Welcome To My ”俺の感性”

墓っ地・ざ・ろっく!

2018年08月

岡田拓郎 『The Beach EP』

Artist 岡田拓郎
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EP 『The Beach EP』
cover

Tracklist
01. Shore
02. By The Pool (feat. James Blackshaw)
03. After The Rain
04. Mizu No Yukue

結局、今の時代って一周回って「ポップス」が一番面白いんじゃねぇか説あって、昨年まさにそれを体現していたのがスティーヴン・ウィルソンTo the Boneだった。今年の11月に奇跡の来日公演を控えているSWが、その最新作『To the Bone』の中でやってのけたのは「ポップスの再定義」。時を同じくして、この日本でも「日本語ポップスの再定義」を志した若者がいた。その若者の名前は、岡田拓郎

何を隠そう、僕は岡田くんのデビュー作ノスタルジアについて、SW『To the Bone』で示し出した「ポップスの再定義」の話と共振させると同時に、岡田くんはSWと同じく”AORスキー”な人物であると説いた。この配信限定EP『The Beach』は、まさに岡田拓郎がどれだけAORマニアなのかを証明するかのような一枚で、ある意味で僕が『ノスタルジア』に書いたことへの”回答”として生まれた作品でもある。というのは冗談で、今年に入ってから岡田くんは(ツイッターで)AORの曲を集めたリミックスをクラウドにアップしてて、いま思えばそのツイートが全ての伏線というか”始まり”だったんだ。

その『The Beach EP』というド直球過ぎるタイトルと、イギリスの写真家で音楽家のスティーヴ・ハイエットの作品を冠するアートワークが示唆するように、まるで青い空!澄んだ海!白い砂浜!を舞台にサンバイザー姿のピッチピチのギャルがノキャッキャする光景が浮かんでくるような、このクソ暑い夏にピッタリの「岡田拓郎なりの夏ソング2018」が堪能できる。

森元もとい元森ことex-森は生きているのドラマー増村くんが作詞を手がけた、幕開けを飾る1曲目の”Shore”から、アンニュイにたゆたう岡田くんのジェンダーレスなボーカルとともに、80年代のAOR全盛をフラッシュバックさせるシンセ/キーボードをはじめ、『ノスタルジア』でも垣間見せた”マルチプレイヤー岡田拓郎”の類まれな才能が、この厳しい夏の夜に幾重にも重なり合う夏色の音が”打ち水”となって涼しげに眠り手に寄り添う。デビュー作の『ノスタルジア』では、それこそThe War On Drugsを彷彿させるインディ・ロック系のAOR的なアプローチを見せていたが、この曲ではTWODのベーシストデイヴィッド・ハートリーのソロ・プロジェクトNightlandsを彷彿させる、より「ポップス」に重心を傾けたドリーミーなサウンドを展開している印象(まるで音のクールビズや~)。

この”Shore”は、前作で打ち立てた「日本語ポップスの再定義」の続き、あるいは延長線上にありながらも、しかし中盤以降の蒸し暑い闇夜の中を幽幻に彷徨う増村くんによるパーカッションの鳴らし方は、それこそSW『To the Bone』、その表題曲や”Detonation”への回答のような、その元ネタとなるペット・ショップ・ボーイズをはじめとした往年のAORへのリスペクトを込めた鳴らし方でもあって、もはや前作『ノスタルジア』の延長線上にあるというよりは、それと対になる『To the Bone』の延長線上として捉えるべき案件なのかもしれない。この時点で、あの現代インディ・ロックの名盤と名高い『ノスタルジア』を経て、あらゆる面で着実にアップデイトしてきた彼の今を知ることができる。

奇しくも波打ち際のSEから始まり、そのままDeafheaven”You Without End”が始まりそうな、真夜中のサンビーチを佇むような2曲目の”By The Pool”は、今作のアートワークでもお馴染みのスティーヴ・ハイエットの唯一のアルバム『渚にて』からのカバー曲で、ボーカルには岡田くんの盟友でありイギリスのSSWであるジェームス・ブラックショウが参加している。この曲のサウンド・アプローチこそ、まさに今作の夏色を象徴する70年代後半から80年代中盤までのAORが奏でた本場の”夏の匂い”を、この2018年の夏に向けて届けてくれる。

