Welcome To My ”俺の感性”

墓っ地・ざ・ろっく!

2017年02月

Kreator 『Gods of Violence』

Artist Kreator
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Producer/Mixing Jens Bogren

Jens Bogren

Album 『Gods of Violence』
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Tracklist
01. Apocalypticon
02. World War Now
06. Army Of Storms
07. Hail To The Hordes
08. Lion With Eagle Wings
10. Side By Side
11. Death Becomes My Light

いわゆる「ジャーマンスラッシュ三羽烏」の一角を担うKreator2012年に発表したPhantom Antichristは、OpethAmon Amarthを手がけたイェンス・ボグレンをプロデューサーに迎え、ドイツ流の伝統的なスラッシュ・メタルとスウェーデン人が編み出したイエテボリ・スタイルすなわち北欧メロデスが融合した、もはや「ドイツ人」の皮をかぶった「スウェーデン人の音楽」だった。その前作から約5年ぶり、通算14作目となる『Gods of Violence』でも再びイェンス・ボグレンとのタッグが実現、その内容も前作同様に、いやそれ以上のコンセプトを掲げて「ドイツ人×スウェーデン人」の連合軍が織りなす超絶epicッ!!なイエテボリ型スラッシュ、その再演を果たしている。 
 


アメリカの新大統領にアナル・トランプが爆誕したことにより、地球最後の瞬間を概念的に表す「世界終末時計」の残り時間が2分30秒になって世界大戦間近か?と皮肉られている最中、このKreator『Gods of Violence』では、幕開けを飾る壮大なイントロに次いで、二曲目の”世界大戦いま!”からして、世界中の人々がアナル・トランプに冷ややかな視線を送る中、我先にとアナル・トランプのアナルをペロリンチョしに駆けつける極東のアナべべ・マリオを痛烈に皮肉るかのような、それこそアナル・トランプの移民受け入れをめぐる発言に対するスウェーデン人の「怒り」が暴虐的な憎悪となって、そして一昨年の2015年以降、より強固になったイェンス・ボグレン黄金のリベラリズム」が、世界中で打倒アナル・トランプを掲げた暴動を巻き起こすような、それこそ世紀の独裁者アドルフ・ヒトラーを生んだドイツ人とスウェーデン人に流れるスカンジナビアの血が脈々と噴き出すかのようなキラーチューンだ。あらためて、やはりイェンス・ボグレンという男は、「いま世界で最もリスペクトできる男」なのかもしれない。



そのアナル・トランプに対する強烈な皮肉が込められた#2”世界大戦いま!”から、畳みかけるように「悪魔=サタン=アナル・トランプ現実にいる」と皮肉ってみせる#3”Satan Is Real”Epica”Martyr Of The Free Word”ばりのエクストリーム・スラッシュの#4Totalitarian Terror、アコギとハープのエキゾチックな音色が織りなす楽園の如し神秘的なイントロから、一転してゴリゴリのスラッシュへとギアチェンする表題曲の#5Gods of Violence、ミドルテンポでよりヘヴィな重さに比重を置いた#7”Hail To The Hordes”、再び神秘的なイントロからガチガチのイエテボリ・スラッシュにギアチェンする#8”Lion With Eagle Wings”、再びミドルテンポでグルーヴィに聴かせる#9”Fallen Brother”、再び緩急を効かせた#10”Side By Side”、そしてドラマティックに展開するラストの#11”Death Becomes My Light”まで、基本的には前作の流れを汲んだイエテボリ型のスラッシュ・メタルに変わりないが、今の時代だからこそ「説得力」のあるメッセージ性の強いシミカルな歌詞を、痰を吐き散らすように吠えるミレのパンキッシュなスクリームと、スラッシーな「速さ」よりもヘヴィな「重さ」を重視した曲調、そして「世界大戦前夜」とばかりに世紀末的な世界観を際立たせるギミック面が絶妙にマッチアップした作品だ。

前作の『アンチクライスト』では神の存在を否定したが、一転して今作では神の「怒り」を表現している。 前作は「イェンス・プロデュース」ならではのギミックがモロに曲調に反映されていたが、今作ではその「イェンス・プロデュース感」は希薄で、俄然タイトで俄然ヘヴィな変化球なしのド直球なスラッシュ・メタルを展開していく。個人的には、超絶epicッ!!な北欧メロデス全開のイェンス節に溢れた前作のが好きだが、これは完全に好みの問題だと思う。少なくとも言えるのは、良くも悪くも二作目イェンス・プロデュースといった感じの作風だということ。

★この作品はフィクションです。実在の人物・団体・事件などには、いっさい関係ありません。
 
Gods of Violence
Gods of Violence
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Kreator
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BAND-MAID 『YOLO』

