Artist BAND-MAID

Single 『Daydreaming / Choose me』

Tracklist
01. Daydreaming
02. Choose me
03. Play
『小鳩ミク、バンドエイド®社の最終面接に挑む』
面接官「それでは、只今よりバンドエイド®社最終面接を始めます」

「はい!私の名前は野口みか...もとい、小鳩ミクですっぽ!」
面接官「あなたを採用したら弊社にどのような利益をもたらしてくれますか?」

「はい!私は御社のコミュニケーションを円滑にする潤滑油になりますっぽ!」
面接官「う~ん、合格!」

「やったっぽ!」
今回、BAND-MAIDが「バラード曲」を「シングル」として発表したのは、相当な度胸と勇気がいった事と思う。ゴリゴリのハードロックをメイド姿のバンドが奏でる「ギャップ」を売りにした元々のコンセプトを根底から揺るがしかねない、それこそ「メジャー行って日和って売れ線狙い始めて終わった」という風にアンチの煽り対象にしかならない可能性もあった。しかし、それらに伴う「リスク」はメンバー自身がよく分かっているはずで、これらに関する僕の見解として、1月の発表されたメジャー1stフルアルバム『Just Bring It』のレビューで一体何を書いたのか?まずボーカルの彩ちゃんが「今にも絢香の三日月歌いだしそう」なほど「バラード映え」する歌声をしていると評価している事だ。少なくとも『Just Bring It』には「バラード」が入る余地などこれっぽっちもなかったのも事実で、かのBABYMETALは2ndアルバムで初バラードを書いてきた、それではこのBAND-MAIDはいつ「バラード」を出してくるのか?いや別に出さないなら出さないで、それはそれで「ハードロックバンド」としてのBAND-MAIDに俄然箔がつくし、逆に出したら出したで僕が言及した彩ちゃんの「バラード映え」する「理想的」な歌声が聴けるはずだと。つまり、どちらに転んでもBAND-MAIDの利益(プラス)になると。結果的に、その答えは後者で、このBAND-MAID初となる両A面シングル『Daydreaming / Choose me』の”Daydreaming”は、彩ちゃんの「バラード映え」する「理想的」な歌声を聴かせる、本当の本当に満を持してリリースされた最高の「バラード」となっている。
「サビ始まり」
「サビ」から始まる「バラード」というのは山ほどあるが、その中でもJanne Da ArcのボーカルyasuのソロプロジェクトAcid Black Cherryの”イエス”や”君がいない、あの日から...”もその「サビ始まり」を特徴としたロックバラードだ。ちょっと面白いのは、ABCのバラード曲は「サビ始まり」の曲構成が多いけど、逆にJanne Da Arcを代表する名曲”DOLLS”や”振り向けば…”などのバラード曲はイントロ~Aメロ~みたいに基本的なコード進行を得意としている所なんだよね。と一瞬思ったけど、言うてジャンヌも結構「サビ始まり」のバラード多かったわ・・・ごめん、今の忘れて。とにかく、ABCでは楽器隊よりもフロントマン林のボーカルを全面にフィーチャーすることに特化した、いわゆる「サビ始まり」のバラードが割合的に圧倒しているのは事実で、つまりこれは「ボーカル」を「売りにくる」には「サビ」を曲の一番始めに持ってくるのが正しい、という事の裏付けでもある。つまり、この”Daydreaming”は今年の『Just Bring It』からの初ワンマンツアーで培った数え切れない「経験」と「ボーカリスト」としての大きな「成長」、それらの伏線が一本の線となって具現化した必然的な結果と言える。
「Daydreaming dreaming of you」