ご存知、近頃のSWエイフェックス・ツインをはじめとした「コーンウォール一派」やモダンなエレクトロニカに傾倒していて、例に漏れず「日本のSW」こと岡田くんもその手の音楽に精通していないわけがなかった。3曲目の”After The Rain”は、それこそSWのプレイリストにチョイスされているエレクトロニカ系の曲の系譜にある、真夏の夜に突如雨音が降り注ぐようなニカチューンで、それこそ”80年代”を舞台にしたNetflix『ストレンジャー・シングス』のサントラ風のミステリアスな世界観もあり、それこそスウェーデンのCarbon Based Lifeforms系の深海大好きなアトモスフェリックなサイビエントっぽくもある。その現代的なエレクトロと増村くんが奏でるパーカッションの原始的な音色が時を越えてクロスオーバーする姿は、いかにも岡田くんらしいというか、まさに岡田拓郎という一人のミュージシャンの嗜好性を表していて、つまり(これは『ノスタルジア』でも言及したけど)決して懐古主義的な存在では終わらない、むしろ全く新しい”新時代”の音楽としてイマにアップデイトし続けていく、その貪欲的かつ挑戦的な姿勢は、もはやデビュー作の『ノスタルジア』を凌駕する底知れなさがあって、またしても彼の底抜けの才能を見せつけられた気がした。とにかく、この辺のモダンなサウンド・アプローチも、彼がただの懐古主義論者ではなくイマドキの若者であることを意味していて、ここでも俄然「日本のSW」と呼ぶに相応しい側面を垣間見せてくれる。

岡田くんは森は生きているでも常に一貫して「実験的」な音楽を探求し続けていた。開口一番、デイヴィッド・シルヴィアンエイフェックス・ツインが五次元空間で間違って邂逅してしまったようなアコギと(SW”Detonation”でも見受けられた)電子音を靡かせる4曲目の”Mizu No Yukue”は、このEPで最も「実験的」な側面を持ち、そして彼が過去の音楽雑誌に残したポップスにおける普遍性=アヴァンギャルドであるという言葉を体現したような、天才いや奇才岡田拓郎の真髄と呼べる真珠の一曲だ。それはまるで森は生きているの2ndアルバム『グッド・ナイト』”磨硝子”を彷彿させる、アヴァンギャルドかつエクスペリメンタルな方向性や実験性を極限まで極め尽くした先にある世界というか、パーカッションとアコギ、変態チックなな電子音やニューエイジをルーツとする環境音が予想だにしない交わりを見せながら、またしても「日本のSW」であると再認識させる、しかしそれ以前にエイフェックス・ツインに匹敵する変態っぷりにド肝抜かれたというか、なんかもうツイッターで「#日本のエイフェックス・ツインなの僕だ」みたいなツイート連投してそうだし、そのツイートに対して相対性理論やくしまるえつこが嫉妬してブチギレそうな展開で笑ったわ。とにかく、インストなのにインストに聴こえない。もはや音が、自然が歌っているかのよう。

あらためて、日本語インディ・ロックの金字塔となった『ノスタルジア』と比べると、よりモダンで、より実験的なアプローチを持つ、そういった意味ではEPらしいっちゃEPらしいというか、わりと好き勝手なことしても多少は許されるEPならではの作品と言える。懐かしい往年のAORリバイバルを主としたボーカル入りの2曲と、一転して現代的な嗜好が主なインストの2曲、前半と後半、陽と陰のイメージで構成されたバランスの良さも実に器用。フルアルバムの半分にも満たないたった4曲にもかかわらず、これだけ新旧様々な音を自在にコントロールして一つの曲を組み立てていく、その「こだわり」とフレキシブルな音楽センスに尚さら脱帽するし、ここまで濃厚で深みのあるEPは未だかつて聴いたことがない。聴けば聴くほど、噛めば噛むほど味が出るEPだ。相変わらずSW作品とともにハイレゾで聴く価値のある、極上なプロダクションの気持ちよさは健在で、結論から言って彼は「日本のSW」

そのSWとの”繋がり”という意味では、主に”現代アーティスト”としてSWに繋がる部分が前作以上に沢山あって、なんかもうホステスはチャーチズに水カン勧めてる暇があったら、さっさと岡田くんをSWに紹介すべきだろうと。それでSW来日公演のOPアクトに岡田くん呼んでくんねぇかな。とにかく、これ以上この天才という名の変態を日陰にほっておくのは日本音楽界の損失にしかならない。