Artist BAND-MAID
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Single 『YOLO』
YOLO

Tracklist

01. YOLO
02. Unfair game
03. matchless GUM
04. YOLO(instrumental)

昨今、大いに盛り上がりを見せる「ガールズバンド戦国時代」に単騎で殴り込みをかけるような、BAND-MAIDのメジャー1stフルアルバムJust Bring Itを聴いたら猛烈に蹴られたくなって、そこからインディ時代に遡って過去の作品を耳にしたらもっと踏まれたくなりつつも、あらめて強く感じたのは心境の「変化」とバンドの「成長」で、新譜の中で特にその「成長」を感じさせた曲が、この「ヨロ」ことシングルの「YOLO」だ。 



これまでのバンメを象徴する、あるいはバンメの代表曲とされている"Thrill(スリル)""REAL EXISTENCE"、そして"the non-fiction days"のような「アグレッシブ」で「速い」、その手の衝動的な勢いに身を任せた曲調のイメージが強くあったが、しかしメジャー1stシングルとなるこの「YOLO」は、その「アグレッシブ」で「速い」そのイメージから一転して、BPMを低指数に抑えたテンポで、ドッシリと腰を据えた極めてタイトなリズムで展開する曲だ。まず、このテンポの曲をメジャー初の1stシングルとして持ってくるその度胸というか、その根拠のない自信からも精神的な「成長」を感じさせる。しかし、この玄人向けのシブいテンポの中でもバンメンバーの強い自己主張が音に現れていて、中でもMISAの鬼テクいベースラインと歌波のトリッキーなギター・フレーズを中心に、の的確なキック力と当て振り鳩女による究極の当て振り芸が、教科書通りのベッタベタなコード進行を辿りながら、サビに向かってジックリと盛り上げながら音のギアを徐々に上げていき、そして明日の希望を切り拓くために戦う意志を謳った、その「強い女」を演じきる歌詞と同調するように女帝バラライカの如しパワフルな歌声で力強く歌い上げる彩姫さんのボーカルが一つになった、これまでの秋葉系オタク向けの臭さを極力排除し、モダンに洗練されたイマドキのメジャー感溢れる大衆性を意識しつつも、しっかりとバンメンバーの濃ゆい個性が音に現れた曲で、バンメは堂々のメジャー宣言を果たす。

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個人的に、バンメってわりと歌詞が致命的なウィークポイントだと思うのだけど、この曲に限っては前向きな歌詞と曲調が上手くリンクしていて、この曲のポイントとなる歌詞と同調してギアチェンする終盤の曲構成もドッシリと構えた大人の余裕すら感じさせる。特に「一度きり そう seize the day」からの展開は、全て吹っ切れたような歌詞と曲調がクロスオーバーする瞬間のピークで、彩姫さんも意識的にタガを外して歌っているし、MVの緊張の糸がほぐれて一瞬笑顔になる彩姫さんの表情面での演出も大きな見どころだ。そのギアチェンした終盤の「アートになんか興味はぬわぁい 永遠なんて I don't seek」の所をナントカ弁みたいに、それこそ吉幾三っぽく歌うと面白いので、是非皆さんもカラオケで歌ってみてくださいね。

アートにぬわぁんか興味はぬぇ!   
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この目に見えて低予算で仕上げたMVの彩姫さんは、ぼく下僕的オキニカットシーン満載の”the non-fiction days”と比べると、あまり良いカットシーンがなくて、一つだけ挙げるとすれば終盤のワンカットです。まぁ、それは置いといて、彩姫さんの歌声に関することで少し気になることがあって、もしかして彩姫さんの声って「ハスキーボイス」と思われてるのか?ということ。おいら、いわゆる「ハスキーボイス」ってボーカリストにとって諸刃の剣だと思ってて、それこそ彩姫さんのように通常の低音ボイスで歌っていて、その最中に要所で「ハスキーボイス」的な側面が現れることには何ら不満もないし、むしろボーカリストとしてパフォーマンスの幅と個性が広がって良いこと尽くめだ。しかし、通常の歌声から「ハスキーボイス」と認識されている、もしくはその可能性があるとなると話は変わってくる。僕が一番危惧しているのは、このバンメが「ハスキーボイスのバンド」みたいなレッテルを貼られることで、それだけは絶対に阻止しなければならない。例えば、「楽器を持たないパンクバンド」ことBiSHアイナ・ジ・エンドは自他清掃員ともに「ハスキーボイス」として認知されている。しかし、アイナ「ハスキーボイス」は実質ツインボーカルの片割れとなるセントチヒロ・チッチの存在があって初めて活きる特性でもある。一方でバンメの彩姫さんの場合は、初期の頃こそギタボ(弾くとは言ってない)の当て振り鳩女とのツインボーカルを武器にしていたが、新譜の『Just Bring It』では彩姫さんのボーカリストとしての「成長」、その影響によりツインボーカルの存在感が薄れ、半ばこれからのバンメは彩姫さんのボーカル一本でやっていく宣言に伴い、それを前提に作曲していた節もあるほどだ。一方で、元ツインボーカルの片割れである当て振り鳩女のガス抜き、もといエサ付けとして”TIME”のようなソロ曲を与えており、それは実質彩姫さんの休憩TIMEでもある。いや下僕のくせに何様だよって自分でも思うけど、これでも超絶下から目線で言ってるつもりで、今の彩姫さんがどんな考え方でどんなボーカリストを目指しているのかなんて知る由もないけど、とにかく今の彩姫さんには「ハスキーボイスはニッチ」であるという最低限の自覚が欲しい。