いわゆる「白昼夢(デイドリーム)」をモチーフにした楽曲といえば、最近ではRadioheadや赤い公園の曲が記憶に新しいが、この表題の「Daydreaming」という「サビ」を力強く伸びやかに歌い上げる彩ちゃんの歌声とともに、真っ赤なPRSを抱えたギタリスト歌波が奏でる唸るように咽び泣くメロディを先頭にバンド・サウンドが一斉にドーン!と入ってきて、これまでにないEDM風のシャレたアレンジやクラップを交えながら、歌詞にある「加速してく想い」、そのエモーショナルな焦燥感を制動感溢れるMISAと茜のリズム隊が的確に表現し、そのジャズのインフルエンスを感じさせる茜のドラムとフェンダー使いのMISAによるインプロヴィゼーションに溢れた鬼グルーヴに、再び歌波が合流してポストロックばりにセンチメンタルで刹那い美メロでミニマル&リリカルに気分を高揚させながら、それぞれ歌波とMISAと茜が奏でる楽器の「音(声)」という名の「想い」を一つに紡ぎ出していくような小鳩ミクの「Daydreaming dreaming of you」という詞に乗せて、そして最後の「サビ」すなわち「主役」となるボーカルの彩ちゃんへと「想い」を繋いでいく。2番では、ワイドレンジなプロダクションをフル活用した、もはや「ツインドラムかよ」ってくらい「手何本あんねん」ってくらい俄然手数足数が増していく茜のドラミングとミニマル・アンビエント的なアレンジを効かせ、そして「サビ」では歌波のサンタナから受け継がれた「泣き」のエモーションを込めた情熱的かつ北欧ポストメタルばりに超絶epicッ!!なGソロが炸裂、その勢いのまま小鳩のボーカルを「潤滑油」として一気にクライマックスへと駆け上がり、それはまるで歌波のギターとMISAのベースと茜のドラムという元素が小鳩ミクという核燃料に触れて、最後は核融合反応を起こして核爆発するかのようなポストメタルばりのスケール感を放つ大サビまで、これはもう一種の「Post-系」の解釈が取り入れられたオルタナ系ロックバラードと言える。
「BAND-MAIDの潤滑油」
面白いのは、ここでも小鳩ミクという「不確定要素」が想定外の効果を発揮していて、この曲における小鳩の「役割」というのは、他ならぬ「BAND-MAIDの潤滑油」である。この曲の「潤滑油」となる「繋ぎ役」の小鳩が欠けた瞬間、てんで曲構成がおかしくなって「不完全」な曲となってしまう。つまり、この曲を寿司の「役割」で例えるならば、歌波とMISAと茜が曲の土台となる「シャリ」で、「バラード映え」する彩ちゃんが「主役」すなわち「ネタ」で、そして「シャリ」と「ネタ」の間を繋ぐ「サビ役」を担っているのが他ならぬ小鳩で、このように曲の中で常に流動的に「ネタ」「シャリ」「サビ」が変動していく、BAND-MAIDの「オルタナティブ」な側面を垣間見せている。「繋ぎ役」、それは運動会のリレーで言うところの「アンカー前」の大事な大事なポジションで、この曲構成を走者順に変換すると【彩ちゃん】→【歌波】→【MISA】→【茜】→【小鳩】→【MISA】→【茜】→【歌波】→【小鳩】→【彩ちゃん】というリレー(曲)構成となっている。確かに、小鳩は普段のお給仕でもただの鳩要員ネタ要員MC要員だが、でもこう見えて小鳩はここぞとばかり「やるときゃやるぜ海野くん」的な奴で、この曲では「今のBAND-MAID」における「ツインボーカル」の最も正しい小鳩の使い方というか、これはもはやインディーズ時代の「ツインボーカル」に対するメジャー時代からのシン回答であり正統進化である。事実、BAND-MAIDは今年の初ワンマンツアーの名古屋公演と大阪公演で、ケツアゴことベーシストのMISAという「サビ」が欠けた「4人」の「不完全」な状態のBAND-MAIDをわざわざ見せつけたわけだ。一体何のために?そう、全てはこの曲の「伏線」としてだ。つまり、MISAという「サビ抜き」の寿司を見せた後に、ケツアゴという「サビ入り」の「5人」での完全体BAND-MAIDで、曲始めから「サビ」をフィーチャーした「バラード」を出してくるという一種の「メタ的」な伏線であり、BAND-MAIDのアテフリ兼総合プロデューサーである小鳩ヨシキは、初ワンマンで既にこの”Daydreaming”を見据えた神がかり的な演出を描き出していたのだ。これはもう、小鳩ミクという「不確定要素」が「確定要素」に変わる瞬間に起こる「奇跡」だ。
「彩ちゃんTO(トップヲタ)」
