Welcome To My ”俺の感性”

墓っ地・ざ・ろっく!

2020年04月

Thundercat 『It Is What It Is』

Artist Thundercat
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Album 『It Is What It Is』
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Tracklist
1. Lost In Space / Great Scott / 22-26
2. Innerstellar Love
3. I Love Louis Cole (feat. Louis Cole)
4. Black Qualls (feat. Steve Lacy, Steve Arrington, & Childish Gambino)
5. Miguel’s Happy Dance
6. How Sway
7. Funny Thing
8. Overseas (feat. Zack Fox)
10. How I Feel
11. King Of The Hill
12. Unrequited Love
13. Fair Chance (feat. Ty Dolla $ign & Lil B)
14. Existential Dread
15. It Is What It Is (feat. Pedro Martins)

雷猫ことサンダーキャットって、ヒップホップ界のレジェンド=ケンドリック・ラマーと互いの作品でコラボしていることからも、主にヒップホップの文脈で語られる事の多いLA出身のミュージシャンで、そんな雷猫の約3年ぶりとなるアルバム『It Is What It Is』が、まるで“ヒップホップ界のスティーヴン・ウィルソン”かと思うくらいの傑作過ぎる件について。

彼について取り上げるメディアの紹介文で代名詞のように使われているのが“マルチ・ジャンル・ベースプレイヤー”という言葉で、その意味はほぼほぼそのまんまの意味で、まず根幹部にあるジャズ/フュージョン特有のグルーヴィなサウンドをベースメイクに、そこへR&Bやヒップホップ、そしてメタルからファンク/ソウルに至るまでの様々な音楽ジャンルを持ち前の超絶技巧なベースプレイで独創的に料理するマルチな才能が高く評価されているミュージシャンだ。例えるなら、現代プログレ界の帝王であるスティーヴン・ウィルソンがプログレ側からメタルやジャズ、アンビエント/ノイズやニューエイジなど様々なジャンルにアプローチする芸風の“オルタナティヴ”なミュージシャンなら、この雷猫はジャズ側からラップやメインストリームのポップスにアプローチする“オルタナティヴ”なプレイヤーである。

今作の『It Is What It Is』には、彼がいかにしてそう呼ばれるのか?そのワケが凝縮されたような内容が詰まっている。まずHi, Helloという1日の始まりを告げる陽気な歌声とともに、カーテンの隙間から朝日の眩い日差しが差し込んでくるかのような、それこそ春を通り越して初夏の湿った匂いを運んでくるような、このままずっと昼寝していたいLo-fiを装った心地よい倦怠感とともに本公演=雷猫ショーの幕開けを飾る。そのオープニングの流れを引き継いで、新世代サックス奏者カマシ・ワシントンのアダルティなサックスをフィーチャーしたジャズの王道を繰り広げるリードトラックの#2“Innerstellar Love”、そのタイトル通り同じLA出身で過去にコラボ経験もある盟友ルイス・コールをゲストに迎え、シンフォニックなストリングスとレトロなオルガンを引き連れてジュン・スカイ・ウォーカーズばりに疾走感溢れるビートを刻むキャッチーなバンド・サウンドの#3“I Love Louis Cole”、一転して今度は海外ドラマ『アトランタ』でもお馴染みのチャイルディッシュ・ガンビーノ他を迎えた、ファンク&ソウルなテンションと落ち着いたグルーヴで聴かせる#4“Black Qualls”、シンセを中心に聞かせるシンセ・ファンクな#5“Miguel’s Happy Dance”から、スティーヴン・ウィルソン風のコーラスワークと雷猫のテクニカルなベースソロとキーボードソロのかけ合いが光る#6“How Sway”、このスクエアプッシャー顔負けのフュージョン然としたスリリングな展開とマルチプレイヤーとしての本領を発揮する組曲的な構成はプロのグレ以外の何者でもない。

中盤以降は少し変化が起きる。シンセウェイブな#7“Funny Thing”、日本の岡田拓郎ソロ〜森は生きている〜トクマルシューゴラインと共振するAOR/シティポップの才能を垣間見せる#8“Overseas”、プレイヤーとしてではなく歌手として持ち前のムーディな美声と『ドラゴンボール大好き芸人』としてのオタクぶりを発揮するR&Bの#9“Dragonball Durag”、そして鍵盤打楽器や『ロスト・イン・スペース』ばりにスペーシーなキーボードとピアノの音色が夕刻を幻想的に彩る#10“How I Feel”以降は、それこそ“ヒップホップ界のスティーヴン・ウィルソン”化が顕著で、「あれ?もしかしてシークレットゲストにSW参加してる?」と思いきやBadBadNotGoodをゲストに迎えた夜行性と内省性に優れたメロウな#11“King Of The Hill”、イントロからアウトロまで映画音楽ばりの優美なストリングスが鳴り響くR&Bの#12“Unrequited Love”、Lo-fiヒップホップを装ったtoe顔負けのミニマルなマスロック系ギターのフレーズがエモ過ぎて情緒過ぎて泣ける#13“Fair Chance”は今作のハイライトで、ブラジルの若手ギタリストPedro Martinsを迎えた表題曲の#15“It Is What It Is”は、西海岸ルーツの湿ったギターが季節が移り変わる瞬間に感じる刹那的かつ“おセンチ”な寂寥感を名残惜しむ前半と、森は生きている〜岡田拓郎ラインと直結するセッション風のアンサンブルを披露する後半で本公演のクライマックスを飾り、これにてHi, Helloという目覚めの朝から続いた長い1日が終わりを告げる。