Svalbard 『It's Hard To Have Hope』

    Artist Svalbard
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    Album 『It's Hard To Have Hope』
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    Tracklist
    02. Revenge Porn
    03. Feminazi?!
    04. Pro-Life?
    06. How Do We Stop It?
    07. Try Not To Die Until You’re Dead
    08. Iorek

    2018年、UKの気鋭レーベルHoly Roar Recordsがアツい。Holy Roarといえば、主にUKのアンダーグラウンドのマスロックやポスト・ロック/ハードコア系のバンドを多数排出している、知る人ぞ知る優良レーベルである。しかし、今年2018年に入ってからというもの、Holy Roarのレーベル内に”とある変化”が起こっている。

    その”とある変化”とは一体ナニか?それこそ、10年代のメタルシーンに突如として現れたdeafheavenという”新世代”の驚異に対抗するため、その1つ目の手段として今やHoly Roarを支える屋台骨であり大エースのRolo Tomassi「女版デフヘヴン」に魔改造するという一か八かの大博打を打ち、それが見事に大当たりした結果、2018年の決定打となるアルバム『Time Will Die And Love Will Bury It』という金字塔を打ち出した。2018年は、そのRolo Tomassiの大傑作を皮切りに、新世代メタルの申し子であるdeafheavenのDNAとポストブラック界のレジェンドAlcestのDNAを遺伝子操作して、いわゆる”クローン系ポストブラック”としてデンマークで生まれたmolを、いわゆる「デフヘヴン包囲網」の一環として数の暴力とばかり立て続けに送り込んでいる。日本国内からは、凛として時雨がV系代表として「デフヘヴン包囲網」に参加している。

    何を隠そう、その「デフヘヴン包囲網」をより強固なものとするべく、デンマークのmolと同じ刺客の一つとして送り込まれたのが、UKはブリストルで遺伝子組換えされた4人組のSvalbardだ。Svalbardは、紅一点でギター&ボーカルのセレナ・チェリーちゃん、同じくギタボのリアム、ベーシストのクリス、そしてドラムのマークで構成されている。



    初っ端の#1”Unpaid Intern”から、UKのハードコアレジェンドDischargeが生み出したDビート直系のクラストに、方やドスの効いた獣性むき出しの咆哮、方やクラストコア風のパンキッシュな咆哮が怒涛の勢いで炸裂し、「あぁ、これ前者がギタボの男で、後者がベースの男かな?」と予想したら、前者のドスの効いた方の咆哮がまさかのセレナちゃんの激昂ボイスだったという・・・そう、まさかの「叫ぶ女」案件だったオチにすべて持ってかれて動揺する暇も与えぬまま、今度は”リベンジポルノ”とかいう強烈なタイトルを冠する#2”Revenge Porn”では、今度こそセレナちゃんの歌声だと判別できるCHELSEA WOLFE顔負けの呪詛系SSWみたいなドリーム・ポップ/ポスト・ロック的なパートと、まるで青春時代の黒歴史がフラッシュバックして胸を掻きむしりたくなるような衝動とティーン・エイジャーの煩悩や鬱屈したエモーション、それらの”痛み”を”歪み”に変換したギター・プロダクションをブラストに乗せて、そして人目をはばからず焦燥と刹那を内包した激情という名の怒りとともにブラゲ然とした荒涼感を周囲に撒き散らすブチギレパート、そのいわゆる”静と動”のコントラストを活かした曲構成、それこそ砂嵐のようにザラついたギターの音像やポストメタル的なフレーズや超絶epicッ!!なトレモロ、胸の高まりを誘発するブチ上げ展開、それらのオルタナっぽい音作りから予測不能な曲構成まで、これもう完全に新世代ポストブラックのソレで、もはやKylesaの名盤『Static Tensions』を聴いた時と同じ衝撃だった。なんかもう「Holy Roar半端ないって!まだこんな隠し玉用意してたとか!そんなんできひんやん普通!」って感じ。