歌波の話によると、このBAND-MAID『初』となる「バラード」の立案者はボーカルの彩ちゃん、つまり「彩ちゃんの一言」ならぬ「姫の一言」によって生まれた「バラード」で、アレンジ面でも彩ちゃんの意見が採用された実質「彩ちゃんのソロ曲」と呼んでいいくらい、彩ちゃんによる彩ちゃんのための「彩ちゃんで始まり彩ちゃんで終わるバラード」だ。一方でこの”Daydreaming”は、ギタリスト歌波の「コンポーザー」としての才能は元より、「メロディスト」としての才能が開花したようなバラードでもある。あらためて歌波スゲーと思うのは、例えばOpethのミカエル・オーカーフェルトのようにフロントマン兼ギタボ兼コンポーザーのワンマンバンドと呼ばれるくらいの役職ならまだしも、歌波のようにギター専属で作曲することの難しさったら想像を超えるもので、特にどれだけボーカルすなわち彩ちゃんと意思疎通が図れるか?共通した考えを持てるか?とにかく、他のメンバーの誰よりも彩ちゃんのことを理解しなきゃならない。しかし、そこは彩ちゃんTO(トップヲタ)の歌波、曲を聴いたらガチで歌波ほど彩ちゃんのことを理解し、全てを知り尽くしている人は他に存在しないってくらい(それこそ彩ちゃんTO(トップヲタ)を目指してる僕なんか到底敵いっこないレベル)、彩ちゃんが持つ歌声の魅力を最大限まで引き出している。お給仕でも既に披露されており、実際に名古屋と大阪のお給仕に帰宅して思ったのは、僕の耳に狂いはなかったと、彩ちゃんの歌声は「バラード映え」するってレベルじゃなかったんだと。歌波は、恐らく彩ちゃんが最も発声しやすい「理想的な歌声」を引き出すために、過去最高の極上メロディを生み出すことに成功し、見事彩ちゃんを「ボーカリスト」としてNEXTステージにブチ上げたのだ。その「理想的な歌声」、それすなわち彩ちゃんがリスペクトしてやまない安室チャンに精通する歌唱法から声質および息づかいまで、特に最後の「feel my soul」の部分なんて「どう見てもこの部分だけ安室チャンゲスト参加してますよね?」ってツッコミ不可避だったし、もっと言えば今回のEDM風の現代的なアレンジも安室チャンからの「影響」と推測するのは至って容易な事だった。こういう分かりやすいアレンジも今までになくて新鮮だし、しかしそのポップでモダンなアレンジを前にバンド側は決して依存せず妥協せず、しっかりとそれぞれの個性と”らしさ”に溢れたバンド・サウンドを貫き通しているし、この手の「ありがちなバラード」みたいな雰囲気に陥らない(飲み込まれない)のは、やはりリズム隊の力によるものが大きい。とにかく、この曲は本当にお給仕でこそ本領を発揮する曲なんで(お給仕だと俄然バンド・サウンドが全面に現れるのが面白い)、是非とも生で聴いてもらいたい一曲だ。
「過去最高」
決して日和ってなんかいない、むしろ「過去最高」に攻めまくっているバラードだ。「過去最高」にオルタナ大好きフェンダー使いのMISAがイキイキするバラードであり、その「過去最高」にテンションが高いMISAと「過去最高」におかしなことやっとる茜のドラムが織りなす「過去最高」の極上グルーヴ、同時に「過去最高」に超絶epicッ!!に咽び泣く歌波のギターソロ、「過去最高」にポップなアレンジ、「過去最高」にエモーショナルな「感情」をさらけ出し、「過去最高」に美しく咲き乱れるかのような安室チャン顔負けの表現者と化す彩ちゃんの歌、そして「過去最高」に「BAND-MAIDの潤滑油」となる小鳩、とにかく「過去最高」にメジャー感マシマシの大衆向けのラジオでパワープッシュ不可避なバラードなのに、メンバーそれぞれが「過去最高」に「おかしなこと」やっとる訳の分からなさに笑う。正直、「バラード」って普通の曲よりも良曲と駄曲の区別がハッキリしやすいというか、もしバラードをやるにしても絶対に「良曲」でなければならなくて、でもそのプレッシャーと高いハードルをゆうに超えてくるあたりやっぱこいつら侮れないです。皮肉にもリズム隊が本領発揮する曲が、これまでのゴリゴリ系のロックでなくてバラードだってのも面白いし、このサビの入りならサビの後半はこのメロディが欲しい、という聴き手の願望を理想的な形で持ってくる、言うなれば「王道」をよく理解しているというか、「周り(サブ)」は「おかしなこと」やっとるのに「王道(メイン)」は決して「ハズさない」あたり、やっぱこいつら相当頭いいです。