そもそも常時セッションしてるメンツが、カナダの暗黒ジャズバンドことBadBadNotGoodや新世代サックス奏者カマシ・ワシントンをはじめ、チャイルディッシュ・ガンビーノやラッパーのリル・ビー、そしてプロデューサーには言わずと知れたフライング・ロータスという、これだけのそうそうたるメンツを揃えている時点で、逆に、逆に傑作以外のものを作る方が難しい。あとLA出身だけあって、めちゃくちゃ音に温暖な土地鑑を宿していて、常にサイケデリックな幽玄さと陶酔感を帯びた音に溺れる感覚。最終的に、なんだこのSWウィーケンドtoe『アトランタ』森は生きている(岡田拓郎)スティーヴィー・ワンダーがエクストリーム合体=フュージョンしたような神バンド・・・ってなった。極端な話、SWソロにおける2ndアルバムから5thアルバムにかけてのストリングスやサックスをフィーチャーした各アルバムor楽曲をジャズ/フュージョン方面に振り切ったらこうなるみたいな、とにかく(所属レーベルが広義の意味でユニバーサルという点でも、チャイルディッシュ・ガンビーノ好きな所も)別の世界線にいるSWみたいな錯覚を憶えるほど、シンセウェイブ/エレクトロやフュージョン、ファンク/ソウル/R&Bやヒップホップ、マスロックやシティポップなどの多彩過ぎるマルチなジャンルを咀嚼したジャズいプログレとして聴け過ぎるし、何よりこれだけの音楽ジャンルと音数をもって一つのアルバムとして高次元で成立させる雷猫のオルタナティヴな才能にただただ震える。

とにかくSW界隈を聴いてる人にはピンズド過ぎるアルバムなんだけど、メタラー視点で見ても、テクニカル/フュージョン・メタルの元祖Cynicの影響下にある現代の新世代インスト勢やマスロック勢にも共振する部分があるし、一方でメインストリームのポップス視点で見てもThe Weekndの傑作『After Hours』と全然韻踏めちゃう内容だから有無を言わず聴くべきです。個人的にウィーケンドと並んで、今年の年間BESTワンツー更新しちゃった感すらある。最近はCOVID-19の影響でSWの新譜が来年1月に延期になって意気消沈してたけど、このアルバムのおかげで暫くはやっていけそう(どうでもいいけど、雷猫のロゴとコード・オレンジのロゴちょっと似てるなw)。

Machine Girl 『U-Void Synthesizer』

Artist Machine Girl
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Album 『U-Void Synthesizer』
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Tracklist
1. The Fortress [The Blood Inside...]
2. Blood Magic
3. On Coming
4. Fortress Destroyer
5. Scroll of Sorrow (feat. Guayaba)
6. Splatter!
7. Kill All Borders [2020 Worldwide Fucker]
8. Devil Speak
9. Fully In It
10. Suck Shit (feat LustSickPuppy & RAFiA)
11. Batsu Forever

COVID-19はメタルということで、20年代に入って早々そんな物騒なウイルスが世間レベルじゃなしに世界レベルで猛威を奮っている現代をヨソに、とある音楽界隈ではCode OrangeやLiturgyは俺のパクリだ!と起源を主張しているとかなんとか、例えるならしょこたんで言うところのしょうたんに近いノリで“ハードコア界のグライムス”を自称する、ニューヨークを拠点に活動するピッツバーグ出身のマット・スティーブンソンによるハードコア・プロジェクト、Machine Girlの新作『U-Void Synthesizer』が、まるでそうだ!みんなで濃厚接触して集団免疫を獲得すればコロナなんて怖くない!ボリス・ジョンソン理論が現実化して、更なるクラスター増加からのパンデミックが混沌と破滅を呼び、終いに人類の思想がバグって現実世界がバカ殿の下品さとハーレイ・クインのパリピさがごちゃ混ぜになったコロナ以降のハードコアで、ハードコアはハードコアでも人類がマスク必須の生活を余儀なくされたディストピアな現代こそ近未来=サイバーという皮肉が込められたデジタル・ハードコアでヤバい。

何がヤバいって、そのバグりまくってる音楽性よりも、まず今作のアートワークがコロナ以降の世相を反映しているようなジャケでヤバい。まずベースとなっているのは“犬”、その犬種としては恐らくブルドッグに違いないと思う。問題なのは、そのブルドッグが身につけている装飾が様々な“メタファー”となっている点、そこに注目してほしい。まずオラついたピアスやステレオタイプ過ぎるトゲトゲの首輪、赤い血の滲んだひっかき傷を負った百戦錬磨の形相からして普通のブルドッグじゃないコワモテのブルドッグである事を示し、大きさが不揃いの右目は、そして左目がというアメリカの星条旗の三色カラーのメタファー、額にはドラゴンボールの魔人ブウ顔負けのMachine Girlの頭文字を示す“M”、二本の大きな角は“バフォメット=悪魔”のメタファー、スマイルマーク=笑顔で“Brothers To Kill”と刺繍されたよだれ掛けは、このブルドッグが“遺伝子組み換え”によって品種改良された「MADE IN USA」つまり“アメリカ産の悪魔”である事を意味し、自らが“商品”である事を示す謎のバーコードは“資本主義の犬”のメタファー、その上にあるのは原発がメルトダウンした国でもお馴染みのバイオハザードマーク、そしてブルドッグの周りに充満するコロナウイルスらしき緑色の粉塵は、まさに世界中の富を喰らい尽くす究極の資本主義国家アメリカというバビディに洗脳された“悪魔人”を中心とするグローバル経済に“死の一撃”を与えたコロナウイルスの脅威に怯える現代社会のメタファーであり、それを今や世界一の患者数を誇るニューヨーク在住のマット・スティーヴンソンという“当事者”が発信している圧倒的な説得力と鬼皮肉ったらない。あと今作の『U-Viod』“U”“C”にして右に少し入れ替えたらまんま“COVID-”になるヤバさw

