Welcome To My ”俺の感性”

墓っ地・ざ・ろっく!

2020年02月

envy 『The Fallen Crimson』

Artist envy
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Album 『The Fallen Crimson』
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Tracklist
01. Statement Of Freedom
02. Swaying Leaves And Scattering Breath
04. Rhythm
05. Marginalized Thread
06. HIKARI
07. Eternal Memories And Reincarnation
08. Fingerprint Mark
09. Dawn And Gaze
10. Memories And The Limit

envyの何が凄いって、凛として時雨9mm Parabellum Bulletなどの邦ロックやheaven in her aemsに代表されるアンダーグラウンドの国産メタルバンドは元より、海外のエモシーンやモグワイをはじめとする轟音ポストロック界隈を中心に、中でも2010年代にメタルのサブジャンルとして黎明期を迎えたポスト・ブラックメタル/ブラックゲイズ、その中心的=アイコニックな存在としてシーンを牽引していた(モグワイの系譜でもある)deafheavenにも強い影響を与え、その多大なる影響力はポスト・ブラックシーンの開祖とも呼ぶべきフランスのレジェンド=Alcestにまで及ぶ、まさに日本が世界に誇るポスト・ハードコア・レジェンドである。

そんなenvyは、2016年にフロントマンであり“伝説のポエマー”こと深川氏の脱退というショッキングな出来事を引き金に、その2年後の2018年にはバンドの中枢を担うギタリストの飛田氏とドラマーの関氏が同時に脱退するという、バンドの存続に関わる大事件が巻き起こった。しかし、その2月後に2人の脱退と入れ替わるように深川氏がバンドに復帰すると、バンドは元メンバーでありドラマーの元ZOZOZOの鬼太郎こと前澤友作(Yusaku MAEZAWA)に復帰を募るも、この数年で今やバンドマンではなく日本屈指の億万長者となっていた前澤友作の札束ビンタで門前払いを食らったとか食らわなかったとか、そんなありもしない噂話が後を経たないでいたバンドは、前澤友作のツイッター企画『お年玉100万円プレゼント』には惜しくも落選するも、長年の念願叶ってサポートメンバーとして9mm Parabellum Bulletのギタリスト滝くんとheaven in her aemsのドラマー渡部くんを迎え、“新生MAEZAWA”もとい“新生envy”として再始動する。そして2020年、新生envyは約5年ぶりに記念すべき復活作となる7thアルバム『The Fallen Crimson』を発表した。

紆余曲折ありながらも復活した新生envy、さっそく今作を聴いてみたら「だいぶ変わってる」、というか「めちゃくちゃ変わってる」は言い過ぎかもだけど、やっぱり「結構変わってる」ぐらいには変わってると言っていいかも。その最たる例としてあるのがリード曲として先行公開された“A Faint New World”で、まずアンビエントな空気をまとったギターのアルペジオと深川氏のリリカルなポエムが織りなす静寂的かつ抒情的な幕開けから、一転して今度はCult of Lunaと共鳴する儚くも幽玄かつ幻想的なモノクロームのディストピアを生成するポストメタルならではのダイナミズムとスケール感を圧縮した轟音と深川氏の泣きながら胸毛かきむしりたくなる系の咆哮が激しく交錯する怒涛の展開、正直ここまでの流れは静と動の対比/二面性を描いた、広義の意味で「いつものenvy」と言っても差し支えない。しかし、この曲における最大の“パンチライン”はその次の展開だ。


また“手前”という名の展開を変えて次に聴こえてきた音こそ、昨年13年ぶり(厳密にいえば4868日ぶり)に復活したヘヴィロック界のレジェンドTOOLと共振する黄金のキザミ」だった。まぎれもなく「いつものenvy」とは一線を画した理知的なキザミが聴こえてきた瞬間は、驚きのあまり約1ヶ月ぶりに「ホーリーシェイ!ホーリーシェイ!」と飛び上がって「エ゙ン゙ヴィィィィィ゙ィ゙ィ゙イ゙イ゙イ゙ヤ゙ァ゙オ゙ッ゙!!」と慟哭しながら奇声発したわ。