その「バラード」のくせに「過去最高」に「おかしなこと」やっとった”Daydreaming”から一転して、両A面シングルのもう片方を担う”Choose me”は、それこそ「バンドメイドらしい」と一言で片付けちゃっていいくらいの疾走感溢れるメロコア風のロックナンバーだ。”Daydreaming”と違って曲自体は1stフルアルバム『Just Bring It』の延長線上にあって、その「モダン」な路線から更に余分な贅肉を削ぎ落としたような、ついでに小鳩デブの腹についた余計な贅肉も削ぎ落としてやってほしいくらいめちゃくちゃシンプルな曲で、音の感覚的には同じく1stフル以降の「ラウド系」の流れを汲んでいて、厳密に言えば90年代のUSモダン・ヘヴィネス/オルタナティブ・メタルをルーツとするサウンドだ。これ初めて聞いた時は、メジャー1stシングル『YOLO』のカップリングの”Unfair game”を思い出したのと、ポイントとしてはギターの歌波がサビの裏でちょこまか弾いてるバッキングフレーズは聴きどころの一つで、しかもこの曲はGソロが二回あって、一回目のソロはちょっとヒネった変化球投げてくる感じで、二回目のアウトロのソロは真っ直ぐに突き抜けるように弾き倒す感じになってる。
「愛こそはね 目に見えない幻↑想↓」=「ドン勝」
ここでも注目スべきは彩ちゃんの声色の変化で、”Daydreaming”では安室チャンを意識した切なくも力強い歌声を聴かせていたが、この”Choose me”では一転して、それこそ「もうハスキーボイスなんて言わせない、今度それ言ったらコロス」という明確な意志が込められているような、これまでにないくらい「ポップさ」を強調して歌い上げている。一番のポイントとしては、それこそ別にパラモアをはじめとしたポップパンクじゃないけど、わかりやすいくらい洋楽(アイドル)ポップスを意識した、もはや「ナントカロコモーション♫」って言いたくなる感じの「愛こそはね 目に見えない幻↑想↓」というサビメロで、正直この一節がキモでありこの曲の「全て」と言っても過言じゃあない。そもそも、「シングル」なんてのは1回聴いただけで耳に残るフレーズを書いたら「勝ち確」みたいなノリもあって、この1回聴いただけで口ずさみたくなるようなサビメロ、すなわち「ドン勝メロディ」を曲のド頭に喪黒福造ばりにドーン!と持って来ている。もはやコンポーザーの歌波がこのサビメロが浮かんだ瞬間に「ドン勝」してテヘペロ

「さらば、イントロ」
この「Daydreaming」=「バラード」と「Choose me」=「ロック」の両A面シングルと聞くと、僕みたいなV系エリート的にはJanne Da Arcの『振り向けば… / Destination』を思い浮かべるのだけど、要するにバンドの新たな可能性を広げる邦楽(J-POP)的な「バラード」と『Just Bring It』の延長線上にある「今のバンドメイド」をシンプルかつ分かりやすく表現した洋楽的な「ロックナンバー」、それこそバンドのコンセプトである「ギャップ」の効いた対になるような曲同士だが、しかし明確に差別化された中でも唯一共通する部分がある。それは「サビ」から曲が始まる、つまり曲構成として共に「サビ始まり」を採用しているところだ。正直、この両A面シングルの一番の核心部分ってその「サビ始まり」の曲構成だと思うのだけど、そもそも、これまで自作曲および外注曲も含めて「サビ」から始まる曲を一切書いてこなかったバンメが、ここにきて、この初の両A面シングルのタイミングで初めて、しかもA面の二曲とも「バラード」も「ロックチューン」も「サビ始まり」の曲構成となったのは、決して「偶然」ではなく「意図的」かつ「計画的」なものだと想像することは至って容易だ。
ところで、(あまり関係ないけど)これに関してちょっと興味深い話があって、いわゆる「ストリーミング・サービス」の登場により「現代人は曲のイントロをスキップする傾向にある」という、とある大学院生の研究結果があるらしく、それこそ「ストリーミング時代」における作曲/構成の流動的な「変化」、それらの「現代的」な作曲アプローチを知ってのことなら、もし、もし知ってて今回のシングルで「意図的」に「サビ始まり」の曲構成を採用したのなら、ちょっと歌波天才過ぎて引くし、俄然歌波の絶対領域ペロペロできる。言わば、このシングルの核心部分とも呼べるこの件は、個人的にこのシングルで一番歌波に聞きたい質問だ。だから早くかなみんちょはこの疑問に答えてんちょ!でももし自分が想像したとおりの回答だったら「俺すごい」ってなるんちょ?ムナンチョ!