今作の正式のリリース日は2月26日、その当時はまだアメリカは緊急事態宣言=ロックダウンされていなかった(はず)というか、ちょうどそれ以降の3月中旬あたりから一気にアメリカでコロナウイルスが蔓延し、先日この日本でも全国的に緊急事態宣言が発令された事は記憶に新しい。だから、このメタ的過ぎるアートワークは現在の情勢を意図して作られたのか、あるいはアメリカでは昨年からインフルエンザが流行っていたという話、そっちの件で偶然重なったのか、そういった諸々の観点からもアメリカという国のメタファーだったり、そのアメリカ国内(ニューヨーク)を中心にパンデミックが起きた世界をメタ的に描いたようなアートワークからして、まるでコロナ以降の世界を予見していたかのようで、この時点でもう十分ヤベーのに、実際に音源を聴いてみたらそのヤバいガワよりも中身のがヤバかったというよくあるオチ。

そら“マシンガール”ってんだから、“Synthesizer”と題したタイトル的にもThe Weekndの新譜的なちょっとkawaii系のシンセ・ポップなんだろうなぁと舐めてかかったら、ある意味ではグライムスみたく不思議kawaiiけど、ある意味ではコード・オレンジみたくイカレkowaii感じのトランスコアで、一曲目の“The Fortress”からまるで20年代を迎えた瞬間に一変してしまった世界と世相を反映するかのような、兎に角こんな可愛くて狂ったグラインドコアは生まれて初めて聴いた。終始、エレクトロ〜インダストリアル〜ノイズ〜グリッチ〜IDM〜ドラムンベースラインを延々と行き来する引きこもり同人コアで、特にバグりまくったグリッチ効果はCode OrangeLiturgyの元ネタなんじゃねぇかと察するレベルの、まさにアングラ版コード・オレンジと呼べるバグりっぷりを演出する。実はコロナの影響で中止になったオレンジのツアーにも帯同する予定だった所からも、マットの出身がコード・オレンジと同じピッツバーグという点でも確信犯と言っていいし、もしかしたら『Underneath』タダヒトリとかの日本ネタもMachine Girlの影響が濃厚接触した説ある。

ハードコアはハードコアでも、これはもうリアルニューヨーカーの叫びだ。ロックダウンされたニューヨークの部屋から「人類皆兄弟だから仲良く濃厚接触して全員コロナれ!!Kill All Brothers!!マザッファカッ!!」とヘイトを撒き散らしながら、同人界隈のヒキニートオタク(童貞)が子供部屋でパリパリピピピなサウンドにノッてタダヒトリで踊り狂ってる感じ(これは個人の勝手なイメージです)。それこそ、現代社会が未だかつて経験したことのない混沌や焦燥感を的確に(非常事態時における)緊急アラート音化してて、特にBatsu=罰Forever=永遠つまり永遠の罰を意味する不吉なラストの“Batsu Forever”は、まるでCOVID-19の存在が環境破壊行為や行き過ぎた資本主義から異常な格差社会を生み出した人類への罰ゲームだと言わんばかりの“終末ハードコア”だ。部屋の外はコロナ禍による地獄のディストピアで、部屋の中は超近未来というギャップが今の時代しか味わえないSF体験過ぎてシャレにならない、もう笑えないっての。こちとら自粛して部屋に篭ってこれ聴きながら頭コロナ状態になって現実逃避してんのに、TVで嫌なニュースが流れるたびに現実に晒されて気が滅入ってくる(The Weeknd的には“Escape From LA”って感じだろうけど)(なおLA)(というかカナダ)。なんだろう、やっぱ20年代には“Kill All Brothers”の精神が必要になってくるんだろうなって。

ともあれ、もしコロナ問題が収束したらCode Orangeと一緒にツアーの続きでこの日本にも来てほしい。え?Shibuya Meltdown Tokyoって歌詞書いてるやつは不謹慎だから日本に呼ぶなって?いやいや、今作のアートワークでアメリカという国をメタ的に皮肉&自虐ってるのでセーフw

???「日本には行くな!スシも食うな!

The Weeknd 『After Hours』

Artist The Weeknd
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Album 『After Hours』
After-Hours

Tracklist
1. Alone Again
2. Too Late
3. Hardest To Love
4. Scared To Live
5. Snowchild
6. Escape From L.A.
8. Faith
11. Save Your Tears
12. Repeat After Me (Interlude)
13. After Hours

新作の『Underneath』がメタルバンドとしては20年代初の米ビルボートチャートトップ10入り(2位)を果たしたCode Orange。と同時に、Code Orangeのビルボード1位の快挙を拒んのは一体誰だ!?と気になったので、急いでビルボードチャートを見に行ってみたら、そこで目に留まったのがThe Weekndとかいう人物で、「ウィーケンド・・・?名前は聞いたことあるけど一体何者なんだ・・・?」と思い、ちょうどいいキッカケとしてそのビルボード1位に輝いた新作の『After Hours』を聴いてみた。すると、そこには20年代最高のメタルがCode Orangeの『Underneath』に対する、20年代最高のポップスがThe Weekndの『After Hours』としか言いようがない“シン・キング・オブ・ポップ”の世界が広がっていた。