    セレナちゃんのブチギレボイスともに、初期deafheaven顔負けの歪んだギターの音像からスラッジ/ポストメタルばりの轟音を響かせる#3”Feminazi?!”、そして今作のハイライトを飾る#4”Pro-Life?”は、お馴染みの緩急を活かした曲構成をはじめ高揚感を煽るギター・フレーズやドチャエピなトレモロ・リフまで、もう確信犯ってレベルじゃないほどの王道ポストブラックで、かと思えば、それこそ日本のDizzy Sunfistじゃないけどメロコアばりに爽やかな疾走感に始まってモダンなヘヴィネスを経由したリフを挟んで最後はエモ/ポストハードコアならではの激エモなシンガロングをブッ込んでくる#5”For The Sake Of The Breed”、再びトレモロ主体でエモキッズが泣きべそかきながら直走る#6”How Do We Stop It?”、まるで「女版Alcest」みたいなセレナちゃんの美声をフィーチャーした#7”Try Not To Die Until You’re Dead”、そのAlcestっぽい流れを引き継いだアウトロ/インストの#8”Iorek”まで、序盤はまだ自身のルーツであるDビートやエモ/スクリーモの精神を失わずにいるけど、中盤から終盤に進むに連れて、次第にHoly Roarによって遺伝子操作された影響が露骨に出てきて、最終的には「ども~ウチらポストブラックで~す」みたいなノリで自らの正体を明らかにするアルバム構成は、ただただファッキン・エモーショナル=クソエモいです。

    なんだろう、メチャクチャ極端な例えが許されるならば、あの歴史的名盤『サンベイザー』を通過しなかった世界線のdeafheavenが新作の『Ordinary Corrupt Human Love』をやったらこうなる、みたいな。あるいは、Deathwish時代まだまだ荒削りだった頃のデフヘヴンの初期衝動と、それに伴う未知のアングラ感を地続きでアップデイトした感覚というか、例えば兄貴分のmoldeafheavenAlcestのDNAをピンズドで抽出したハイブリット型のバンドだとする、姉貴分のRolo Tomassiがマスコア側からポストブラックへの迎合を図ったとするなら、このSvalbardはDビート/エモ/スクリーモ側からポストブラックへの回答を示し、そしてデフヘヴンを包囲、それもピンポイントで新作の『Ordinary Corrupt Human Love』を包囲してるってのがキモ。マジで”Holy Roar三銃士”おっかねぇわ。

    ありがちなエモ/スクリーモ系のポストハードコアじゃないってのがミソで、良くも悪くも本能に忠実な猪突猛進型のアンダーグラウンドなスクリーモだった1stアルバムから、Holy Roarの策略によって半ば強制的に新世代ポストブラックの遺伝子細胞を注入された事で、音作りや曲構成から何まで格段にスケールアップすることに成功、つまりジャンルレスなハイブリットメタルとして完全に化けた。確かに、一言で言ってしまえば”ごった煮ハイブリットメタル”だけど、決して音楽的に破綻することのない底知れぬインテリジェンスがあって、そういった意味でもだてに”Holy Roarの秘蔵っ子”名乗ってないです。

    そもそも、前作は前作でデフヘヴン『New Bermuda』と同列に語られるべきアングラハードコアの名作で、つまり今回のポストブラック化に至るまでの伏線というか適性みたいなのは元から持ち合わせていて、しかしバンド自身がまだ知らないような未知なる才能を見込んでポストブラックに魔改造したHoly Roarってどんだけしたたかなレーベルなんだ・・・と改めて舌を巻くというか、それが逆に不気味で怖くもある。

    ???「メタルは古くさいwww」
    メタルは古い

    ところで、つい最近BFMVのフロントマンで知られるマット・タックMetal Hammer誌のインタビューで、メタルは少し古いと発言したことがメタル界隈でプチ炎上したのをご存知だろうか。その発言に対して、SNSを中心にガチメタラーから数千件にもおよぶ批判コメントが寄せられた。そして、その中のひとりにマット・タック宛に「異議あり!」の手紙を書いた人物がいた。その人物こそ、Holy Roar Recordsの最高責任者であるアレックス・フィッツパトリックだった。

    その手紙の中で、彼はHoly Roarに所属するmolEmployed to Serveを例に出して、主に「メタルはアンダーグラウンドで日々進化している」と説いている。まだまだアンダーグラウンドシーンには面白いメタルが沢山あると。そして最後に、「メタルが刺激的であり続けるには進化しなければならない、しかし”進化”するためには”変化”しなければならない」という、今のマット・タックには色々な意味でヘヴィな言葉を置き手紙にしている。

