Artist Grouper

Album 『Grid Of Points』

Tracklist
01. The Races
02. Parking Lot
03. Driving
04. Thanksgiving Song
05. Birthday Song
06. Blouse
07. Breathing
自分の中にあるGrouperのイメージっていうと、カリフォルニアのJulia HolterとブルックリンのJulianna Barwickと並んで「三大アンビエント・ポップ系女性SSW」を代表する1人で、このオレゴン出身のGrouperは他の2人と比べると、よりDIYで、よりオルタナティブで、よりインディペンデントな印象を持っていて、個人的にこの3人の中だとJulianna Barwick派だったりするのだけど、しかしここにきて、前作の『Ruins』から約4年ぶり通算11作目となる『Grid Of Points』が、Grouper史上最高に「ポップ」で「キャッチー」なアルバムと呼んでも差し支えないくらいの傑作でサイコーすぎる件。
元々、アンビエントやドローンをはじめ、それらを駆使した独特の空間表現を得意としていたGrouperだが、今作では前々作の『The Man Who Died in His Boat』のようなアコギ系のフォーク・ミュージックや、評価の高い『A I A: Alien Observer』みたいなドローンなどの音響系あるいはエクスペリメンタルな電子的な要素を排除し、Liz Harrisの淡く儚い歌声とドリーミーなピアノを中心とした至ってシンプルなアンビエント・ポップに徹している。音的には節目の10作目となった前作の『Ruins』を踏襲したものだ。
幕開けを飾る#1”The Races”から、それこそJulianna Barwickの1stアルバムを彷彿させる、まるで祭日を祝う聖歌隊のような多重声が神聖なる天上の世界へと聞き手を誘う。2曲目の”Parking Lot”では、幕開けからピアノの旋律とLiz Harrisのスウィーティでラブリィなウィスパーボイスが織りなす、その美しさを超えた先にある、汚れなき清らかな、素朴で純粋なメロディに心が浄化される。そして3曲目の”Driving”、今まで蜃気楼のようにボヤケた音像を嗜んできた彼女が、ここまでハッキリとした固形状の「メロディ」を書くなんて正直驚いたというか、何を隠そう、恐らく今作で最も耳に残るこの「メロディ」こそ、このアルバム『Grid Of Points』を司る唯一にして最大の部分に他ならなかった。
この作品、実はちょっとしたギミックが仕掛けれていて、それが今作のキーパーソンとなる”Driving”の主旋律、つまるところChelsea WolfeやMarika Hackmanの如し、ダーティ&ディープな低音を効かせたLiz Harrisのイーサリアルな歌声とピアノの主旋律、この今作を司る「例のメロディ」がこれ以降の曲にも引用されていて、勿論まるっきり同じというわけではないのだけど、主な音階はそのままにオクターブをいじってる。つまり、これまでは曲の中で音をミニマルに繰り返していたけど、今作では一つの旋律(音階)を曲を跨いでミニマルスティックに意識づけしている。例えば、4曲目の”Thanksgiving Song”では、中盤以降のピアノの美旋律は「例のメロディ」を踏襲しているし、6曲目の”Blouse”では、再びボーカルとピアノの主旋律を微妙にイジってたりする。つまり、”Driving”の「例のメロディ」を中心にこの世界が回っていると常に意識させること、そしてピアノとボーカルが子守唄のように繰り返される心地よさ(もはやトリップできる領域にある)、そのシンプルイズベストな音使いとアルバムの構成からして、今作は「20分の曲」と解釈した方がシックリくる作品かもしれない。
正直、これまではJulianna Barwickの影に(色々な意味で)隠れてた、(色々な意味で)どこか存在感の薄い印象しかなかったGrouperが、今作の何が僕を心変わりさせたのか?それこそ過去最高に感情的でエモーショナルに歌っているLiz Harrisの圧倒的な存在感に他ならなくて、今作では特になんだけど、これまでのささやき戦術的なボイスではなくて、自らの棲家としていた「影」から半歩飛び出し、独りの「シンガーソングライター」として(誤解を恐れずに言うと)ある種のメジャー感というかキャッチーな大衆性に恐れず飛びこんでいった彼女の勇気とその覚悟に敬意を表するに至ったからだ。ちなみに、前作では自然/環境音を取り入れていたが、今作では7曲目の”Breathing”の最後に列車が走り去る音を収録している。