とりまウィーケンドの本名が【エイベル・マッコネン・テスファイ】である事と【エチオピア系カナダ人のR&Bシンガー】という出で立ち以外のバックグラウンド的な話は洋楽専門の主要メディアから取得してって感じなんですけど、今作の何が凄いって、とにかくシンセが凄いポップスで、そのタイトルからしてCode Orange『Underneath』がグリッチーに脳裏を過ぎってタダヒトリ『悪夢』が蘇る#1“Alone Again”から、まるで“20年代”という新たなる時代の夜明けを告げるかのような、往年の坂本龍一あるいは久石譲を連想させる映画のサントラ風の電子音と日本の歌姫=宇多田ヒカル顔負けのセンチで繊細な歌声にEDM(トラップ)を交えたイマドキのポップスを繰り広げるや否や、ダークウェイブなシンセが夜空を煌びやかに彩る#2“Too Late”、80年をド派手に彩ったMTV全盛の黄金時代を記憶したシンセのメロディとワム!ジョージ・マイケル顔負けのポップな歌声が耳をキャッチーする#3“Hardest To Love”、一転してBPMを落とした真珠のバラードナンバーの#4“Scared To Live”、ヒップ・ホップ(トラップ)をポップスとして昇華したベッドルーム系ポップ・ラップの#5“Snowchild”やトラップ化したマイケル・ジャクソンの#7“Heartless”、かと思えば今度は某界隈で有名なYouTubeチャンネルがアカBANされてちょっとした騒動になったLo-Fiヒップ・ホップ系のアプローチを垣間見せる#6“Escape From L.A.”は、いわゆる日本のJ-POPと共振する切ないメロディからアウトロの繊細な感情描写を表現するウィーケンドの叙情的な歌声まで、もはや最初から最後まで宇多田ヒカル“桜流し”を連想させる名曲となっている。

エレポップなビートを刻む電子音やアンビエントがかったモノクロームのアトモスフィアを描写するアウトロの演出がUlverやUKのThe Japanese Houseっぽくて最高に泣ける#8“Faith”、そして再び黄金の80年代が蘇るシンセのバブリーな旋律とポスト・パンク然としたビートを刻むイントロのドラムからしてDuran Durana-ha、そしてデペッシュ・モードに代表される80年代のニューウェイブを連想させる#9“Blinding Lights”とニューロマンティック化したマイケル・ジャクソンな#10“In Your Eyes”の、まるで80年代リバイバルと言わんばかりのシンセウェイブ祭りは今作のハイライトで、中でも#10のアウトロのカウボーイ・ビバップばりにファンキーなサックスとかスウェーデンのアレややくしまるえつこソロを連想させて最高。

まるで春の香りを運んでくるかのようなシンセが色鮮やかに波打つ#11“Save Your Tears”は、それこそThe Japanese Houseと繋がりのあるマリカ・ハックマン的な海外人気の高い日本のシティポップ/AORをイメージさせ、そういえばウィーケンドってR&Bシンガーだったことを思い出すアダルティな#12“Repeat After Me”、今度はトラップ化したThe Rasmusみたいなダークでメランコリックな表題曲の#13“After Hours”、そして見知らぬ誰かへのレクイエムを贈るかのようなシンセのリリカルな旋律とともにアルバムのクライマックスを飾る#14“Until I Bleed Out”まで(ボートラの#15は歌謡曲っぽい)、なんだろう、端的に言って昨年末から絶賛発動中の“完全究極体伏線回収”の一環アルバムとしか言いようがなくて、ただただ最高の一言。とにかく最高だから黙って聴けばいいじゃんとしか言えない。ジャンルとかどうでもよくなるぐらいには極上の(シンセ)ポップスだから。

もはやR&Bというよりは完全に80年代に一世を風靡したニューウェイブのソレで、大袈裟な話10秒に一回は確かにどこかで聴いたことあるような既視感やデジャブに襲われるぐらい、もはや全曲80年代のポップスのカバー曲なんじゃねぇかと思うぐらい、つまり“キング・オブ・ポップ”ことマイケル・ジャクソンやUK発のニューウェイブに象徴されるMTV全盛の80年代、それすなわち世界の音楽の全盛期が記録された“時代”を記憶している音楽で、一方で日本の宇多田ヒカルやUKのThe Japanese Houseを聴いてるかのような、語弊を恐れずに言うとJ-POPの亜種を聴いているかのような錯覚を憶えるのも事実で、言ってしまうと今昔のUKサウンドがクロスオーバーしたような感覚。特に80年代リバイバル化が著しくなる中盤以降は、近年のUlverThe Japanese House的なアンビエント・ポップ感ある。逆に歌をフィーチャーした序盤はヒッキー的な意味でもトータルで“Japanese”感凄い。ここで繋がってくるのかよと。それぐらい、今作を自分の中でザックリと例えるなら、【宇多田ヒカル(マイケル・ジャクソン)× The Japanese House×The Rasmus×Ulver×ケニーG=ウィーケンド】って感じ。いや、これガチでヒッキーウィーケンドのコラボ熱望したいわ。7曲目の“ハートレス”=キンハーの主題歌=ヒッキー的な意味でもw

“伏線”という意味では、この手の80年代愛に溢れたシンセ主体の“メインストリーム”のポップスを聴いて真っ先に思い出したのが、広義の意味でウィーケンドと同じユニバーサル所属であり、70年代のプログレマイスターでお馴染みのスティーヴン・ウィルソンが80年代の“ポップス”をオマージュした『To the Bone』で、その次に一時代を築いたキリング・ジョーク“Youth”がエンジニアとして参加したUlver『ユリウス・カエサルの暗殺』、そしてメタル界から初めてメインストリームのポップスへ進出したBMTH『amo』の3枚だった。この『After Hours』は、まさにその3本のラインと地続きで繋がってるアルバムだと断言できる。

改めて、コロナ禍とともに20年代として初めての春が訪れるや否や、Code OrangeThe Weekndという“20年代のニューウェイブ”という名の“新世代の波”がメインストリームのポップス界とメタル界で同時刻に押し寄せてきたのは果たして偶然なのだろうか?春を迎えたと同時に、“20年代のメタル”を象徴する『Underneath』を発表したCode Orangeと、その翌週に“20年代のポップス”を象徴する『After Hours』を発表したThe Weeknd、厳密に言えば一周ズレてビルボードチャートの2位と1位を飾ったのは果たして本当に偶然なのだろうか?もしそれが必然であったと仮定して、突如として目の前に現れたこの難題を、“日本のメタルメディア界のキング”を自称する僕はいかにして彼らの“必然性”を導き出したのか?そして最終的にたどり着いた答えがもしかしてポップス=メタルなんじゃねぇか説だった。

