better If You Don't

2018年の前作『Love Is Dead』リリース以降のチャーチズって、そのイマドキのEDMに迎合した前作の流れからEDM界の帝王であるマシュメロとコラボ曲を発表すれば、小島秀夫監督の最新ゲーム『デス・ストランディング』の主題歌に抜擢されたり、今度は十中八九ユニバーサル案件の水曜日のカンパネラのコムアイとの謎コラボだったり、しまいには一見畑違いのDeftones主催のフェスに出演してローレンがHatebreedのジェイミー・ジャスタとツイッター上でレスバを繰り広げたりと、とにかく過去に類を見ないくらい対外的かつオルタナティブな活動に勤しんできた。

そんな、俺たちのローレン・メイベリー率いるチャーチズの約3年ぶりとなる4thアルバム『Screen Violence』は、それこそ本作に伴う90年代のメガドライブの名作『ベアナックル2』を想起させる劇画風の宣材ポスターが示唆するように、幕開けを飾る“Asking For A Friend”のローレンたその歌メロやレトロ調のシンセからして「Chvrches is Back...」と咽び泣くこと必須の、そして否が応でもあの伝説の1stアルバム『The Bones Of What You Believe』をフラッシュバックさせる、いわゆる80年代のシンセ・ポップ/ニューウェーヴ直系のポップ・ミュージックとなっている。



カリフォルニアはサンフランシスコを代表するメタルバンドのDeafheavenが先日リリースした5thアルバムInfinite Graniteは、それこそ80年代から90年代にかけて一斉を風靡したUKロックを『ルックバック』したような作風で、良くも悪くも再び音楽シーンに“インパクト”を与えた事は記憶に新しい。何が面白いって、奇しくも本作『Screen Violence』には、DFHVNのルーツである“California”の名を冠する楽曲をはじめ、80年代のUKロックを象徴する伝説のバンド=キュアーのロバート・スミスとフィーチャリングした曲がある点。そのロバート・スミスを迎えた#5“How Not To Drown”は、往年のオルタナロック然としたアレンジと音作りが施されたニューロマンティックなバンドサウンドからして80年代リバイバルの極みで、少なからずチャーチズ史においても希少価値の高い一曲となっている。また、ミニマルなサビのコーラスとシンセが今はなきVERSAを彷彿とさせるというか、その系譜にある†††(Crosses)から主催のフェスで共演したDeftonesへと伏線を回収するようにして文脈が繋がっていくのがエモすぎて泣ける。なんだろう、隠し味としてVERSAを感じさせる時点で、これもう実質たそから俺への私信案件なんですねw

しかし、ロバスミを迎えたその一曲のみならず、その80年代のレジェンドを本作の“コア”として取り囲むように位置する#3“California”、ゆらり揺らめくイーサリアルなシンセウェイブが愛は死んだという言葉を言い残してダークサイドに堕ちたローレンたそを闇夜に照らし出す#4“Violent Delights”、そして軽快なバッキング・ギターのリフレインによる叙情性と映画『ガールズ版ロッキー』さながらの情熱的かつ力強いリリックは、さしずめ「チャーチズなりのファイナル・カウントダウン」と言わんばかりの#6“Final Girl”までの流れは、まさに本作における「ロックバンドとしてのチャーチズ」を象徴する一幕となっている。とにかく、出自がブラックメタルのDFHVNも出自がエレクトロポップのCHVもほぼ同じタイミングで「ロックバンド化」するという神展開。もちろん、こっちがロバスミならあっちはモリッシーであり、それとジャケのブラウン管時代を思わせるスクリーンはDFHVNのオエイシスオマージュのMVとも共通するし、何より細かなところでDFHVNInfinite Graniteと共振してくんのは本当に面白い。だからロックバンド化した今のDFHVNCHVがツーマンで来日ツアー回っても全然違和感ないし、むしろここまでシックリくるツーマン他にないと思う。もしツーマンが実現したらリアルにアヘ顔デフヘヴンなるわw