正直、この曲って「これまでのenvy」の認識からすると明らかに異質で、しかしこの前澤友作の総資産価値に匹敵する黄金のキザミ」こそ、「これまでのenvy」とは違う全く新しい“新生envy”を象徴するアイコニックな側面であり、前身のBLIND JUSTICE含めキャリア25年以上経過したこのタイミングでenvyというバンドからは到底想像もつかない「キザミの領域」に足を踏み入れる、この反骨心むき出しのオルタナティブな思想および革新的な創造性こそ彼らがレジェンドと称される由縁で、しかしメンバーチェンジがなかったらこの前澤向き、もとい前向きな変化も存在しなかったと考えたら、テスラCEOのイーロン・マスクに匹敵する宇宙開発規模のZOZOマネーでバンドを繋ぎ止めてくれた前澤氏、もとい深川氏をはじめ新メンバーの滝くんと渡部くんには感謝してもしきれない(滝くん!滝くん!)。

そのTOOLのキザミに肉薄するプログレッシブな構築性しかり、初期のMastodonに精通するカオティックな獣性しかり、夜明けを照らし出すようなバッキング・ギターのポスト・エピックなリフレインしかり、キャリアウン十年のレジェンド中のレジェンドがここにきてもう一段階レベルをNEXTステージにアップデイトしているヤバさ。ありえん、素直に才能の塊が過ぎてありえんのだけど、そのTOOLや初期のMastodonを連想させるインテリジェンスなキザミやカオティックコアとブリブリに共振する点でも、もはや今の彼らはメタル界のレジェンドと対等の立場にいる証左であり、これはもう2019年のメタルを象徴するTOOL『Fear Inoculum』Baroness『Gold & Grey』と地続きで繋がってる作品と断言できる。

もっとも面白いのは、このキザミって深さや低域の質量から分析するに、実はTOOLというよりMastodonの名盤『Crack the Skye』における黄金のキザミ」に近いソレなんじゃないかってこと。しかしまさかenvyが日本のバンドで初めて「キザミの世界」に入門してくるなんて思ってもみなかったし、もう完全に「キザミを知ってる人たち」なんですね。大げさな話、「“キザミ”がそこにある限り」をモットーに今を生きる俺への“私信キザミ”かと思ったもんホント(キザミイズ私信)。

「変化」という点では、【ノイズロック+コンヴァージ~初期マストドン=バロにゃん】みたいな1曲目の“Statement Of Freedom”から3曲目の“A Faint New World”まではイマドキのトレンドを抑えたオルタナティブでプログレッシブなスラッジコア/メタルだけど、一転して#4“Rhythm”では大胆に女性ボーカルをフィーチャーした曲で驚いたというか、初めてその歌声を聴いた時は岡田拓郎くん界隈でもお馴染みの女性SSW優河かと思ったけど違った。この辺の女性ボーカルの積極的な起用はAlcestを、まさにenvyなりの『サンベイザー』な激情系ブラゲの#5“Marginalized Thread”は、AlcestフォロワーのMOLを彷彿とさせる。アルバム中段はモグワイ直系の轟音ポストロックを軸に、その間に挟まれる#8“Fingerprint Mark”は新メンバーの滝くん効果により9mm直伝の昭和歌謡風のクサメロが炸裂するダサカッコいい激情ハードコア・パンクで、改めて1stアルバム時代のAlcestへの回答を示す#10“Memories And The Limit”、そしてラストを飾る#11“A Step In The Morning Glow”は、ポストロックはポストロックでもUSのIf These Trees Could Talkをフラッシュバックさせる幽玄かつ淡色のATMSフィールドを展開。もはや今のenvyの唯一の弱点といったらMVがクソダサいところだけ!w

以前までのenvyはどうしても“コア”な音楽性だったからメタル耳にしは少し物足りない部分もあったけど、今作ではポエム中心のアンビエント~ポストロックなサウンド・スタイルからポスト・メタル~ブラゲ寄りのバンド・サウンドに変わった印象というか、とにかく音の骨格がメタルっぽくなってて、それこそ前澤友作もドン引きするぐらい過去最高にメタル耳に馴染むアルバムなのは確か。なんだろう、この「変化」みたいなのを別の言葉で言い換えるなら「色気づいてきた」というか、それはまるで新生envyの新しい夜明け、門出をセルフ祝いするかのような作品で、邦ロック界でも名の知れた9mmの滝くん加入という“ガワ”の面でもオーバーグラウンドに接近しつつ、それら新メンバーが本籍を置く各バンドの特色が“伝説のポエマー”と化学反応を引き起こす事で、楽曲的な面でも「日本初キザミ」という偉業を筆頭にアンダーグラウンドから陽の当たる場所へとヒョッコリと謙虚に顔をチラつかせながら、とにかく様々な面で先の10年代にシーンで活躍したフォロワーたちへの回答っぷりが凄い(滝くん!滝くん!)。

