02. Puzzle
03. モラトリアム
04. YOLO
05. CROSS
06. OOPARTS
07. Take me higher!
08. So,What?
09. TIME
10. you.
11. Awkward
12. decided by myself
13. secret My lips
「ベビメタの次はこいつらだ!」・・・と巷で話題を呼んでいる「いま最も蹴られたいメイドさん」こと、BAND-MAIDの1stフルアルバム『Just Bring It』を聴いてみたら、なぜここまでこのメイドさん達が世界中で「キテる!」と叫ばれ続けているのかが理解できた。この可愛らしいメイド姿からはまるで想像できない、想像以上にゴリゴリのオラオラのン゛ヘヴィで骨太なハードロックやってるこのギャップに、世のおじ様たちはブヒってナニをビンビンにさせちゃってるわけだぁ~、なるほどねと。しかし当ブログの読者が求めるのは【BABYMETAL vs. BAND-MAID】の構図だと分かりきっているので、アーティスト順に並べても仲のいいこの二組を様々な比較から、双方の違いや魅力、そして密かな共通点を適度な対立煽りを効かせながら紐解いていこうと思う。
BABYMETALが音楽シーンに突如として現れた時、世界中で「ベビメタはメタルorメタルじゃない論争」が巻き起こったのは今は昔の話で、その数多く存在する争点の例としては、「ただのアイドルだからメタルじゃない」とか「自分たちで演奏してないからメタルじゃない」とか「自分たちで作曲してないからメタルじゃない」とか「本人たちがメタルに興味ないからクソ」だとか「KOBAMETALとかいう現代のMASAYAに操られてるだけ」とか、様々な手厳しい意見が飛び交ったが、そんな批判は物ともせず今やベビメタは東京ドーム2デイズを成功させるまでの人気アイドル(アーティスト)にまで成り上がった。では一方のBAND-MAIDはどうだろう?本作のクレジットを見れば分かるように、全13曲中9曲が作詞作曲演奏からアレンジまでバンドメンバーの手でハンドメイドされた楽曲で、残りの4曲は外部ライター曲というアルバム構成となっている。つまり、自らの手で曲をハンドメイドできるBAND-MAIDと、プロデューサーのKOBAMETALを中心とした裏方による曲提供が主なベビメタとでは、先程の「ベビメタはメタルorメタルじゃない論争」の主な批判者であるメタラーからの評価が最も差がつくポイントかもしれない。更に面白いのは、外部ライターの曲よりもBAND-MAIDがハンドメイドした曲の方がゴリゴリ鳴ってるところで、一方で外部ライター曲はアルバムの流れに絶妙なアクセントを与える大切な役割を担っており、「これ外部曲っぽいな」と思った曲がクレジットを見たらBAND-MAID作曲だったりするから俄然面白い。
では曲の内容ではどうだろう?1stアルバムの『BABYMETAL』でデビューしたベビメタは【アイドルとメタルの融合】をコンセプトに、日本のアイドル(J)ポップスとX JAPANなどの国産ラウドロックをミクスチャーした、海外のメタルシーンにはなかったその奇抜で個性的なメタルが世界中で話題を呼んだ。2016年に発表された2ndアルバムの『METAL RESISTANCE』では、それこそ「ベビメタはメタルorメタルじゃない論争」に終止符を打つかのような、まだ国産ラウドロックの影響下にあった前作とは一転して、海外メタルシーンで主流の【Djent】【ハーマン・リ】【ヴァイキング・メタル】【プログレ・メタル】【エクストリーム・メタル】【モダン・ヘヴィネス】をはじめとしたメタルのサブジャンルをベースに強力な作曲能力を発揮し、【アイドルとメタルの融合】という本来のコンセプトから逸脱するレベルのメタル然としたアルバムをドロップした。その海外メタル勢やX JAPANからのオマージュ的なアプローチが色濃いベビメタと比べると、このBAND-MAIDには特定の音楽的なバックグラウンドはなく、比較的ストレートなラウドロックあるいはハードロックやってて、この手のガールズバンドにありがちな下手なストリングスやキーボードでアレンジした曲とかも一切なくて、あくまでもオリジナルの原音勝負にこだわってるのはとても好感が持てる。