今回、(2ndや3rdみたいに)無駄にピーキーなポップスを意識するのをやめた歌メロ含むメロディ全体の落ち着き具合、つまりハイではなくローな感じのメロディが心地よい。もちろん、日に日に分断が増していくこのご時世にピッチピチにポップなメロディ歌ったところで説得力の欠片もないしは「ノレない」わけで、皮肉にもこの悪夢(Nightmare)のような時代と調和の取れた内省的なメロディが心に染み渡る。それはまるで、世界の分断によってポッカリと空いた心の隙間を埋めるかのように。要するに、ヘタに色めきだっても、重い鎧で着飾ってもいない素顔のチャーチズというか、シンプルにUKバンドらしい映画『ロッキー』ばりに“泣けるメロディ”への回帰、それは本作のハイライトを飾る初期の名曲“Recover”がエルム街の悪夢に迷い込んだ雰囲気の#9“Nightmares”、そして冒頭から電子音ではなく生楽器をフィーチャーした#10“Better If You Don't”が強く物語っている。なんだろう、「こういうのでいいんだよ」の一言に尽きるというか。

それ以上に、本作を紐解く上で欠かせない人物がいる。その人物こそ、チャーチズとは1stアルバムから長い付き合いとなるサポートドラマーのジョニー・スコットに他ならない。彼がクレジットされているロバスミ曲をはじめ、#3,#4,#6,#9などの本作の“コア”となる楽曲ほぼ全てに彼のドラムが採用されているのをみても、長年サポートメンバーとしてチャーチズを縁の下から支えてきた、そして本作のキーマンとなる彼のドラムを軸に展開される「ロックバンドとしてのチャーチズ」たらしめている張本人である。本作は彼らの根っこ部分にあるオーガニックなアイデンティティと、これまでに人気TV番組や大型フェスなどの大舞台で培われた“バンド”としてのアンサンブルが紡ぎ出す“今のチャーチズ”しかなし得ない、よりリアルなライブ感に近い生音重視のスタジオ音源であると同時に、それらのオルタナティブな変遷を可能にしたのはメンバーのセルフプロデュースによるものだからと容易に推測できる。

端的に言ってしまえば「伝説の1stアルバム」から引用している部分が多いという話でもあって、前作や前々作で感じたマンネリを解消するため、ドラムとベースのリズム隊が織りなすバンドらしいグルーヴ感とオルタナ然としたギターなどの生音を積極的に取り入れている点は、確かに賛否両論あるかもしれない。けど、長年ライブでもドラムのジョニーを実質正式メンバーとして大々的にフィーチャーしてきたのも事実で、そのライブ自体ほぼロックバンドのノリだったりするわけで。事実、実際のスタジオ音源でロックバンドっぽい事やっても違和感ないのが今回で分かったし、個人的にはこれまでの伏線を回収した「ただの結果」に過ぎないと思う。この伏線回収の仕方もDFHVNと同じというか。

本作において「(筋金入りの)フェミニストとしてのローレン」が液状化しているなんてヨタ話はさて置き、映画『ロッキー』のスタローンと化したローレンたそがミソジニーな野郎どもを右ストレートでノックダウンさせるような、そんな男社会で抑圧されたガールズたちの背中を後押しするかのようなウーマンパワーに満ち溢れた会心の一枚だと思う。確かに、全10曲トータル43分という物足りなさは否めないものの、「らしくない14曲よりも、らしい10曲」の方が良いよねって話。事実、2ndはまだしも、前作の3rdで露骨に低迷した感は否めなかったし、正直こうなってくると今後の浮上は見込めないパティーンにハマったかと思いきや、ここにきて大きく盛り返してきた事に素直に感動するし、文句なしに年間BEST級の傑作と言える。何より、たそイジりなどのネタ抜きで作品の内容について語り合いたくなってる時点で、それぐらいにマジにマジなアルバムってことですw

mildrage - EMERGENCE

Artist mildrage
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EP『EMERGENCE』
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Tracklist
2. Wirepuller
3. Demolisher
4. Against The Current
5. Polar Night