いや、コロナ禍のせいで自粛からの引きこもり生活が続いて頭おかしくなったんじゃねえかと思うかもだけど、これ実は冗談じゃなくてわりとガチな話。確かに、確かに“ポップス”“メタル”って誰の目から見ても真逆のジャンルだし、恐らくそのイメージを否定する人もいないと思う。まず、このウィーケンド『After Hours』を例に出すと、先ほども書いたようにダブル・マイケルやニューウェイブに代表される80年代のMTV全盛を記憶しつつ、一方で00年代以降のポップス界の主流であるEDM(トラップ)をはじめ、10年代以降のユーチューブ/SNS時代における(Lo-fi)ヒップ・ホップ(トラップ)、そしてASMRを含めたメインストリームでトレンドのトラックを記録している。つまり、80年代のポップスの記憶と00年代から現在までのポップスの記録を繋ぎ合わせたのが、このウィーケンドによる“20年代のポップス”であるということ。彼が今作の中でやってるのは、まさに歴代のポップスが積み重ねてきた歴史のアップデイト(20.20ver)であるということ。

ポップスの歴史は長ければ、そのポップスに負けじとメタルの歴史も長い。古くは60年代イギリスのビートルズに始まったポップスの歴史、一方で古くは70年代イギリスのブラック・サバスに始まったメタルの歴史、80年代イギリスのニューウェイブやマイケル・ジャクソンを記憶したポップスの歴史、一方で80年代カルフォルニア・ベイエリア・スラッシュメタルやメタリカを中心とする“ビッグ4”を記憶したメタルの歴史、そして00年代以降のヒップ・ホップやEDMやR&Bを経由して現在のトラップを記録したウィーケンド『After Hours』における“20年代のポップス”、90年代のヌー・メタルやモダン・ヘヴィネスを経由して、そしてメシュガー以降著しく先鋭的にエクストリーム化が進行した現在のメタルを記録したCode Orange『Underneath』における“20年代のヘヴィネス”、僕が言いたいのはポップスが既視感(デジャブ)と歴史の積み重ねならば、そのポップスと同じようにメタルも既視感(デジャブ)と歴史の積み重ねの音楽、つまりポップスとメタルどちらも“アップデイトの音楽”であるということ。そう言った意味では、ある意味でMTVの音楽を20年代にアップデイトしたウィーケンドと、90年代のモダン・ヘヴィネスから00年代以降のメタルのトレンドを20年代にアップデイトしたコード・オレンジは全く同じで、ただ一つ確実的に言える事は、どちらもアンダーグラウンドとは無縁の“メインストリームの音楽”ということ。そういっった意味では、実はロックのサブジャンルの一つに過ぎないメタルって実は“裏のポップス”なんじゃねえかって。だから“表のポップス”と繋がった“裏のポップス”と仮定したメタルは、歴史的に見えても同時進行(連動)しているような気がしてならない。この20年代のポップス代表のウィーケンドと、20年代のメタル代表のコード・オレンジの新作に共通する、それぞれの“歴史”を照らし合わせるともうそうとしか思えない。

そんな中、“裏のポップス”であるメタルシーンから、表のポップシーンと裏のメタルシーンの間にある“壁”をブチ破ってしまったオキテ破りがBMTH『amo』だったんですね。BMTH『amo』でやってのけたのは、世界の行く末を握るテスラCEOことイーロン・マスクのパートナーであるグライムス(現在懐妊中)とのコラボ、そしてウィーケンドと負けず劣らずなEDM(トラップ)やヒップ・ホップ(トラップ)を取り入れた、まさしく“メインストリームのポップス”だった。その“オモテ(陽)とウラ(陰)”の境目をなくしてしまった結果、Xperiaの広告塔として地上波のTVCMで放映されて、遂にはしょうたんもといしょこたんに見つかってしまうオチまで、言ってしまえばBMTH“裏のポップス”であるメタルシーンから“表のポップス”にメタラーで初めて到達した偉大なバンドなんですね。それはまるで人類が初めて月に到達した事のように、それ世界に証明したのがBMTHの正統後継者であるCode Orangeであり、前週ビルボードチャート2位のコード・オレンジとその翌週ビルボードチャート1位のウィーケンドを繋ぎ合わせる、“表(ポップス)と裏(メタル)”を知ってる唯一の存在がBMTHなんですね。そうなんだよね、全ては「繋がってる」んだよね。

しっかし、“20年代”の幕開けと同時に世界中がコロナ禍によって厳しい自粛生活を余儀なくされている最中、皮肉にも音楽界隈では早くも“20年代”を象徴する、20年代最高のポップス20年代最高のメタルが一周ズレで立て続けにリリースされたのは、ささやかならに“春”を感じさせる出来事だった。まさに激動の“20年代”を迎える全人類が聴くべき必聴盤です。

福岡出身のバンド=Paleduskが日本のCode Orange Kidsな件について



新作の『Underneath』が20年代初となるメタルバンドのビルボードチャート・トップ10入りを果たしたピッツバーグ出身のCode Orange。その勢いのまま、海外のバンドとしては異例の(日本では既にDIR EN GREYtricotが実施した)無観客ライブのネット配信を試みたり、着々と狂信的なCode Orange=Kids達によるファンダムを拡大している最中、この遠く離れた日本でも、コード・オレンジからキッズが切り離されてイキリキッズとして世界中に散らばった煽りを受け、例えるなら映画『アナイアレイション』の深淵を覗き見る精神世界から分裂したペプシマンが続々と産声を上げようとしている。その記念すべき日本産ペプシマン第一号が、この福岡出身のバンド=Paledusk(ペイルダスク)なんじゃなねぇかって。