このBAND-MAIDとBABYMETAL、その魅せ方や楽しみ方だったり楽しませ方もまるで違う。ベビメタはSU-YUI-MOA-METALのキツネ様信仰からその徹底した世界観をはじめ、ライブでの演出から神バンドを擁するステージング/パフォーマンスまで、言うなれば表立った努力は見せず、あらかじめ裏で完成されたエンタテインメント作品をステージで披露する優等生がベビメタなら、ステージの上で等身大の姿をありのまま表現し一歩一歩成長することで、一から自身の『未来』を自らでハンドメイドしていく庶民派がBAND-MAIDだ。つまり「一からハンドメイドしていく」のと「あらかじめ作られたモノを提供する」←この違いというのは、この二組を比べる上で最も大きな違いだ。ベビメタは三人の少女の発育的な意味での成長(期)を楽しませる一方で、メイドは等身大のバンドの成長をリアルタイムで楽しませる。例えば、ベビメタが強くてニューゲームの設定なら、メイドは初期装備がメイド服とギター一本だけ、みたいな。そういった意味では、アイドルを自称しているベビメタよりもメイドの方が本来のアイドルオタク的な目線で楽しめるかもしれない。
ベビメタはその【アイドルとメタルの融合】を根幹のコンセプトに、キツネ様信仰の世界観やフアンの事を「メイト」と呼んだりと、細部に至るまで様々なギミックと演出を用意周到に準備しているが、一方のバンメは「衣装はメイド服、ライブを「お給仕」、ファンを「ご主人様」または「お嬢様」と呼んでメイドの世界観を演出しながらもビジュアルとは相反するハードロックを基調としたツインボーカルと確かな演奏が織り成す重厚なサウンドを武器に激しいライヴパフォーマンスを繰り広げる」とWikiにもあるように、ギミック的な部分のウリは言葉の語尾に「~ぽー」を付ける、もの凄い『闇』を感じるキャラ設定を持つメイド服の女の子がゴリゴリのハードロックやってるという「ギャップ萌え」のみで、それも同じ事務所のSilent Suicide SirenやPASSPO☆には入れないレベルのブスもとい微妙なルックスしか持ち合わせていない余り者が付加価値としてメイド服を着て演奏してる感は否めなくもないというか、「メタル系のガールズバンドできたけどブスやしこれじゃ売れへん・・・せや!メイド服着せたろ!」の精神みたいなノリある。要するに、ベビメタほど徹底した世界観があるというわけではなく、特に縛りがないのはリリック面でも同様だ。一見、メイドだからメイドの奉仕活動というかマナーを歌っていると勘違いしがちだが、決してそういうわけではなくて、主にギター&ボーカルの小鳩ミクとボーカルの彩姫が手がける歌詞も骨太で真っ直ぐなロックサウンドと同調するように、反骨心(精神)が込められた力強く前向きな言葉が多く、意外っちゃ意外かもしれないがいわゆるJ-POP的な歌詞を並べている。

最後はお待ちかねの「ガチャ歯対決」もとい「ボーカル対決」だ。まずベビメタのSU-METALといえば、今でこそアイドル界では指折りの歌唱力を持つボーカリストとして高く評価されているが、1stアルバムの時点ではまだあどけなさが残るアイドル的なイメージがあった。しかし、一転して2ndアルバムでは「出山ホームオブハートすず香」もとい「メタルボーカリスト」としての才能を開花させ、今やメタルゴットロブ・ハルフォードと共演するまでの世界的なボーカリストとなった。そのメタルゴッドから伝授されたハイトーンボイスを武器とするSU-METALに対して、バンメのボーカル担当の彩姫というのは、言うなれば藍井エイルと絢香を足して2で割ったような感じの、主に低域を魅力とする声質で、それこそSHOW-YAの寺田姐さんの後継者と言ってしまいたくなるくらい情熱的な彩姫さんの歌声は、個性と個性のぶつかり合いが過ぎる楽器隊が放つごっついサウンドに負けじとボーカル一本で引っ張っていく頼もしさがある。