ちょっと前に鑑賞した、神奈川県は大和出身の宮崎大祐監督による映画『VIDEOPHOBIA』が近年稀に見るホラー映画の傑作で(noteにレビュー書いてます)、その驚きのまま過去に遡って観た同監督の映画『大和(カリフォルニア)』は、宮崎監督の地元であり米軍厚木基地の存在する神奈川県大和市を舞台にした青春ラップ映画で、あらすじとしては「厚木基地の住所はカリフォルニア州に属しているんじゃないか?」みたいな都市伝説が囁かれる大和で暮らす(ラッパーを目指す)主人公サクラのもとへ、サンフランシスコ育ちのレイがやってくるというもの。確かに、米軍厚木基地の正しい所在地は大和市なのに、大和市から少し離れた“厚木”を名乗るとはこれいかに、みたいな諸説ある話はさて置き、同映画にはラップのみならず、先日のフジロック2021にも出演したGEZANもカメオ主演しているという、一種の音楽映画としての側面を持っている所が特に気に入った。

何を隠そう、林家ペーもといPaleduskの新曲を聴いてたら次の曲として偶然流れきたのが、映画『大和(カリフォルニア)』を象徴する米軍厚木基地の本家本元の厚木出身のラウドロックバンド、その名もmildrageで、彼らは2019年のフジロックに出演した経験とCrystal Lake主催の「TRUE NORTH FESTIVAL」出演などの実績に裏付けされた、それこそCrystal Lakeの影響下にあるモダンなポスト・ハードコア然としたスタイルに、バンドを司るMEGt.e.p.p.e.iによる男女ツインボーカルが時に激情的に、時に叙情的に絡み合う、まさにアンダーグラウンド・ヘヴィミュージック界のホープとされるバンドだ。


思えばラウドロックならびにヘヴィミュージックシーンって、意外や意外と男女ツインボーカル体制のバンドって少ないというか、パッと思いつかないくらいには珍しい存在で、今年の6月にリリースされたEP『EMERGENCE』でも、そのmildrageのアイデンティティと呼べる特徴を最大限に活かした楽曲を展開している。紅一点のMEGはクリーンボイスの他にシャウトも兼ね備えたボーカリストで、相棒のt.e.p.p.e.iによるRyoリスペクトな咆哮との掛け合いは迫力満点で、中でも幕開けを飾るエレクトロなアプローチを効かせたポスト・ハードコアの#1“Tunnel Vision”に次ぐ#2“Wirepuller”はカオティックなコアさと音響効果を活かしたエモーショナルな叙情性が交錯する楽曲構成力の高いキラーチューンとなっており、Crystal Lakeというよりモダン化したSoilwork味のある暴虐極まりない#3“Demolisher”、男女ツインボーカルの特性を最大活用した#4“Against The Current”、イントロから横浜の夜景を華やかに彩るようなキーボードの美メロをフィーチャーした#5“Polar Night”まで、彼らの音楽を例えるなら、さしずめ地元『厚木(カリフォルニア)』に息づく“大和魂”を宿した音楽であり、こうやって地域に根ざしたアイデンティティに触れることができるラウド/メタルシーンってやっぱ最高だなって。

また今年の初めにラウドルの神激と対バンしている点も推せるし、今このご時世だからこそアンダーグラウンドな地元で活躍するバンドに陽の光が当ってほしいという願いも込めて、より一層今後の活躍に期待したいのと、宮崎大祐監督が新しく手がける神奈川・大和舞台のオムニバス映画『エリちゃんとクミちゃんの長くて平凡な一日』という名の、監督いわくドゥームメタルバンドのふたりが暇をもてあまして街外れにある森にタイムカプセルを埋めに行く映画にも俄然期待したい。