    恐らく、今のメタルシーンでこのマット・タックの炎上発言に対して真正面から物申せるメタラーって、それこそメタルゴッドのロブ・ハルフォードHoly Roarのボスであるアレックスの二人だけだと思う。この手紙を締めくくるメタルの”進化””変化”の話は、それこそSvalbardの本作『It's Hard To Have Hope』を耳にすれば至極納得できるハズだし(誰だ”変化”を”魔改造”とか言ってる奴わ!)、少なくとも今年のHoly Roarからリリースされた作品の数々を聴けば、このボスの反論は説得力の塊を乗せたただの火の玉ストレートでしかなくて、だてに人気者のマット・タックにオラついてないというか、彼がボスでいる限りHoly Roarは現代メタルの最先端にいる新世代レーベルの座は揺るぎないし、だてに12年もレーベル続けてねぇなって。

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    チャーチズが水曜日のカンパネラのコムアイとコラボした”私の頭の中から”を公開!

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    先日開催されたフジロックで、ホワイトステージのトリに相応しい圧倒的なライブを披露したチャーチズが、水曜日のカンパネラコムアイをフィーチャーした新曲”Out Of My Head(私の頭の中から)”をリリースした件について。

    ご存知、チャーチズの3rdアルバムLove is Deadは、過去最高にローレン・メイベリーという一人の”めんどくせぇ女”もといフェミニストのデスメタルばりの不満不平を謳ったエゴい作品で、そのグラスゴーを代表するフェミニストローレンと日本の音楽界を代表するフェミニストことコムアイの奇跡の邂逅が実現、でもこんなんおっかな過ぎて聴けねぇわ・・・。

    驚いたのは、今回のコラボをオファーしたのが(どうせコムアイ側だろうと思ったら)まさかのローレン側と聞いて、だてに意識高い系フェミニストやってないなというか、この極東のJ-POP事情の理解度の高さに舌を巻くるというか、日本国内でその手の強いメッセージ性とユニークな音楽性を併せ持つ水曜日のカンパネラコムアイに、自分と同じフェミニストとしてのフィーリングを感じた末の必然的なコラボと言える。しっかし、この国の女議員が「LGBTは生産性がない」と発言したり、某医大の「女子受験者を一律減点」などの差別問題が注目されている絶妙なタイミングで、この日英フェミニストによる怒りのコラボ曲が発表されるとか・・・もはや狙ってやってる確信犯としか思えなくて、兎に角おっかねぇですw

    つい最近、あのグライムスがK-POPとコラボして話題を呼んだが、今回のコラボはそっちの文脈で語る方がシックリくるかもしれない。勿論、グライムスチャーチズ、どちらが日本人好みか?とか、どちらがJ-POP的でどちらがK-POP的であるのか?とか、それはわざわざ答えるまでもない質問だろう。それでも例外はあって、例えば”一応はK-POP”Dreamcatcherは2ndミニアルバム『悪夢・Escape the ERA』”あの星”という曲でチャーチズをリスペクトしている。そういった意味では、ドリキャは限りなくJ-POPに近いK-POPと言えるのかもしれない。マジあざといわぁ→



    歌詞は”川崎とグラスゴー”、”忌野清志郎とデヴィッド・ボウイ”、”枝豆とフィッシュ&チップス”、そして「SNSウォーキング・オブ・デッド!」など、コムアイならではの(しかし的確に今の時代を捉えた)ユニークな日本語歌詞と『Love is Dead』の延長線上にあるエゴい英詞が、国境を超えて、そして人種を超えてクロスオーバーしていく様は、まさに「時代」を感じさせる。

    この曲は新作の『Love is Dead』と同時期に制作されたとのことで、音のアレンジ自体は新作の延長線上にある王道チャーチズのシンセ・ポップを展開している。これはフジロックのパフォーマンスを見ても思ったのだけど、新しくサポート・ドラムが加入したことでライブでも俄然バンド・サウンドっぽいグルーヴ感マシマシになってて、このコラボ曲でもドラムのビートが全体のリズムを形成する中核としてその存在感を発揮しており、つまり「ロックバンド化したチャーチズ」として、また新たな一面を覗かせるような一曲となっている。普段のチャーチズとちょっと違うなというか、ちょっと新鮮に感じたのは、ローレンAnd when you figure it out!!と怒りをブチ撒けるサビの後のI need out of my, out of my, out of my headと繰り返すコーラスの部分で、ここの脱力系のファミニンな雰囲気だけノルウェーのAURORAっぽいなって。これAURORAフジロック出演フラグ立ったな・・・。

    MVはアニメーション作家の山元隼一監督によるもの。しかしコムアイ出世したなぁ...!