以上が、「過去最高」にメロディ重視、メロディありきの両A面シングルとなった最大の理由だ。「イントロ」すっ飛ばして、開始数秒で強靱な「ドン勝メロディ」=「サビ」がリフレインする、要するに「シングル」向けに特化した曲構成と「ドン勝メロディ」、それらが意味するもの、すなわち「売りたいんや」精神、つまりヒットすることを意図的に想定された曲を書いてきているのだ。これは初ワンマンツアーの名古屋と大阪の振替公演に帰宅して思ったことだけど、とにかく「シングル売りにきてる感」がハンパなくて、とにかくメジャー1stシングルの『YOLO』と比べると今回は気の入りようが段違いで、それこそフルアルバムの『Just Bring It』よりも売りたい精神に溢れていて、でもそれはANNをはじめとしたラジオでパワープッシュされているのを見れば明白で、どんだけこのシングルに賭けているのか、どんだけこのシングルを売りたいのかが嫌でも分かるハズだ。とにかく「売りたい」、その正当な理由がこのシングルにはある。
確かに、この両A面シングルを聴く限りでは、いわゆる「ヲタ切り」ならぬ「オッサン切り」かってくらい、インディーズ時代からのおっさんヲタがアンチに変貌して「え、何こいつらワンオクの前座バンドでも目指してんの?」って煽られそうなくらい、『Just Bring It』から色々な意味でも更に先へと進んだ「売れ線」を狙った曲で、つまり国産ラウドロックなどのメインストリーム・ロックへの迎合を図っており、確かにこのシングルがハロパやオズフェスおよびノットフェス参戦への伏線だったら面白いかもしれないが、正直もっと賛否あっていいくらいバンドにとって「リスキー」なシングルだと思うし、良くも悪くもBAND-MAIDの今後を占う大きな「分岐点」となるシングルなのは確かだ。しかしそこは従順なメイドさん達で、しっかりとこれまでのオッサンヲタを繋ぎ止める曲をカップリングとして用意しているのだ。それが”Play”で、この曲は元々「インストモノ」として作られたというだけあって、それこそ「両A面シングル」の不満感を吹き飛ばすような、歌波の「リフ」らしい「リフ」からMISAとのソロバトルが贅沢に盛り込まれた(その後のギター好き)、楽器隊のハードロック然としたソリッドなゴリゴリ感がカムバックしている。これこそ初期フアンが求めていたものだ。プロダクション的な面でも初期の『New Beginning』を彷彿させるオーガニックなHRサウンドを踏襲しているし、ボーカル面も元がインストだったとは思えないくらい違和感ないし、そして何よりも初期のハードロック的な英詞メイン&ノリ重視のツインボーカルへと回帰している。この曲はサビが二段階になってる曲で、特に「yeah yeah lalalalalalala wow wow lalalala」の部分はお給仕でオーディエンスが一体となってシンガロング不可避なパートだ。勿論、歌波とMISAのソロバトルはお給仕でのアレンジが期待できるし、そういった意味でもトータルで「お給仕向け」に盛り上がること間違い無しの曲と言える。
「女体化したDaniel Liljekvist」
これは今年の初めに「YOLO」を初めてMVで聴いた時も全く同じ経験をしたのだけど、BAND-MAIDの曲って初見だと毎回と言っていいほど、まず真っ先に茜のドラムに目が止まるんだよね。今回の新曲も例外はなく、一曲目の”Daydreaming”では「バラード映え」し過ぎな「彩ちゃん凄い」、その彩ちゃんを知り尽くしてる「歌波凄い」ってなるけど、でもこの曲聴いてると最終的に「やっぱ茜が一番凄い」ってなってるのほんと怖い。正直、こんなに手数足数の多いドラム主導のバラードって今まで聴いたこともないし、もはやバラードなのかすら分からなくなるし、とにかくスネアの音は勿論のこと、今回は特にキック力がヤバイ。茜のエロい足技は本当にペロペロできる。