BBTSことBroken By The Screamの“ダブル・ジョージ”が叫びすぎな件について


「元祖叫ぶ女」ことアンジェラ・ゴソウの正統後継者であるパスコのちゆな勇退、そのちゆなの後釜として指名された有馬記念もとい有馬えみりは、JK時代からアチエネや現アチエネのボーカル=アリッサの古巣であるThe Agonistをはじめ、他にもSuicide SilenceBMTH、国内ではDIR EN GREYのデスボイスカバーを動画サイトに公開してきた実績のあるガチメタル女子で、このように現代のアイドルシーンにおいてヘヴィなメタルサウンドとスクリームやデスボを組み合わせたスタイルは珍しくもなくなり、世はまさに「デスボ系アイドル」の群雄割拠と言わんばかりだ。


パスコのちゆながここまで引退を惜しまれる理由って、その他に類を見ない独自性の高いシャウトのオリジナリティに尽きると思う。ひとえに「叫ぶ女」といっても、高域寄りのシャウトか低域寄りのデスボか、それとも地声の延長線上にある似非シャウトか、それぞれ個人の性質によって得意とする声域や声の出し方も大きく変わってくる。例えば、神激こと神使轟く、激情の如く。のデスボ担当である涙染あまねは、その「V系顔の理想」であるヴィジュアル面からもV系を代表するDIR EN GREYの京やLynch.の葉月リスペクトなシャウターかと思いきや、その実は昨年脱退したデスボ担当妖精かなめのシャウティングを『ルックバック』してきた、ラウドル界を代表するシャウターの一人であり、僕の推しメンでもあるw


このメタル系スクリーミングアイドルの通称BBTSことBroken By The Screamは(こんな名前の海外バンドいた気がする)、それこそDeafheavenジョージ・クラーク顔負けの金切り声を持つカグラと、デスメタルの始祖カニコージョージ・フィッシャー顔負けの低音グロウルを持つイオ、そのUSメタルシーンを代表する二大バンドのフロントマン、すなわち“ダブル・ジョージ”の正統後継者を襲名するかのようなカグラとイオの“ジョージ姉妹”が放つスクリーム/グロウルに、いわゆるブルデスやデスコアを基調とした殺傷能力の高い暴虐的なサウンドが組み合わさった、あのメタルゴッドちゃんもビックリのエクストリーム・メタルは、“ジョージ姉妹”以外のメンバーであるヤエとアヤメのクリーン担当の存在によって、かろうじて“アイドル”の体をなしている。

わざわざ「かろうじて」と念頭に置かざるを得ないほど、その“ジョージ姉妹”の叫び声を中心に想像を超えたアグレッシヴかつブルータルな本格派メタルを繰り広げる。中でも往年の北欧メロデス/デスラッシュばりにソリッドな単音リフは、そのカニコーの血みどろジャケットリスペクトな血なまぐさい音楽性を更に硫酸ドロドロなんでも溶かす。また、DIR EN GREYの京の声帯が分裂したかのようなブラックメタル的な高域デスとデスメタル的な低域デスを配している点やモダンなデスコアっぽい部分はAbigail Williamsを、また近未来型Djentやジャズ/フュージョンにも精通する超絶テクニカルなギター/ソロワークからは、あのBorn of Osirisを彷彿とさせた。正直、ここまでエクストリームなメタルやってるなら、今後の楽曲に通称“イヤイヤ期”のDFHVN的なブラックゲイズ成分やトレモロなんか取り入れたりしたらもっと楽曲の幅が広がりそう。

もはや「とんでもねぇアイドル」としか形容しようがないラウドルがBBTSで、しかしイオの(地声の乗らない)グロウルは一体どうやって発声しているのか、完全に想像を超えた世界の領域。それこそ、通称デスのお兄さんの言う通り耳を疑うレベルのデスボで笑う↓

花冷え。 - 乙女改革

Artist 花冷え。
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Album 『乙女改革』
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Tracklist
1. SUNRISE 味噌SOUP
2. センチメンタル☆ヒロイン
3. ぶっ壊す!!
4. 私たちの7日間戦争
6. Invisible wall
8. L.C.G (2019mix)
9. 限界沼ライフ
​10. Want to TIE - UP