Album 『Grid Of Points』

Tracklist
01. The Races
02. Parking Lot
03. Driving
04. Thanksgiving Song
05. Birthday Song
06. Blouse
07. Breathing
自分の中にあるGrouperのイメージっていうと、カリフォルニアのJulia HolterとブルックリンのJulianna Barwickと並んで「三大アンビエント・ポップ系女性SSW」を代表する1人で、このオレゴン出身のGrouperは他の2人と比べると、よりDIYで、よりオルタナティブで、よりインディペンデントな印象を持っていて、個人的にこの3人の中だとJulianna Barwick派だったりするのだけど、しかしここにきて、前作の『Ruins』から約4年ぶり通算11作目となる『Grid Of Points』が、Grouper史上最高に「ポップ」で「キャッチー」なアルバムと呼んでも差し支えないくらいの傑作でサイコーすぎる件。
元々、アンビエントやドローンをはじめ、それらを駆使した独特の空間表現を得意としていたGrouperだが、今作では前々作の『The Man Who Died in His Boat』のようなアコギ系のフォーク・ミュージックや、評価の高い『A I A: Alien Observer』みたいなドローンなどの音響系あるいはエクスペリメンタルな電子的な要素を排除し、Liz Harrisの淡く儚い歌声とドリーミーなピアノを中心とした至ってシンプルなアンビエント・ポップに徹している。音的には節目の10作目となった前作の『Ruins』を踏襲したものだ。
I am a child
It is a gift that my mother gave me
幕開けを飾る#1”The Races”から、それこそJulianna Barwickの1stアルバムを彷彿させる、まるで祭日を祝う聖歌隊のような多重声が神聖なる天上の世界へと聞き手を誘う。2曲目の”Parking Lot”では、幕開けからピアノの旋律とLiz Harrisのスウィーティでラブリィなウィスパーボイスが織りなす、その美しさを超えた先にある、汚れなき清らかな、素朴で純粋なメロディに心が浄化される。そして3曲目の”Driving”、今まで蜃気楼のようにボヤケた音像を嗜んできた彼女が、ここまでハッキリとした固形状の「メロディ」を書くなんて正直驚いたというか、何を隠そう、恐らく今作で最も耳に残るこの「メロディ」こそ、このアルバム『Grid Of Points』を司る唯一にして最大の部分に他ならなかった。
この作品、実はちょっとしたギミックが仕掛けれていて、それが今作のキーパーソンとなる”Driving”の主旋律、つまるところChelsea WolfeやMarika Hackmanの如し、ダーティ&ディープな低音を効かせたLiz Harrisのイーサリアルな歌声とピアノの主旋律、この今作を司る「例のメロディ」がこれ以降の曲にも引用されていて、勿論まるっきり同じというわけではないのだけど、主な音階はそのままにオクターブをいじってる。つまり、これまでは曲の中で音をミニマルに繰り返していたけど、今作では一つの旋律(音階)を曲を跨いでミニマルスティックに意識づけしている。例えば、4曲目の”Thanksgiving Song”では、中盤以降のピアノの美旋律は「例のメロディ」を踏襲しているし、6曲目の”Blouse”では、再びボーカルとピアノの主旋律を微妙にイジってたりする。つまり、”Driving”の「例のメロディ」を中心にこの世界が回っていると常に意識させること、そしてピアノとボーカルが子守唄のように繰り返される心地よさ(もはやトリップできる領域にある)、そのシンプルイズベストな音使いとアルバムの構成からして、今作は「20分の曲」と解釈した方がシックリくる作品かもしれない。
正直、これまではJulianna Barwickの影に(色々な意味で)隠れてた、(色々な意味で)どこか存在感の薄い印象しかなかったGrouperが、今作の何が僕を心変わりさせたのか?それこそ過去最高に感情的でエモーショナルに歌っているLiz Harrisの圧倒的な存在感に他ならなくて、今作では特になんだけど、これまでのささやき戦術的なボイスではなくて、自らの棲家としていた「影」から半歩飛び出し、独りの「シンガーソングライター」として(誤解を恐れずに言うと)ある種のメジャー感というかキャッチーな大衆性に恐れず飛びこんでいった彼女の勇気とその覚悟に敬意を表するに至ったからだ。ちなみに、前作では自然/環境音を取り入れていたが、今作では7曲目の”Breathing”の最後に列車が走り去る音を収録している。