自分の中で、やっぱり「いいバンド」や「いい曲」の条件の一つにドラムがあって、僕がバンドメイドを聴いている根本的な理由の一つとして、茜という「女体化したDaniel Liljekvist」の存在がある(えっ)。何を隠そう、このシングルの茜は、KATATONIAの全盛期を支えたドラマーDaniel Liljekvistの官能的なドラミングに精通しているからに他ならなくて、特に”Daydreaming”のワイドレンジなプロダクションをフル活用したドラムプレイは、KATATONIAの傑作『Night Is the New Day』の”Forsaker”のフェミニンなドラム、あるいはDIR EN GREYの”VINUSHKA”のShinyaのドラムに通じるものがあるし、そもそもその”Forsaker”が実質「KATATONIAなりのバラード」だし、その音的な部分は元よりモダン/オルタナ/ポストロック/エレクトロニカ/アンビエント系の美メロやミニマルなアレンジを施した曲本体、互いに共通する部分はあまりにも多い。二曲目の”Choose me”だってそうだ。さっきまでの官能的なドラムから一転して、力強いゴリゴリラのドラムプレイを披露している。特に、ポイントとなるサビ前のドラムの入れ方、つまりドラムがサビへと誘導する場面とか完全にKATATONIAの”The Longest Year”じゃんってなる。その”Forsaker”のモダンなアレンジと”The Longest Year”の曲構成を足したらいい感じに”Daydreaming”っぽくなると思う。茜が凄いのはそれだけじゃない、三曲目の”Play”ではブルデスばりにエグい踏み込みブッ込んでくるし、この曲以外にもこいつらたまにブルデスっぽいこと平気でやってくるからほんと怖い。とにかく、まさかKATATONIAから脱退したダニエルが日本でメイド服着てガルバンのドラマーやってるなんて思わんかったわ・・・もう想像しただけでコエーわ・・・。
改めて、こいつら本当に「したたか」というか「ドS」だと思うのは、インディーズの頃はあざといハードロックやっておっさんヲタを釣り上げたと思ったら、今度はハードロックの中にモダンな曲を織り交ぜておっさんヲタを「モダン」な音に慣れさせる調教アルバム『Brand New MAID』を発表して、そして遂には今年の初めに国内ラウドロック/モダンヘヴィネス系の1stフル『Just Bring It』で「オッサン切り」からの激ロックキッズの獲得に躍り出て、それからそのキッズが大集合するフェス決めて初ワンマンやって、そして今回のシングル(バラード)も今年に入ってから続くメジャー戦略の一環である。しかし、こうやってBAND-MAIDがハードロック魂を忘れてイマドキのモダンな国産ラウドロック勢に迎合していく流れの中で、ふと「今のBAND-MAIDに最も近いバンド、あるいは目指すべき理想的なバンドって誰だろう?」と考えた時に、自分の中で真っ先に頭に浮かんだのがUSのNothing Moreだった。何故Nothing Moreなのかと言うと、実は彼らはVAMPSとも交流がありVAMPS主宰の『VAMPARK FEST』にも呼ばれたりしてて、ずっと前からBAND-MAIDは必ずVAMPS主宰の『ハロパ』に呼ばれると思ってやまない僕からしたら、それだけで十分な理由になるのだけど、詳しく言えばメシュガー以降の現代的なヘヴィネスをオルタナティブ・メタルとして解釈し、そのイマドキのモダン・ヘヴィネスを昇華させるオルタナティブな素養とベースバッキバキのタイトなエモいサウンド・スタイルという点では、正直かなり最近のBAND-MAIDの音楽性にそう遠からず近いタイプのバンドと言えるんじゃあないかって。要するに、かなみんちょはNothing Moreの”This Is The Time (Ballast)”のイントロのリフを1000回聴くんちょ!そして、その回答としてBAND-MAIDの曲を書くんちょ!わかったんちょ?どぅーゆーあんだーすたんちょ?