ペリフェリーの来日公演のサポート経験もあるように、10年代のメタル界のトレンドだったDjent以降のモダン・ヘヴィネスをベースメイクとした音楽性で、しかし先日公開された新曲の“AO”では(読み方は“アオ”)、まさにCode Orange Kidsのペプシマン魂もといイカレ精神を宿した、それこそ『Underneath』以降のバグコアチューンをやってのけている。なんだろう一方的なイメージで語ると、クソダサ炎上バンドことホルモンのフォロワーことヒスパニに光の速さで鮮度抜群のオレンジ(20年代産)ぶん投げたら、案の定やらかして炎上しちゃったのがこいつら、みたいな(これは個人の勝手なイメージです)。まるで10年代に蔓延ったクソみたいなチンカスラウドロックを20年代のヘヴィネス”という名の3㌧ハンマーで叩き潰すかのような“死の一撃”を叩き込んでいる。

日本産ならではの文化的なギミックを活かしたMVから推測するに、「そろそろネタっぽくなるかな?ネタっぽくなるかな?くるぞ・・・くるぞ・・・」って、ドリフのコントみたいに今か今かと画面の前で待ち構えてたら、何事もなく曲が終わって「え、うそ、最後までかっこいい・・・」って少し戸惑った。なんだろう、瞬きする瞬間すら与えない感情と精神が真っ逆さまに落ちていくジェットコースターみたいな、それこそ野球の“AO”で進学した脳筋バカの僕では一体何が起こっているのか、頭で考えようとした瞬間に次のオレンジが光の速さで飛んでくる感覚は、まさに“異世界(意味不明な整然さという矛盾)”。曲の途中にSwallowing The Rabbit Wholeのペプシマンが「アノヒトヲサガシテ・・・」って乱入してきても違和感ないわ(ガンツ的な?)。あと、この手のメタルコアにありがちなクリーンを安易に入れてこないあたりも推せる。後半クリーン入ってきそうで入ってこないギリギリのラインを攻めてる感じも俄然推せる。

ともあれ、まぎれもなく『Underneat』以降のCode Orange Kidsでありながらも、ただのキッズとは一味も二味も違った20年代のヘヴィネスをイキリかましてて、しかしまさか日本のバンドでピッツバーグの“素”でヤベー奴らに肉薄するバンドがCrystal Lake以外にいるなんて思ってもみなかったらから、素直に驚いてる。だから率直な気持ちで、巨大なファンダムを構築するCode Orange Kidsの一員として、それこそ映画『アナイアレイション』の精神世界から分裂した分身=ペプシマンとして、これから頑張ってチンカス星人をやっつけてほしい。でもこうなってくるとCLの立場も危ういんじゃね?

Code Orange 『Underneath』

Artist Code Orange
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Album 『Underneath』
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Tracklist
01. (deeperthanbefore)
03. In Fear
04. You And You Alone(~タダヒトリ~)
05. Who I Am
06. Cold.Metal.Place
08. The Easy Way
09. Erasure Scan
10. Last Ones Left
11. Autumn And Carbine
12. Back Inside The Glass
13. A Sliver
14. Underneath(~アノヒトヲサガシテ~)

皆さんこんばんちわ、稲川淳二です。最近の私ですねぇ、世間ではコロナヴィルスが流行っているっていうんでね、お仕事の怪談活動を暫く自粛しまして、久しぶりに家でゆっくり音楽を聴こうと思いまして。でもって、何やらメタルシーンで“20年代のバンド”として注目されているバンド、アメリカのCode Orangeっていうのを聴いてみたんです。するとねぇ、アメリカのピッツバーグ出身のバンドなのに、曲の途中に男の声でただ独り・・・」や「あの人を探して・・・」という日本語がどこからともなく聞こえてきて、うわぁ〜イヤだなぁ〜怖いなぁ〜って、今流行りのコロナヴィルスよりも怖いなぁ〜成仏できない幽霊の声かな〜って、そして遂には「お前だけの✕○△□」って叫び声が聞こえてきた瞬間・・・私ねぇ、気づいちゃったんですよ。

あぁ、あたしAloneなんだって
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PassCodeはCode Orangeって、Convergeカート・バロウをエンジニアに迎えてかのDeathwishから出てきた時は、「まーたアングラからヤベーの出てきたな」感あって、次にRoadrunnerに移籍して2ndアルバム『Forever』を出してきた時は、「おっ、今度は【カート・バロウ×ウィル・イップ】の黄金コンビを迎えてオーバーグラウンドに進出してきたな?」と思って、そして約3年ぶりとなる3rdアルバム『Underneath』からリード曲の“Swallowing The Rabbit Whole”、その映画『アナイアレイション ー全滅領域ー』を彷彿とさせる深淵の精神世界あるいはダークウェブに存在する見たらアカン系のMVを見た瞬間、まるで稲川淳二が階段を語る形相でダメだダメだダメだ、こいつダメだ、こいつ怖い、こいつ危ないと恐怖に慄いた。