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おいら、「いいバンド」や「いいアイドル」って何だ!?そう考える上で一つ指標にしていることがあって、それは漫画『スラムダンク』の湘北メンバー とそのバンドやアイドルグループと照らし合わせてみて、どれだけそのキャラクター性やビジュアルがフィットするか、どれだけ「シックリ」くるかで判断している。その名作漫画『スラムダンク』と同じように、漫画『ジョジョの奇妙な冒険』荒木飛呂彦先生も、まず先にキャラクターの身辺調査書を書いて、物語のストーリーよりもまず一番にその「キャラクター性」を重視して、そして流動的に話を展開させていく漫画家だ。では早速、『スラムダンク』の湘北メンバーとBAND-MAIDのメンバーを照らし合わせてみると、どうだろう、思いの外シックリくるじゃあないか。

まずはバンドのフロントマンである彩姫さんはエースの流川ポジ、大酒飲みの不良だがそのベースの技術と3Pシュートのテクニックは天性の腕を持つMISA三井ポジ、小柄ながらもその的確なパス回しとキック力でバンド全体を見渡すように分析する戦略家でもあるドラムの宮城ポジ、その作曲センスおよびキャプテンシーと『北斗の拳イチゴ味』に最も近いゴリラ的なパフォーマンスが得意の歌波赤木ポジ、そしてバンドの広報であると同時に「湘北の不安要素」でもあるバスケ(ギター)初心者の小鳩ミクが主人公の桜木花道ポジだ。正直、自分でもここまで「シックリ」くるとは思わなかったというか、これだけでバンメンバーのキャラクター性の濃さが十二分に伺える。つまり、序盤の『スラムダンク』桜木花道と同じように、今のバンメの足を一番引っ張ってるのって他ならぬ当て振り鳩女こと小鳩ミク大佐だと思うのだけど、逆に言えば主人公の桜木花道「成長物語」だった『スラムダンク』のように、BAND-MAID「不安要素」であり「不確定要素」でもある小鳩ミクが周りのバンメンバーに触発されてナニが「成長」していく事によって、つまりバンドの『未来』すなわち『物語』を変えていくのは全て小鳩ミク次第と言える。当然、『スラムダンク』が面白のは桜木花道とかいう「不安要素」の存在があったから、そして主人公の桜木が「成長」して未来を切り拓いていく「意志」と「勇気」に多くの人が共感したからであって、そういった意味では(主人公とは言いたかないが)小鳩ミクがバンド的にも漫画的にも一番「おいしい」ポジションにいるのは間違いないです。正直、彩姫さんの下僕的には当て振り鳩女の事なんかどーでもいいんだが、とは言え当て振り鳩女がバンドの桜木花道だと解釈すると、その「不確定要素」がバンドというチームの志気に影響し、最終的には彩姫さんのボーカル面にも関わってくるので、こうやって適度に当て振り鳩女を持ち上げることは、下僕としてとても大事な役割なのです。

そんな小鳩ミクのインタビューが記載された週刊誌の記事を見れば、彼女がただの当て振り鳩女ではなく、いかに「したたかな女」で、いかにクレバーでスマートな女なのかが理解できるだろう。BABYMETALさんの事は全く意識してないっぽーとか言ってすっとぼけても、ちゃっかりベビメタの名前を出して【BAND-MAID vs. BABYMETAL】の対立構造を煽って、そして案の定ネットニュースやベビメタ系のまとめサイトやらに拾われて、ことの話題が徐々に大きくなっていってるのを見れば、嫌でも小鳩ミクが相当に「クレバーな女」だと分かるはずだ。おいら、「頭の悪い女」よりも「育ちの悪そうな感じの女」「頭のいい女」の方が魅力的に感じる人間なんで、こうやって色んな人が当て振り鳩女の掌の上で踊らされてるのを見ると、どうしても「面白い」とゲラゲラ笑ってしまう。「頭のいい女」って、要するに「女から嫌われる女」なんですね。だから、よい子の皆んなはこんな「頭のいい女」当て振り鳩女とか言って煽っちゃあダメですw