これはちょっとした懸念というか、ちょっと気になったことなのだけど、確かにメジャー以降のBAND-MAIDは外注曲ではなく自作曲を主軸に活動していて、それこそ今回は両A面シングルなら片一方は自作でもう片一方は外注曲となる可能性も十分に考えられたわけで、しかし蓋を開けてみたら全曲自作曲だったのだ。これはただの漠然とした懸念でしかないのだけど、ここだけの話、自分の中で「BAND-MAIDが次のフルアルバムでやってはいけないことランキング」の第一位に「全曲自作という勘違いを起こすこと」がランクインしていて、もっと言えば次のアルバムは半分以上は外注曲でもいいくらい、むしろそれくらいしないと『Just Bring It』との差別化は元より、その内容は超えられないとも思っている。これは別に今の自作曲よりも過去の外注曲の方が良いというわけではなくて、それこそ全13曲中4曲が外注曲だった『Just Bring It』ですら、たった4曲の外注曲がどれだけ効果的な働きと役割を担っていたのか、その外注曲がないとてんで金太郎飴みたいに感じてしまうのも事実だ。そもそも、お給仕でどんな曲が盛り上がっているのか、どんな曲がウケが良いのかなんてのはステージ上の演者が一番よくわかっているはずで、少なくともBAND-MAIDは外部ライターから学ぶことはまだまだ沢山あるハズだ。勿論、その「勘違い」には「ただのポップバンド」になってしまう懸念も含まれていて、兎にも角にも、間違いなくBAND-MAID最大の勝負どころとなるであろう次のアルバムでその「勘違い」を起こすことだけは何としても阻止したい。勿論、音楽的な「面白さ」と「人気」を天秤にかけて、そこのパワーバランスを保っている器用なバンドは恐ろしく少ない。むしろメジャー進出して典型的な「勘違い」を起こして2秒でオワコン化するバンドの方が多い。それこそリンキン・パークなんかはその最もたる例で、いつまでたってもフアンから初期の音楽性を求められる「苦しみ」、それはアーティストにとって想像を絶する「負担」となって襲いかかる場合だってある。そんな偉そうなことを言ってみても、個人的には「メイド界のメシュガー」になれるか、否かにしか興味がなかったりする。つうか、そろそろジャズバンドになっても不思議じゃないのは、茜のドラムを聴けば分かるんちょ。

そんなことより「彩コレ」だ。今回のメイドのコンセプトからかけ離れたポップなジャケ写&背表紙や”Daydreaming”のMVは台湾で撮影されたもので、その台湾行きで予算を使い果たしたのが丸分かりな、リリックビデオ的な演出でシンプルに魅せる”Choose me”のMV、どちらのMVも彩ちゃんの魅力に溢れていて、今回も彩ちゃんTO(トップヲタ)を目指す僕が選んだベストカットシーンをコレクションにしてみた。前回のシングル「YOLO」のMVべると見所が多い。なんだろう、映像のモノクロームなエフェクトも相まってある意味「ホラー映画」っぽい妖艶な雰囲気と存在感もあって、とにかく今回の彩ちゃんは「表情」で魅せるイメージ。一番オヌヌメなのは、やっぱり”Choose me”の画面全部白塗りみたいなカットシーン。”Daydreaming”の見所としては、彩ちゃんのネイルが演奏シーンと演技シーンで変わっている所で、面白いのは、常に演奏中「おとぼけフェイス」なアンドロイド茜と何故か撮られ慣れている&役に入り込んでいる小鳩デブの「ギャップ」が笑える。
あらためて、フルアルバム以降の初ワンマンを経験して成長したBAND-MAIDを素直にアップデイトしたような今回の両A面シングル、オルタナもバラードもゴリゴリも何でもやれる、それを実現可能にする各メンバーのスキルと鳩女の余分な贅肉が凝縮された、もはや両A面シングルというよりフルアルバムレベルの濃さがある。ちなみに、名古屋の指定店舗限定でピックの特典付きだったから、リアルに十数年ぶりに店舗にCDを買いに行ったら、レジが若い女の店員で(うわっ、こいつメイド好きなのかよキモッ)って思われたに違いない。まぁ、そんな冗談は置いといて、最後はとっておきの「謎かけ」でお別れ。
「小鳩ミク」とかけまして、「核燃料」とときます
その心は
どちらも「取り扱いに注意」が必要です
お後がよろしいようでw
Daydreaming/Choose me (初回生産限定盤)
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