しかし、こうなってくると伏線回収業者でもある僕はこの伏線を回収するためにレビューを書かなきゃいかん、まさに「ここぞ」というタイミングの話なんですね。まさか2020年代1発目の年間BESTアルバムが新生envyだったとは夢にも思わなかったし、色々とゴタゴタがあっての復活作でこの傑作とかエモ過ぎる・・・。これ異種格闘技戦じゃないけど、この新生envyとラウドロック界最強のCrystal Lakeという日本の2大メタルバンドの対バンが実現したら激アツじゃね?って(閃いた)。

しかし改めて、こうやってenvyから影響された、envyが影響を与えた数多くのバンドが今のダンダーグラウンド/メインストリーム双方のシーンで出世している所からも、近代史における日本一の成功者として、資本主義社会における成金の象徴となった前澤友作の成り上がり人生、その実業家としての夢を実現させた反骨心という名のハードコア/パンク精神は、このenvy在籍時に培われたと言っても過言じゃあない。そういった意味では、今の前澤友作があるのは全てenvyのおかげ説あるから、そんな前澤友作という男を輩出したenvyというバンドの、音楽的な内側の話だけにとどまらない人材的な外側の逸話が語られる点でも、正真正銘のレジェンドと称えるべき正当な理由がある(さすが俺たちが育てたMAEZAWAだぜ(←誰だお前))。だから、今や2万7000人の女から求められる“1000億の男”となった前澤友作が最優先に投資すべき案件は、どう考えてもベーシックインカムじゃなくてこのenvyだろっていう話。ワーワー言うとりますが、最後に僕が言いたいことはただ一つ。それは・・・前澤ぁああああああ!!今すぐに俺を雇いやがれえええええええええええ!!そんで俺に10億くれえええええええええ!!(←アホ)

The Fallen Crimson
The Fallen Crimson
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envy
SONZAI RECORDS (2020-02-05)
売り上げランキング: 561

Defeater 『Defeater』

Artist Defeater
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Album 『Defeater』
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Tracklist
01. The Worst of Fates
02. List & Heel
03. Atheists in Foxholes
05. Desperate
06. All Roads
07. Stale Smoke
08. Dealer / Debtor
09. No Guilt
10. Hourglass
11. No Man Born Evil

久々に2ndアルバムの名曲“Dear Father”を聴いたらディァ゙ファ゙ザァ゙!ディァ゙ファ゙ザァ゙!と顔クシャクシャにして泣き叫びながら胸掻きむしりたくなる衝動に駆られた、そんなマサチューセッツはボストン出身のメロディック・ハードコアバンド=Defeaterの名門エピタフレコードからリリースされた約4年ぶりとなる5thアルバムは、自身のバンド名を掲げた初のセルフタイトル作品。

初っ端からI Won’t Be Coming Back Homeという意味深な歌詞から不穏な幕開けを暗示する#1“The Worst of Fates”からして、仲間たちとバカやって青春時代を謳歌していたあの頃の青春パンクとは一転して重苦しいダークでヘヴィな世界観を繰り広げ、続く#2“List & Heel”では仄暗い水の底から、あるいは陽の当たらない真っ暗闇の独房の片隅で虚しくこだまする助けを呼ぶ悲痛な叫びと堕ちるとこまで堕ちた男の悲壮感が溢れ出す慟哭のメロディが、聴き手のメンタルを“ドン底”へと突き落とすかのような一種の“堕落コア”で、今から9年前の2ndアルバム『Empty Days & Sleepless Nights』の冒頭と今作の冒頭を比較すると同じバンドとは到底思えない変貌っぷりに驚愕した。

この変貌っぷりを例えるなら、人生無敵だったはずの10代のイキリハーコーキッズがある時から道を踏み外して、ギャンブル、ドラッグ、酒に溺れてアラフォー髭面のヤサグレたおっさんになって、人生最後の一発逆転狙いで裏カジノのポーカーに残りの全財産を全ベットするも見事に惨敗して、「もう終わりだぁ!」と人生に絶望して悲観主義者=ペシミストとなったリアルカイジの転落人生を見ているかの如し劇的な変わりよう。なんだろう、ドラッグでハイになった反動で極度の鬱状態に陥ってる感覚。それこそ日本の公営ギャンブルの競馬で例えるなら、つい最近で言うと芝のG1馬が初ダート挑戦で重賞勝利したモズアスコットみたいな感じ(モズアスコットは買えた)(なお相手)。