パスコのちゆな勇退、ベビメタLEGEND封印、LOVEBITESのmiho脱退、そしてパスコに有馬えみり電撃加入まで、いわゆるラウドルシーンを揺るがすような重大ニュースが立て続けに連鎖する昨今、そのラウドル界に生じた亀裂からゾロゾロとゾンビのように這い上がってきたのが、この東京は吉祥寺発の4人組ガールズラウドロックバンドこと花冷え。だ。今年の初めに発表された1stフルアルバム『乙女改革』は、その萌系同人アニメを模したジャケからは到底イメージできない、ギタボのマツリを軸とした重心の低いコード・オレンジ級のヘヴィネスやブレイクダウンを交えたメタルコア然とした硬派なサウンドに、ボーカル担当ユキナによる男勝りのデスボ/グロウルやベビメタのYUIMOAみたいなアイドルボイス、そしてユル~いラップなどのギャップ萌え不可避の様々なボイスが交錯する、それこそどっかのハードロックバンドや自分で演奏しないラウドルならまだしも、正直ここまで“ヘヴィ”で“コア”なロックやってるガールズバンドはなかなかお目にかかれない。


それもそのはず、本作『乙女改革』のプロデュースには、元ノクブラで現Crystal Lakeのドラマーである田浦楽氏が担当しいるのが答え合わせで、中でも筆頭すべきはフロントウーマンであるユキナの存在で、そのアイドルらしい萌声&デスボ&ラップと変幻自在に声色を変えるボイススキルはもとより、流石にCrystal Lake案件だけあって、その曲調もメタリックなハードコアはもとより、ラウドル界では珍しくもなくなったヒップホップへのルーツを覗かせるミクスチャーに近いスタイルを特徴としている。

Gulchばりのハードコア・パンク臭を醸し出すイントロのドラムから、コード・オレンジばりのヘヴィネスの応酬、そしてジャパメタというか陰陽座的なサビ、からのズッシリと落としてくるブレイクダウンまで、アルバムの幕開けを飾るに相応しい#1“SUNRISE 味噌SOUP”、またしても冒頭からコード・オレンジGulchに肉薄するメタリック・ハードコア/パンクを装いながら突っ走る#2“センチメンタル☆ヒロイン”、まるでアニメ『映像研には手を出すな!』の浅草みどり顔負けのユニークな自分語りパートから、それこそNHKをぶっ壊す!!とばかりのブレイクダウンをブチかます#3“ぶっ壊す!!”、イマドキ女子ならではの等身大のリリックを叫んだりする斬新なラップメタルの#5“令和マッチング世代”、疾走感溢れるモダンなジャパメタルコアの#6“Invisible wall”、初期ベビメタをもっとメタルコア側に振り切ったリード曲の#7“我甘党”や#8“L.C.G (2019mix)”、ゴシックメタル的なダークな鍵盤をフィーチャーした#9“限界沼ライフ”、メロデスっぽい叙情的なツインギター(風)をフィーチャーした#10“Want to TIE - UP”まで、1stアルバムならではの衝動的な部分と初々しい粗さがバランスよく最後まで楽しませる。

なんだろう、少なくとも「ただのラウドロック」とは一線を画してるのは確かで、ゴッリゴリの現代的なメタルコアと対をなす、メルヘン街道を突き進む電波系のリリック的にも、(大きく見た目は違えど)アングラハードコアの新星Gluchと共鳴するような、いい意味で狂気的な“グルイ”っぷりが最高にカッコいい。そのガルバンとは思えないヘヴィネスの硬派な音作りやエグいデスボについては称賛に値するレベルだから、今後ともこの“コア”な路線を貫き通してほしい所存だし、今後は#5みたいなラップメタル路線のブラッシュアップ、#10で見せたようなヘヴィメタル的な叙情性の有効活用、そしてクリーン/コーラス全般の歌メロが洗練されてきたら今以上にいいバンドになりそう。というか、ガチメタラーをはじめ人よっては「ベースいらなくね」もとい「クリーンいらなくね」と感じる人もいるかもしれない(逆に言うと、それはサウンド面の完成度が高すぎるという事)。
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