そういった小鳩ミク「セルフプロデュース」を交えた、一種のマンガ的な「キャラクター性」も含めて、このBAND-MAIDは大げさじゃなしに「いま最も面白いバンド」なのかもしれない。それこそ、僕のように彩姫さんの下僕に徹するのも良し、『北斗の拳イチゴ味』に最も近い歌波でウホるのも良し、MISAのリズム隊を推して玄人気取るのも良し、それにも飽きたなら小鳩ミク「当て振り鳩女」と煽って楽しむのもリスナーの自由だ。つうか、小鳩ミク『スラムダンク』読んだことないとしたら、今すぐに読んで勉強すべきだ。なんなら俺が完全版で全巻貸してやるよ。

これまでは外注曲の力を借りてやってきたBAND-MAIDは、このメジャー1stシングルの『YOLO』以降、メインコンポーザーの歌波を中心に(←ここ大事)バンメンバー自身で曲をハンドメイドするようになった。イントロからダークな世界観を演出する、目まぐるしいリフ回しとガツンとパンチのあるサビが印象的な2曲目の”Unfair game”、三代目リスペクトな歌詞が印象的な3曲目の”matchless GUM”も自身でハンドメイドした楽曲だが、確かにフルアルバムアルバムのJust Bring Itには入らないレベルの曲かもしれないが、前者はバンドのテクニカルな技術的な側面が強く垣間見れるし、後者は歌波ハーマン・リ顔負けの超絶Gソロと彩姫さんの表現豊かでポップなボーカルが楽しめる。そして最後に”YOLO”のインスト版を聴けば、楽器隊の確かな演奏技術、その実力を知ることができる。
 
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lantanaquamara 『ランタナカマラ』

Artist lantanaquamara
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EP 『ランタナカマラ』
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Tracklist
01. 図書館の葬列
02. 鳳凰木
03. 夏至を待つ夢はトンネルで
04. アルビノの流星雨
05. 華燭に抱かれた天文台

おいら、わりと長い間ブログやってるのに、今でもライブドアブログの設定とか仕様とか全然知らなくて、それこそブログの管理画面は記事を書く時によく使うけど、拍手コメントやメッセージ機能があるプロフィールの管理画面は滅多に見ることがなくて、だから未だに拍手コメやメッセージ機能の仕組みを理解していなかったりする(管理人なのに)。ブログのコメント機能は随分前にスパム対策で廃止したので、つまり当ブログとコンタクトを取る方法って実質拍手コメントやプロフのメッセージからしかできない状態になっている。で、めちゃくちゃ久しぶりに、それこそ数年ぶりくらいにプロフの管理画面を見たら、記事のミスを指摘する拍手コメとメッセージがいくつか届いてて、その中に「趣味が合うので会いたいです」みたいなメッセージもあって「いや怖すぎんだろお前」とか思ったりして、で去年のメッセージに音源レビューの掲載依頼という名の営業があって、その依頼者というのが以前ツイッターでやりとりしたことのある(らしい)、ポストメタルバンドlantanaquamaraSO)))氏だった。

「Thinking Man's Metal from JPN」をコンセプトに掲げる、そのSO)))君を中心に2013年に結成されたlantanaquamaraは、ボーカルのToshiya Kawamitsu氏とトラックメーカーのMata-Low氏による3人トリオだ。彼らが昨年の11月にリリースした1st EP『ランタナカマラ』は、Isis、envy、Deftones、Tool、Mogwai、Cult Of Luna等のようなバンドから影響を受けているが、結果として何かのコピーではなく、一定のオリジナリティを担保することに成功した作品であると自負するとおり、その手のポストメタル勢が築き上げた轟音ヘヴィロックを基礎に、そこへモダンでリリカルなアプローチを加えたサウンドスケープを展開している。