まず一つ目にフロントマン=デレク・アーシャンボルトの声が汚な過ぎて、初めて聴いた時は本当にボーカル変わったかと思った。初期BMTHオリヴァー・サイクスっぽい典型的なエモ/スクリーモスタイルの歌声だったのが、なんだか酒焼けしてPower Tripライリー・ゲイルみたくなってる。この辺も悲観主義者のオッサンが主役の“堕落コア”に合わせて“あえて”喉を潰したのか、それともリアルに堕落した生活を送った「ありのままの姿」なのかは不明。

二つ目は、その冒頭の冒頭から体の軋みや歪みを体現するかのような歪んだギター、それこそ在りし日のKEN modeを彷彿とさせるノイズロックばりに低音効かせまくりの骨太なベースライン、それらの「とにかく汚い音の変化」を象徴する、冒頭からザラついたギターを乗せて猪突猛進するBlack Breathばりのクラストパンクの#3“Atheists in Foxholes”、筆頭すべき今作のパンチラインとなる#5“Desperate”は、レジェンドEarthTrue Widowなどのストーナー/サイケならではの泥臭いダーティさと、Cult of Lunaをはじめとする轟音系ポストメタル/スロウコアの内省的なダウナーさが共存した、要するにバンドのローなテンションや音の感度がドゥームやスラッジあるいはクラストのそれで、まるで年を重ねるにつれて高域が聞き取りづらくなるという医学的な根拠を身をもって証明するかのように、年齢と反比例するかの如く音の腰は低い重心を保ち、中年のおっさんが聞き取りやすい低域重視のサウンド・スタイルに変化している。そう言った意味でも、俄然それらのアンダーグランド・メタル界隈に精通するヘヴィでダークならぬ“ダート”な音作りで、(初期の頃からメタリックな側面はあったし、だからこそ気に入ったバンドなんだけど)同時にメロディの作りがメロコアよりもメタル寄りの点でも俄然メタリック・ハードコアに近いノリで聴けなくもない。これはどうでもいいけど、#3のアウトロがMastodon『Crack the Skye』っぽくて半ば強引に丼と共振できなくもないw

じゃあ完全にメロコアからメタルになったかと言えばそうでもなくて、息つく暇も与えないノンストップかつギャップレスに曲を繋いでいく流れはメロコアならではの焦燥感を作る演出だし、またそのギャップレスな流れを利用した激情的な曲構成(主に#7〜#8の流れ)や持ち前の胸掻き毟りたくなる衝動的かつ刹那的なメロディは、言うなれば2ndアルバムのハイな高揚感から転換してローな高揚感=静なる激情を誘発する。このメロディの本質的な部分は紛れもなく『Defeater』そのものだし、つまり扇情的かつエピックで激情的なメロディセンスは美メロが悲メロに変わっただけで本質的には何一つ不変。むしろ地べたに這いつくばって泥まみれになりながらも生きながらえる、“底”まで堕ちきったド底辺男の背中が醸し出す哀愁が宿ったメロディは、その辺のヘタなエモよりもエモい「本物のエモ」である。

そして、今作が何故セルフタイトルを掲げているのか?その意味を知ることとなるのがラストの#11“No Man Born Evil”で、まるで失った青春を取り戻すかのように、真っ暗闇の道に希望という名の光が差し込んでくるかのようなカタルシス全開のラストは、それこそ全世界の悲観主義者=ペシミストに贈るレクイエムだ。つい衝動的に胸掻き毟りたくなって胸掻きむしったら中年オジサンのモジャモジャの胸毛を掻きむしっていた気分だ。ハッ、この毟り取った胸毛が「エモさ」の代償なのか・・・?

ちょっと待って、めちゃめちゃ完成度高いやんと。これ普通に傑作やんと。これヘタしたら2ndアルバム超えてますやんと。それもそのはず、今作の共同プロデューサーにはNothingの2ndアルバムやLa Disputeでもお馴染みの、この手のエモ/スクリーモ界隈で知らない人はいない信頼と安心のウィル・イップってんだから納得(ちなみにマスタリングはSterling Sound)。しかしながら【エピタフ× Will Yip】とか、競馬で例えるならこの【血統×調教師】コンビは「買い」と言ってるようなもんです。しかし改めて、あの2ndアルバム以降全く冴えなかった終わったバンドを完全復活させるウィル・イップってやっぱ天才だと思うし、この復活作でセルフタイトルを冠する意味を考えたらエモ過ぎて泣ける。