とにかく、このちょっと育ちの悪そうなヤンキー女っぽいドSな声質はM男にはサイコーだ。なんだろう、なんか淫語で罵声を浴びせられながら「踏まれたい」と思っちゃったんだからしょうがないというか、正直ここまで「いま最も顔面騎乗位されたいボーカリスト」って初めてかもしれない(運命の出会い的な)。本作を例として挙げるなら、6曲目の”OOPARTS”のメロコア風の曲調に合わせてちょっと無理して可愛い感じの声出してる感じはクソ萌えるし、その流れでSHOW-YAリスペクトな80年代ハードロックやってる8曲目の”So, What?”では一転して寺田姐さんばりにダーティな歌声を聴かせ、正直このギャップ萌えを見てブヒらないご主人様はいないと思うし、俄然「蹴られたい」衝動に駆られる。まぁ、それは兎も角として、この二人はまだまだ全然ボーカリストとして伸びシロあります。しかしあれだな、SU-METAL&彩姫さんのガチャ歯コンビによって、海外のフアンから「Japanese GIRL is GACYA-GACYA Tooth!!」って思われないか心配だ・・・。でももし彩姫さんが矯正とか初めたら推し変します。
「どうせ形だけのハッタリだろ?」という聴く前のネガティブな予想を覆すように、幕開けを飾る#1”Don't you tell ME”からツインギターだからこそ成せる男勝りの鬼ごっついヘヴィネスに度肝を抜かれ、特にギターソロの導入部の空気感を見れば「ただのメイドさんじゃない」ってことが嫌でも分かるし、更にゴッリゴリな「存在の耐えられない重さ」でゴリ押していく#2”Puzzle”、モダン・メタルコア風のテクニカルなリフから疾走する#3”モラトリアム”でのDjent的なウネリを効かせたブレイクダウンからフレドリック・トーデンダルばりのスリリングなギターソロに繋がる展開とか、これもう完全に「メイド界のメシュガーじゃん」ってなるし、そして疾走感あふれるキャッチーなシングルの”YOLO”から彩姫さんのボーカル主体の”CROSS”、ここまでのモダンな音の出し方に抜群のセンスを感じさせるサウンド面だけを聴けば、まさか可愛いメイド服着た女の子が演奏してるなんて到底思えないし、アルバム序盤はゴリゴリなモダン・ヘヴィネスや歌モノ系のアッパーな疾走感溢れる曲で畳み掛けるように、バンドの自己紹介の挨拶がてら、アルバムのツカミとしては完璧な流れだ。

アルバム中盤以降は、一転してそれぞれアレンジとバラエティに富んだ楽曲や外部ライターの曲を織り交ぜながらアルバムの流れに的確な「変化」を与えつつ、バンドとしての柔軟性と同時に一体感、そしてメンバー個々のポテンシャルを爆発させていく。まずはバンメの武器でもあるミクちゃんと彩姫さんのツインボーカルが冴え渡る#6”OOPARTS”でバンドの側面的な部分を覗き見せたかと思いきや、次の#7”Take me higher!!”ではベースのMISAとギターの遠乃歌波によるアツいソロバトルを披露してみせたり、一転して80年代のハードロックにタイムスリップさせる#8”So, What?”では彩姫さんの格好良さに俄然「蹴られたい」願望が増すばかりだし、このタイミングでギタボのミクちゃんメインの#9”TIME”を挟んでくる構成とか本当にニクい演出というか、これもう「メイド界のデイブ・ムステインかよ」ってなるし、これにはマーティ・フリードマンも「サイコーじゃ~ん」と大喜び。そしてアルバムのハイライトを飾る曲でイントロから名曲臭しかしない#10”you.”、西海岸のエモ系インスト風のメロディと彩姫さんの美少女感溢れる作り声でまったりと始まる#11”Awkward”は、途中からギターが合流して緩やかにテンポアップしていき、そして後半からはストリングス・アレンジを加えたバンド・サウンドとともに、それこそプログレ・メタル的とも言えるドラマティックな展開力を爆発させる。