再生すると、難解なポエムでも朗読するかのような語り部からその詩的な世界観へと引き込む#1”図書館の葬列”で幕を開け、2曲目の”鳳凰木”では、イントロからIsisCult of Lunaを連想させるミニマルなプログラミング/エフェクトや近未来都市感溢れるレトロモダンなサウンドアプローチを垣間見せながら、envyリスペクトなカオティックHC系のスクリームとポストハードコア系のサウンド・スタイルを披露し、そしてクライマックスではRiversideばりの崇高なギターを靡かせてドラマティックな展開力と音のスケール感を力強くアピールしていく。

sleepmakeswavesを彷彿とさせるインスト系ポストロック譲りのメロウなセンスを覗かせる#3”夏至を待つ夢はトンネルで”を間に挟んで、イントロからメシュガーからの影響を感じさせるメタリックなリフで始まる#4”アルビノの流星雨”では、ボーカルのToshiya Kawamitsu氏がDIR EN GREYの大ファンと言うだけあって、その影響を顕著に垣間見せるような、文学的もしくは哲学的な歌詞というよりは『言葉』の短文を積み重ねていき、lantanaquamaraの中に隠された一面でもある「ヴィジュアル系」の世界観を繰り広げていく。この歌詞の中二病っぽさは極めてV系的と言える。

オルゴールやオルガンを駆使した雰囲気のあるイントロから、探偵小説ばりに謎めいた世界観を形成する”華燭に抱かれた天文台”は、それこそアートワークの神聖な宮殿をモチーフにした荘厳かつ重厚な世界観と彼らのウリである詩的なポエムワールドが、けたたましいウネリをあげるような轟音ヘヴィネスとともに爆発する、それこそlantanaquamaraが持つ魅力の全てが詰まったような一曲だ。この曲を聴いてしまえば、SO)))君のコンポーザー能力に何の疑いも出ないだろう。

「文学的」なバンドと言えば、ハルキスト系プログレ・バンドの森は生きているが2015年に解散したのはわりとマジでショックだったのだけど、彼らとは音楽性こそ違うが、その江戸川乱歩的な曲名をはじめポエティックな世界観は森は生きているに通じるモノがある。このlantanaquamara、随所で垣間見せるそのメロディセンスは目を見張るものがあるし、変拍子を交えたインテリジェンスでドラマティックな展開力も聴き応え十分だが、まず何よりも「詞の世界」に注目して欲しいバンドだ。

このEPでは、その手のポスト-系でもV系でもナニ系でも、どの方向性にも進めるバンドの未来とその可能性を無限大に感じさせるほど、ポストメタル勢のフォロワー的な部分とインテリこじらせた文学的かつコンセプティブな歌詞世界をはじめとしたオリジナルの部分が上手く融け合っている。これは俄然フルアルバムに期待を持たせる力作だ。
 

Dark Tranquillity 『Atoma』

Artist Dark Tranquillity
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Album 『Atoma』
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Tracklist

01. Encircled
02. Atoma
04. Neutrality
05. Force Of Hand
06. Faithless By Default
08. Our Proof Of Life
09. Clearing Skies
10. When The World Screams
11. Merciless Fate
12. Caves And Embers

かのイェンス・ボグレンを実質プロデューサーとして迎えた前作のConstructは、イェンスが得意とするタイトなヘヴィネスとエピカルでプログレスな展開力、そして鍵盤奏者のMartin BrändströmによるATMSフィールド的な空間表現が絶妙な塩梅で共鳴した、それこそイエモンの吉井和哉が北欧メロデスやってみたような傑作だった。そんな、イェンスとの邂逅を終えたDark Tranquillityが次なる邂逅として指名した人物こそ、イェンス・ボグレンの右腕として知られるデイヴィッド・カスティロで、イェンスを手玉に取ったDTは遂に【イェンス・ボグレン×デイヴィッド・カスティロ=勝利の方程式】に手をかけたのだった。

幕開けを飾る#1”Encircled”から、ブラック・メタル指数の高いトレモロ・リフを擁した北欧イエテボリ・スタイルへの回帰を宣言する。そして表題曲の”Atoma”では、イントロから今作のプロデューサーであるMartin Brändströmのパフパフふわふわしたキーボードの反復運動を全面に押し出しつつ、「北欧の吉井和哉」ことミカエル・スタンネによるダーティなクリーンボイスと「世界一美しいデスボイス」と称されるグロウルとのコントラストを効かせた、もはや「踊れるメロデス」の正統進化系で、この手のタイプに陥りがちなメタルコア化とは違って、しっかりとメロデスとして聴かせる所が彼らを信頼できる何よりの証拠だ。ミカエルが「北欧の吉井和哉」と呼ばれるキッカケとなった前作のUniformityを彷彿とさせるダンディなクリーンボイス、そして北欧からの極寒の風を運んでくるかのようなATMSフィールドと泣きのGソロが哀愁ダダ漏れ警報を発令する#3Forward Momentumでは、もうなんか「え、僕たちもうクリーンボイス歴20年ですよ?」くらいの貫禄とバンドの成熟を感じさせる。