ポルカドットスティングレイ 『新世紀』

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ポルカドットスティングレイって2017年のミニアルバム『大正義』の時に一回だけ記事にして、同年にリリースされたメジャー1stフルアルバム『全知全能』も一応は聴いて記事にするネタは上がってたけど、いかんせんタイミングが合わなくて結局何も書けずじまいでいた。そんな矢先、2019年にリリースされたUKのSSWマリカ・ハックマンの新譜を聴いたら久々にポルカの名前が頭に浮かんで、そんな引力もあったりなかったりしつつ、しかも去年レンタルしてリッピングしたまま放置していた2ndアルバム『有頂天』を今さら聴いてから、その流れで久々にポルカの新作ミニアルバム『新世紀』が出たっていうんで早速聴いてみたら、改めて「やっぱこいつら才能あんな」って思ったから久々に書く。

何が「やっぱこいつら才能あんな」って思ったかって、オープニングの“SQUEEZE”から“Xperiaの広告塔”ことBMTH『amo』に対するJ-POPからの回答と言わんばかりの、いわゆるヒップホップやトラップの要素を取り入れてポルカ色にアップデイトしているあたり、やっぱこいつらセンスあんなって。確かに、そんなことは歌詞にもある相対性理論がとっくの昔にやってんじゃんってツッコミはなしに、なんだろうコテコテのバンドサウンド推しだった1stアルバムの『全知全能』からねごと的な打ち込みアレンジを取り入れ始めた2ndアルバム『有頂天』を経由してからのオープニング感あって、フロントウーマンのさんのラップやギタリストハルシくんの(CHONに代表される)西海岸系インストをルーツとするギターのアレンジ共に洋楽風のアプローチで聴かせる。あと全4曲入りでトラップ系のJ-POPというと岡田拓郎くん『The Beach EP』を思い出した。

ポルカってある意味でフロントウーマンのさんのモノマネもとい歌とギタリストのエジマハルシくんの“歌ってるギター”による実質ツインボーカルみたいな構成なのも一つの魅力で、今のギターが死んだ時代に「俺のギターを聴けえぇぇぇええ!!」とばかり弾き倒す、さんよりもポルカの生命線と言っても過言じゃあない、ジャズ/フュージョンにも精通するハルシくんのギタープレイは、このミニアルバムでもキレキレに冴え渡っていて、特に四つ打ち邦ロックな2曲目の“sp813”ではクラシカルな超絶ギターソロを披露しており、まさに新世代ギターヒーローと呼ぶに相応しい貫禄すらある(一度でも某“平成最悪のヴィジュアル系バンド”のギタリストの後継者と思った自分が恥ずかしい)。ギターがカッコ良過ぎて、もはや「ハルシくんの貞操を守り隊」に入隊したくなった。

過去にはヤイコラブサイケデリコねごと蒼山幸子や同郷福岡の女帝椎名林檎tricotイッキュウ中嶋など、ポルカのフロントウーマンでありながらモノマネ芸人でもあるさんの百八式あるモノマネレパートリーは今作でまた一つ更新する事となった。実は今作一の目玉というか巷で評判だった3曲目の“トゲめくスピカ”は、それこそ2005年前後の大塚愛をはじめ、厳密に言えばアルバム『CAN'T BUY MY LOVE』時代のYUIをフラッシュバックさせるさんの切ない系の歌声とエモーショナルなメロディで聴かせる。一般的にポルカからイメージされるギターロック系じゃなくてメロディで聴かせるタイプの曲も書ける、むしろそっち系のが好きってヤツも結構いそうなぐらいの完成度はあって、今作における箸休めとしての役割、それ以上にメインディッシュとして扱うべき噂通りの名曲だと思う。もちろん、僕のように“あの頃のYUI”が青春の一部にある人ならドンピシャですw

そのさんによる百八式モノマネのみならず、初期の頃からバンドとしても某RED PARKやtricot9mm Parabellum Bullet凛として時雨などのマスロックやポストハードコアへのアプローチを垣間見せたり、こう見えてあらゆる階層の引き出しを懐にこしらえたオルタナバンドでもあって、そう言った意味でも今作はラップもできるわメロも歌えるわ、フルアルバムの延長線上にあるアレンジのアップデイト、新世代ギターヒーローの絶対的な存在感を筆頭に、フルアルバムよりも実験的なことができるEPあるいはミニアルバムならではの前衛性と“らしさ”が両立した、贅沢過ぎる作品で最高。これは別にポルカに限った話じゃないけど、間延びせずにバンドの尖った部分とらしい部分が端的に詰まってるから、フルアルバムよりEPやミニアルバムの方が完成度高いバンドって案外少なくない。つまるところ、やっぱ『大正義』って名盤過ぎじゃね?って(←ただのシンクロニシカ厨)。
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