そんな20年代のメタルを背負ってたつ彼ら、Code Orangeがどれだけヤバい存在なのか?その理由を順に追って書き記していきたいと思う。

  • ビジュアルがヤバい
古くはキッスに始まり、ハードロック界ではLordiGWAR、ブラックメタルにおけるコープスペイント、この日本におけるヴィジュアル系、そして近年ではSlipKnoTGhostに代表されるように、実はハードロック/ヘヴィメタルシーンほどいわゆる“かぶり物”や独特のメイクアップを施してステージに立つ、ある意味で“ビジュアル系”と呼べるジャンル/文化って他に類を見ない。先ほどの“Swallowing The Rabbit Whole”のMVを見てもわかるように、メンバーの見た目がイカレサイコなボーカル/ドラム、見るからにヤベー女ギター、ポケモンのロケット団として出てきそうな胡散臭いエスパー系の研究員(プログラマー)、ネオナチパワー系のベース、ダークウェブに入り浸ってそうなネトウヨ系のギター、みたいな、これはあくまで個人の勝手な“イメージ”でしかないのだけど、まず音楽性がどうこう以前に、そのティーンエイジャーの厨二病精神をくすぐる強烈なビジュアルセンス、このように各メンバーのキャラが立ち過ぎているのもバンドのしたたかなプロデュース能力の高さを伺わせる。とにかく、こいつらのまず何がヤバいって、マスク2枚やメイク云々じゃなしに(見るからにヤベー女ギターはノーメイクなんじゃねぇか的な意味でも)“素”でこれだからw

  • 音楽性がヤバい
その強烈なビジュアルに負けず劣らずな曲の良さについて。引き続きリード曲の“Swallowing The Rabbit Whole”を例に出すと、元々デビューしたての頃はハードコア界のレジェンド Convergeの正統後継者として推されてたけど、この曲ではレジェンドはレジェンドでもマスコア界のレジェンドことThe Dillinger Escape Plan直系のカオティック・ハードコア、言うなればキッズ化したTDEP、つまりイキったTDEPすなわち“イキリデップ”、そのイキリデップが女の化粧で言うところのベースメイクで、そのベースメイク=下地に光の速さでnine inch nails直系のインダストリアル・ノイズをぶん投げたら、無事に炎上してアートワークのイカレサイコ野郎が生まれちゃった感じ。

今回、過去作と比べて何が1番変わったかって、そのNINex-マソソソ・マソソソで知られるクリス・ヴレンナがプログラミングを担当している点で、それによりNINは元よりPrurientばりのエグいインダストリアル/ノイズと従来のオラついたイキリコアがクロスオーバーしたことで、インダストリアルにキメたブレイクダウンはバッキバキにイキリまくってて、そのドギツいイキリノイズとイキリコアのコアっコアのコアが、まるで壊れた機械のように、それこそバグったスーパーマリオにようにグリっグリのグリにバグっちゃって、ある種のグリッチコアみたいになってる。

何が進化したか?1番わかりやすいところで言えば、冒頭の#2“Swallowing The Rabbit Whole”と#3“In Fear”のパンチラインとしてある無音演出、この無音演出は1stアルバムから存在するバンドの生命線で、今回その無音部分が進化し過ぎてヤバい。改めて音楽界自慢の無音の使い手であり、無音マイスターとしても知られるCode Orangeだが、この曲の無音は過去最高の無音、無音なのに音がエグい、例えるならブラックホールの中心にあるワームホール=特異点の相対性理論により音が圧縮されて、次の瞬間にビッグバンの如く超爆発を起こす感覚、あるいは撃鉄が雷管を打ち抜く時の瞬発的な衝撃に近い無音。0から100、また0から100に音圧ゲージをとイキリゲージを振り切ってくるイメージ。とにかく無音なのにバグってる。もはや無音使いの神だわ。


このインダストリアル×無音、グリッチみたいなバグ音を聴いて思い出されるのは、他ならぬBTMHが小島秀夫監督の新作ゲーム『デス・ストランディング』とコラボした“Ludens”と、その同年にポスト・ブラック界の異端児ことLiturgyが発表した名盤『H.A.Q.Q.』だった。

今でこそ“Xperiaの広告塔”となったBMTHは元はといえばデスコア出身で、一方で元はといえばハードコアの名門Deathwish出身で、今では次世代を担うメインストリームメタルの中心となったCode Orange、この2組は一見別物に見えて意外と共振する部分がある。この【ノイズ×無音×ブレイクダウン】もその一つだし、あとヤベー女ギターがメインボーカルを担うドス黒い闇が宿った闇のヘヴィネス=闇ネスが炸裂する#7“Sulfur Surrounding”の間奏とか、もはやBMTH“Throne”からサンプリングしてんじゃねぇかと思うほどパリピで、このように王道のヘヴィメタルとは一線を画したインダストリアル/ノイズを積極的に取り入れていく革新的な思想面は、ある意味でBMTHの正統後継者と呼べるかもしれない。つまりデスコア時代のBMTHがありえた世界線にいなくはない。

この「街中で出会ったら絶対に目ぇ合わせたらアカン奴ら」で最近なんかデジャブあんなと思ったら、それこそがポストブラックのLiturgyで、つまりTDEPLiturgyNINがエクストリーム合体した・・・って、ちょっと想像しただけでも頭おかしくなりそうな禁忌な配合を実際にやっちゃったイカレコアがこいつらなんですね。面白いのは、同じ20年代のメタルを背負っていくであろうUK出身のLoatheが元DeathwishDeafheavenをリスペクトしているのに対して、元DeathwishCode Orangeはポスト・ブラック界でも異端は異端のLiturgyをリスペクトしている面白さ。もはやメタルコア界の『H.A.Q.Q.』と言っても過言じゃあないかもしれない。