一転してスラッシーな殺傷力の高さを垣間見せる#4”Neutrality”、盟友IN FLAMESのビョーンがゲスト参加した#5”Force Of Hand”、一転して哀愁を帯びたキーボードのメロディを主役にミドルテンポでジックリと盛り上げていく#6”Faithless By Default”、再びフロントマン吉井和哉のクリーンとグロウルのコントラストを効かせた曲で後半に一瞬カッコイイギターが入る#8”Our Proof Of Life”、超絶epicッ!!な#9”Clearing Skies”とアンジェラ時代のアチエネをフラッシュバックさせる北欧メロデス然とした#10”When The World Screams”、そしてWe Are The Voidを彷彿とさせる慟哭不可避なキーボードと終盤の吉井和哉の歌で徹底的に泣かせにくる#11”Merciless Fate”までの流れは今作のハイライトで、今作ではキーボードの哀愁を帯びたミニマルなメロディ重視のミドルテンポで聴かせる曲とメロデス然とした殺傷力の高いリフでファストに聴かせる曲、その美意識的な部分と暴虐的な部分のコントラストをより鮮明に、前作のように曲単位で「静と動」のメリハリを付けるのではなく、一枚のアルバムの中で音の強弱と緩急を織り交ぜていく作風となっていて、それにより俄然音のスケール感が増して聴こえる。

基本的なスタンスは、We Are The Void以降のモダンでタイトなエクストリーム・ミュージックに変わりないが、前作のConstructを素直に発展させ更に深化させた形で、前作からソングライティングの部分でも鍵盤奏者のマーティンがバンドの主導権を握っていたが、前作はあくまでも「実質イェンスプロデュース」みたいなノリがあったのも確かで、今作では自身でプロデューサーを兼任しているだけあって、マーティンが作曲した5曲(#1,#6,#9~#11)を筆頭に、全編に渡って魅惑のキーボードがミニマルに響き渡っている。面白いのは、彼が作曲した5曲のうち3曲がアルバム後半のハイライトを飾っている所だ。今作のキーボードの役割としては『Fiction』みたいにサビで鳴るようなメロディではなく、あくまでもミニマルな反復運動を意識したメロディで、イメージ的には中期の『Character』『Damage Done』に近く、音の質感は『We Are The Void』に近いです。

今作における、それらをひっくるめた「マーティン推し」は国内盤に収録されたボートラの曲調にも顕著に現れていて、フロントマンの吉井和哉もといミカエル・スタンネは全編クリーンボイスで展開、しかし注目すべきはバックトラックのアレンジで、例えるならNine Inch Nailsばりのインダストリアルやミニマル・アンビエントみたいなアレンジを全面に押し出した、それこそDTの裏の顔=「シン・DT」の姿をお披露目している。正直、これ本編よりボートラのが完成度高いんじゃないかってくらい、マーティンの本気と書いてマジな顔を垣間見せている。となると、次作ではこの路線の本格化を期待しちゃうのが俺たちDTの定めなのかもしれない。つうか、もうマーティンはソロ・アルバムでも作っちゃえよw

前々作の『We Are The Void』がナゼあっこまで微妙な評価がなされたのかって、それは「スウェーデン人」であるはずのDT「フィンランド人」のフリをして「当て振りメロデス」やっちゃったことで、しかしこの『Atoma』では、前作で「スウェーデン人」とは何たるかをよく知る「スウェーデン人」イェンス・ボグレンとの邂逅を経験し、再び「スウェーデン人」としての自覚と自信を取り戻したことで、「スウェーデン人」による「スウェーデン人」のための「スウェーデン人の音楽」へと回帰することに成功し、つまり『We Are The Void』とかいう『失敗』を真っ向から『肯定』した結果がこの『Atoma』なんだ。そう、これはもう一種の『君の名は。』系メロデスだなんだって。
 
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DECAYS 『Baby who wanders』

Artist DECAYS
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Album 『Baby who wanders』
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Tracklist

01. Aesthetics of the transgression
02. Zero Paradise
03. 愛と哀を遺さず... <Baby who wanders Ver.>
04. Drifting litter
05. Where are you going?
06. Vagabond
07. Imprisonment Leaving
08. シークレットモード
09. HELLO!NEW I
10. Eve
11. Rana
12. D/D
13. 綺麗な指