    Dreamcatcherがオーディションで募った生バンドとコラボ!

    キツネさんポーズ

    先月の7月14日に開催されたDreamcatcher東京公演(1部&2部)を観て、2部公演の最後の最後で思っちゃったのは、まず1つは「やっべ、やっべ、これサマソニでモッシュしてぇ・・・」って事と、そしてもう一つは「これ生バンドでやったらどうなるんやろ・・・でも生バンドはなんか怖えぇわ・・・」って事だった。何が「怖い」って、例え生バンドを迎えるにしても、そもそもK-POPやヒップホップにリソースを全フリしてる韓国国内の音楽シーンの中に、メタル系の曲を演奏できるバンドマンや(スタジオ)ミュージシャンが存在するのか?という、ある種の恐怖にも近い一抹の不安が頭を過ったからだ。

    そんな絶妙過ぎるタイミングで、オーディションで募ったギタリストやドラマーで構成された生バンドとドリキャがコラボした”Mayday”の動画が公開された。まず、5月にリリースされた2ndミニアルバム悪夢・Escape the ERAの3曲目に収録されたこの”Mayday”は、ドリキャの曲で最もリズム隊の手数とヘヴィなギター・リフがフィーチャーされたバンドサウンドが特徴的なロックナンバーで、ハッキリと言ってしまえばアニメ『ワンピース』のOP/EDに起用されそうな、もはや完全にアニソン系J-Rockのソレなんですね。自分の中で『ワンピース』のOP/EDっていうとJanne Da Arc”Shining ray”なんだけど、実は”Mayday”のイントロのキーボードとかちょっとkiyoちゃんっぽい。それもあってか、個人的にアルバムで一番再生してるのもこの曲だったりする。



    面白いのは、この曲って”ただのメイト”ことメインボーカルのシヨンの為に作られた曲と言っても過言じゃあなくて、もはやこの曲のアニソンライクなアレンジや今回の生バンドと共演する企画も実はシヨンが発案した説すらあって(シヨンこわい)、もっともシヨンは「できればライブも生バンドで...」みたいなニュアンスの発言もしてて、なんだろう、それって完全にベビメタを意識した発言でもあって、だてに”ただのメイト”やってないなって。つうか、この曲のシヨンは完全にLiSAそのもの。



    で、このコラボ動画に関するちょっとした小ネタがあって、それこそ「お前それ何弦ギターやねん!?」とツッコミ不可避なギターのヤベー奴ともう片方のギターの存在で、ツイッター調べによるとその(ヤベー奴じゃない方の)ギターはどうやらソウル出身のメタルコアバンドRemnants of the Fallenのギタリストらしくて、まず韓国にメタルコアバンドが存在していた!?って事に驚くんだけど(失礼)、まさかこんなに早い段階で生バンドとの共演が見れるなんて思ってなかったし、しかも韓国産の生バンドに対する不安や恐怖が吹き飛ぶくらいのハマりっぷり。しかし一方で、あくまで余興に近い”カラオケレベル”な所を見ると、やっぱりベビメタの神バンドって相当凄いんだなって。とにかく、今回の件は実質「私たち生バンド生歌でサマソニ出れます!」宣言に等しいので、クリマン清水社長は来年のサマソニのK-POP枠にドリキャ呼んでください!もしベビメタも一緒に出るならメイトのシヨンもスッゴク喜ぶだろうなぁ...!



    そのRemnants Of The Fallen、MVはスーパークソダサいけど、曲は全盛期のAILD直系の北欧メロデス系メタルコアで普通に良いです。もしかしたら今回の企画が縁でドリキャとツーマンで来日あるぞこれ(ネーよ)。そんな彼らのインタビューは、今月8日発売の『デスメタルコリア 韓国メタル大全』にも記載されているので、未知なるKメタルの世界と共に是非。ドリキャの生みの親であるキンバリー・ゴスも!?

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