“Swallowing The Rabbit Whole”のMVでもグリッチーな音と恐怖と不安を誘発するバグった映像演出が相まって、いわゆるE(=Explicit)にZ指定不可避な最後の飛び降りシーンとか、いかにも情緒不安定で多感なティーンエイジャーが怖いもの見たさで見て熱狂的な狂信者になりそうな予感。そういった刹那的で衝動的な、厨二病心をくすぐるグロテスクでバイオレンスな猟奇的な描写は、日本のヴィジュアル系バンドのDIR EN GREYがアピールする中二病もとい“痛み”を連想させなくもない。事実、既に世界中でCode Orange Kidsのファンダムを築いていて、そいつらカルト狂信者がイキリヘドバンかましてる姿しか見えないぐらい、現代のコロナリスクで子供部屋に引きこもってる拗らせた陰キャキッズを救い出すスーパーヒーローだ。この【インダストリアル×カオティックコア×中二病】という点では、ほぼほぼディル『The Insulated World』と繋がるし、それらを一つに繋げるアイコニックなバンドとしてもやっぱBMTHってスゲーなって。

  • プロデュースセンスがヤバい
ほぼ全員がボーカルを各楽器と兼任しているバンドではあるけど、それらを踏まえて今作を過去作と比較しても全14曲トータル47分という、もはやハードコアじゃなくて良くも悪くも普通のメタルバンドっぽくなった。それらを象徴するのが、Code Orangeの根幹部と言っても過言じゃあないヤベー女ギターことレバ・マイヤーズがメインボーカルを担う#5,#7,#11,#13,#14で、その男勝りのヤベー歌声や歌い方は元より歌メロまでも元ロードランナーでお馴染みのDream Theaterラブリエっぽくて、もはやラブリエの娘説が芽生えるぐらいには似てて笑う(#13とか確信犯としか思えない)。

確かに、バッキバキのハードコア以外にも、この手のDTA7Xに代表されるアメリカのメタルをリスペクトしたキャッチーな歌モノ系ヘヴィメタルもできますよアピールは鼻につかないと言ったら嘘になるし、この辺は露骨なメタラーに媚び媚びでツマラナイって思う人もいると思う。確かに、確かにあざと過ぎるけど、これからメインストリームのメタルを背負って立つにはこれぐらいのしたたかさは必要経費だと思うので、そこは多めに見てあげてほしい。そもそも、それが“ロードランナーのバンド”というか、いずれはSlipKnoTの正統後継者にしたいロードランナーの思惑が透けて見えるというか(もはやむき出し)、今作における複数の大きな「変化」ってロードランナーならではの「変化」と言ったら存外シックリくるかも。確かに、いかにも“ロードランナー・メタル”な売れ線に他ならないのだけど、流石にここまで極端に振り切ってこられると素直に褒め称えたくなっちゃう、ある種の親心みたいな気持ちのが大きい。要するに、これが「メジャーなメインストリームでやっていくということ」なのかもしれない。それこそ、バンド側から新世代メタルの旗手として20年代のメタル背負っていきまっせ宣言というか、明らかに「売れること」を意識してきた、ここにきて意識的にメタルの未来を背負っていくという自覚と強い意志が音の「変化」から伝わってくる。実際に、過去にコラボした事のあるSlipKnoTコリィ・テイラーに“次世代のメタル”として名指しで指名されている事実。兎にも角にも、そのカルト的なビジュアル面でもカルト的なアレンジやイキった楽曲的な面でも、SlipKnoTの正統後継者兼Convergeの正統後継者兼TDEPの正統後継者兼BMTHの正統後継者兼NINの正統後継者兼マソソソの正統後継者兼DTの正統後継者兼イカレカルトクソバンドとして兼業しまくりなぐらい、ありとあらゆる面で色気づいてきた。むしろ色気しかない。

前作までエンジニアおよびプロデューサーとして深く関わっていたカート・バロウは不在で、継続して参加しているのはウィル・イップだけってのが全てで(ウィル・イップすごい)、コアはコアでも(EarthTrue Widowみたいなスロウコアかじった)パンクルーツのアンダーグラウンドなコアじゃなくて、メインストリームで耳にするようなメタルコアのコアさが主となっている。オールドスクールな極悪ブレイクダウンから、メタルコア系のパリピブレイクダウンに変わった感じ。それにより必然的に音がメジャーにブラッシュアップされて、もはやDeathwish時代のアングラ感は皆無に等しく、オーバーグラウンドどころか一気にメタルのメインストリームの中心地にワープしちゃった感じ。これはLoatheの時にも書いたけど、強いて言うなら「20年代のヘヴィネス」としか他に形容しようがないヘヴィネス、これこそ新世代イキリヘヴィネスだ。この新世代メタルを担う2組に共通するのは、どちらも“メタル”をリスペクトしているということ。どっちも10年代は元より00年代以降のメタルのトレンドを器用に咀嚼して、次元を超えてクロスさせるセンスが何よりも凄い。もはやDeafhevenLiturgyPower TripVeinも、その他10年代にバズったメタルバンドを“無音”に飲み込んで全て過去にする勢い。間違いなく、こいつらが20年代の“新基準”です。

#3,#14に代表される日本語を起用したエキゾチックなアプローチも、日本語ができない外国人キッズ的には「なんかヤベェ!w」と感じる不気味な恐怖と謎の魅力に繋がっているのかもしれない。もちろん日本人的には笑い要素でしかないけど、(今作は20年代の最先端という視点は元より)そういったネタ的な視点からも楽しめちゃうのは日本人だけの特権なので、日本のメタラーは漏れなく全員聴くべきだし、むしろここまで日本のメタラー向けのアルバムってなかなかない。こんなん来日不可避だろ・・・って、コロナの影響で今年のノッフェスとダウンロードフェスが延期とのことで、ワンチャン追加orバンド入れ替えでないか?つうか、これは何度も言ってるけど、Code Orangeと共に次世代のメタルを担うUKのLoatheと日本のCrystal LakeのスリーマンにDIR EN GREY追加してフォーマンするしかなくね?まぁ、なにはともあれ、乗り遅れるな!この“新世代”のビッグウェーブに!
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