今どきロックバンドのフロントマンがソロプロジェクトを始めるなんて事は珍しくもないし、むしろソロ活動しない方がおかしいレベルで、同じようにフロントマン以外のバンドメンバーもソロプロジェクトなるものを始めるのも何も珍しいことではないし、むしろフロントマンのソロ活動以上に活き活きとしてるのが多いくらいだ。それは、僕がティーンエイジャーの頃に夢中だったJanne Da Arcも決して例外ではなかった。ジャンヌダルクは今から約10年前に活動休止状態に入ると同時に、メンバーはそれぞれソロ活動を開始し、ご存じフロントマンのyasuAcid Black Cherryとかいうソロプロジェクトを継続して早くも十周年を迎える。その後、ベーシストのka-yuDAMIJAWとかいう自身のバンドを立ち上げ、ドラムのshujiおじさんもサポメンみたいな形でバンドに参加していた。でもちょっと待ってほしい、この話のポイントはバンドのソロ活動に対する賛否の話ではなくて、例えばロックバンドのフロントマンが自身でボーカルを務めるソロバンドを組むのは誰も疑問に思わないが(例ABC)、ではフロントマン以外の、例えばベーシストやギタリストがソロプロジェクトでバンドを組んだ場合(例DAMIJAW)、肝心のボーカルは一体誰がやるんだ・・・?という単純な疑問が生まれる。僕は、そんなシンプルな疑問を抱えながら、いざダミジョウ初音源のサンプルを試聴した時→え、これ歌ってるの粥やん。いやいやいや、粥めっちゃ歌ってるやん。いやいやいや、なに歌ってんねん粥ってなったし、その時の驚きというか不思議な感覚は、今でも昨日のことのように思い出せる。
 
その例え話と全く同じ話がこのDECAYSだ。DIR EN GREYのフロントマンであるは、sukekiyoとかいうソロプロジェクトを始めて久しいが、このDECAYSはギタリストのDieMOON CHILD樫山氏を中心としたユニットで、現メンバーにはシンガーソングライターの中村中と「美人過ぎるバイオリニスト」のAyasaを迎えた6人編成となっている。しかし、およそ10年前に「粥のトラウマ」を経験している僕は、一抹の不安を抱えながら、2016年に発表された彼らのメジャー1stアルバム『Baby who wanders』を聴いてみた。

    Die
DIEナントカカントカトランスミッション! 

 ぼく下僕
new_136947878325513121615_jojorion20_2「ナントカカントカトランスミッション?!」 

    Die
DIEナントカカントカトランスミッション!」 

 ぼく下僕
new_18「粥ダミジョウ...寄与ツイッタ芸人...湯ギター侍...修二オッサン...うっ、頭が」 

僕は耳を疑った。「いやいやいや、ダイ君めっちゃ歌ってるやん。いやいやいや、ダイ君めっちゃナントカカントカトランスミッションしてるやん」と。 それこそ、「粥のトラウマ」が10年の時を経て現代にトランスミッションしたかと思った。まぁ、厳密にはAesthetics of the transgressionなんだけど、アルバムの幕開けを飾るこの曲は、近未来溢れるモダンな電子音とベースがウネウネと鳴り響く妖しげなイントロから始まり、「90年代」という今よりはまだ日本がイケイケだった頃の音楽シーンを賑わせたTKこと小室哲哉TM NETWORKリバイバルみたいなDie君によるナントカカントカトランスミッション!X JAPAN”WEEK END”を彷彿とさせるサビメロ、要所でAyasaの妖艶に演出するヴァイオリンをフューチャーしつつ、Die君のパリピボイスと中さんによるツインボーカルならではの掛け合いを披露し、つまり90年代のパリピ音楽を作り上げたTKとV系とかいうジャンルをメインストリームにブチ上げたX JAPAN(YOSHIKI)とかいう日本の音楽界にムーブメントを起こした二大アーティストが、約20年の時を経て『音楽』という名の『五次元空間(ワームホール)』の中で邂逅した・・・って、それどこのV2だよ。



その幕開けから、それこそMOON CHILDとかいう90年代を代表する”ESCAPE”だけの「一発屋」をはじめ、バブル崩壊後とは言えまだ日本がイケイケだった頃の謎のパリピ感というか無駄に自己評価の高いキモナルシスティックな社会的ムード、その良くも悪くもノスタルジックな世界観および音像をこの21世紀に蘇らせるのが、このDECAYSというバンドだ。と思えば、2曲目の”Zero Paradise”では一転してメロコア然とした疾走感溢れるサウンドに爽やかなDieのボーカル・メロディを乗せたシンプルでキャッチーなギターロックが聞こえてきて、それこそティーンエージャー向けのポップな青春エモパンクみたいな曲で、僕は「ダイ君これダミジョウよりわかんねぇな...」とか思いつつも、とにかくその感情表現豊かなクサい歌詞を筆頭に、全ての面においてDie君がDIR EN GREYでやってる事と180度違う、もはや可愛いメイドさん達が「北斗の拳イチゴ味」みたいなノリで鬼ごっついメタルやること以上の「ギャップ萌え」は面白いっちゃ面白いかもしれないが、その「面白さ」より勝るのが「戸惑い」であることは、このアルバムを再生すれば2秒で分かることだ。