正直、このレベルの曲をオリジナルでハンドメイドできちゃうのは素直に凄いというか、そう簡単に書ける曲じゃないのは確かだ。その勢いのまま、鬼ごっついギターを鳴らしつつアップテンポに展開する#12”decided by myself”、教科書どおりのHR/HMリフ主体の王道的なハードロックかと思いきや急にオシャいパートから最後はミク大佐にバトンタッチする展開がクソエモい#13”secret My lips”まで突っ切る。捨て曲ないし、どっかのタイアップ拾ってこれそうなキャッチーなシングル曲から、一方で玄人向けとしか思えないようなコアな曲まで幅広くハンドメイドできる強さは、並のメイドじゃないバンメのガチっぷりを証明している。なによりもアルバム後半に山場を持って来れる強みは単純に「いいバンド」の証でもある。
ハッキリ言ってプロダクション自体はまだまだB級だが、そのバンド-メイドがハンド-メイドした楽曲や随所にテクいパートや耳寄りなフレーズを差し込んでくるメンバー個々の技量その実力やポテンシャルは想像した以上のモノがある。ヘタしたらベビメタの1stアルバム並み、いやそれ以上のポテンシャルと確かな凄みがある。そのB級感も含めてベビメタの1stアルバムと共通する所があって、それは本作にはバラード曲がない、というか厳密には本作にはバラードが付け入る隙なんて全くなくて、最初から最後までノンストップで気持ちのいいロックをブチかましている。正直、彩姫さんって今にも絢香の「三日月」歌い出しそうなくらい「バラード映え」しそうな声してると思うんだけど、それなのにバラードがないのはバンメがハッタリではなく、いかに本気と書いてガチで音楽やってるかの証明でもある。いや、それとも単純にバラードが書けないだけか・・・?ともあれ、この手のいわゆる「嬢メタル(死語?)」と呼ばれる勢力の立ち位置とは一線を画した存在なのは確かだし、何よりもベビメタに対する明確な「カウンター」と呼べる立ち位置が、唯一このBAND-MAIDに許された立ち位置なんだ。しっかし、ここまでモダンな音ってそう簡単に出せる音じゃないというか、つまるところ我々「イェンス会」はあなた方バンド-メイド一同の「イェンス会」への加入を心からお待ちしております。さすれば、汝には『黄金のヘヴィネス』を授けよう・・・。
つうか、これ聴いたらガチでハマるから聴かないほうがいいかもです。聴けば聴くほど徐々にその面白さが分かってきて、終いには「うわスゲーなにこれ」ってなるくらい衝動的なアルバムです。それで、これもしかしてもしかするとミク大佐と彩姫さん以外の3人がバンメの本体なんじゃ...って気づいちゃったら終わりです。もう二度と抜け出せない。少し気が早いかもしれないが、バンメ的にはサマソニはまだしも今年のラウパくらいには出て爪痕残しておきたい思惑があるだろうし、実際にそれが実現する可能性というのは大いにあると思う。もしラウパに出たら出たで、果たして日本のメタラーに受け入れられるのか?そしてベビメタとの反応の違いに注目したい所だ。当然、そんな遠い話は5月から始まる初のワンマンお給仕ツアーを成功させてからだろうし、そのライブを自称「日本一のベビメタ」である僕が直々にこの目で確かめに行ってきます。つーか、5月のツアーまで新作に伴うイベントとか、そういった例えば握手会ならぬ「蹴られ会」とかはやってらっしゃらない?えっ、やってないの?! もっと欲を言うなら、鬼バンドを迎えたBiSHと対バンして「ベビメタ包囲網」的なことやって欲しいというか、名付けて「B(iSH)B(AND-MAID)A(and)B(ABYMETAL)大作戦」みたいな、とにかくベビメタをヒールに持っていく展開を希望。だから渡辺マネ頼むw
【早期購入特典あり】Just Bring It 【通常盤】(ポスター+ステッカー)
posted with amazlet at 17.01.27
BAND-MAID
日本クラウン (2017-01-11)
売り上げランキング: 4,093
日本クラウン (2017-01-11)
売り上げランキング: 4,093