Dieがメインボーカルを務めた”Zero Paradise”と対になる曲で、今度は中さんがメインボーカルとなる3曲目の”愛と哀を遺さず...”、このDie中さんがそれぞれメインを飾る、言うなればダブル・リードソングでアルバムのツカミを強烈に演出する。また一転して、まるで魔界に迷い込んだような重苦しい世界観が繰り広げられる#4”Drifting litter”は、それこそ魔界で開催される晩餐会の大トリを務める『闇の宝塚』歌劇団、その男役トップに君臨する中さんと女役トップのDie君が織りなす凄艶じみた舞踏会である。これ初め聴いた時は、男のゲストボーカルかな?と思ったら普通に中さんでビビったというか、中村中さんって時々男性ボーカルに聴こえるくらい中性的というか独特の歌声の持ち主で、だから偶に中さんの声とDieの声が男女逆転して性別不能になるというか、それこそジェンダーの壁を超えたツインボーカルは、このDECAYSを語る上で欠かせないとても大きな魅力の一つと言える。

このDECAYSの妖艶な世界観を作り上げるのに最も効果的な存在としてあるのが、他ならぬ「美人すぎるヴァイオリニスト」こと岡部磨知もといAyasaだ。つうか、「美人すぎるヴァイオリニスト」って何人おんねん!とツッコミたくなる気持ちを抑えながらも、Ayasaの他を顧みず自由気ままに弾き倒すヴァイオリンの存在は、DECAYSの耽美的かつ官能的な異世界設定の根幹を司る重要な演者であることは確かだ。そのAyasaSubRosaばりに妖しく響き渡るヴァイオリンを大々的にフューチャーした#5”Where are you going?”中さんメインの曲でちょっとだけDirっぽいネットリ感のある#6”Vagabond”、今度はジェンダーの垣根を超えた二人のツインボーカルが冴え渡る曲で、モダンなV系っぽい雰囲気を纏った#7”Imprisonment Leaving”、再び90年代風のナルシスティックさとディスコ感溢れるビートを「鼓動」のようにズンチャズンチャと刻みながら高速道路を駆け抜ける#8”シークレットモード”Boom Boom Satellitesリスペクトなデジロックの#9”HELLO!NEW I”、Dirにも通じるDie君らしい神秘的かつメロディアスなギターから壮大に展開していく#10”Eve”は今作のハイライトで、キーボードのポップなメロディを乗せたアップテンポで疾走感溢れる#11”Rana”AyasaのヴァイオリンとDie君らしいギターとエロい歌声が織りなす#13”綺麗な指”を最後に、この悪魔城の奇妙な晩餐会は盛大のうちに幕を閉じる。これはアニメ『悪魔城ドラキュラ』の主題歌あるんじゃねー的な。

正直、Die君がナントカカントカトランスミッション!とか言い始めた時点で、10年前の「粥のトラウマ」が蘇って聴くのやめようかと思ったけど、次々に曲を聴いていくうちにその「戸惑い」は晴れ、 「これ普通にダサカッコイイじゃん」ってなります。確かに、DIR EN GREYというバンドからイメージされる音楽からは程遠い、【TKパリピサウンド×90年代V系】からBIGMAMAを彷彿とさせる歌モノ系のメロコア曲まで、それこそ中心でやってるsukekiyoよりもDie君以外のメンバーの存在感が強すぎるお陰で、音楽的な方向性がどうこうよりも割りと好きなことを好き勝手にやってる印象。TK的な音楽という意味でも、このDECAYSって冷静に見ると相当エイベックスの息がかかったメンツが揃ってるんだけど、でもこれだけ濃ゆいメンツを集めて、そのそれぞれに尖った個性をよくここまで一つにまとめたな感は、このアルバムで最も感心させる所だ。

失礼ながら、自分の中で中村中のイメージって随分前にMステ出てたくらいの印象しかなくて、それこそロックを歌うイメージなんてなかった。でも今回のアルバムを聞いたら、中さんとロックって思いの外ハマってるというか、もの凄い適当なことを言うと中さんて凄い「パンクだな」と感じる所があって面白かったし、シンガーソングライターの彼女にとってもバンドのグループの一員として歌うのは全くの「新境地」だと思う。そのメンバーそれぞれの「新境地」という科学的要素の集合体が化学反応を起こし、DECAYSとして産声を上げ、そして『Baby who wanders』の中で花開いている。
 
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