Artist ねごと

Single 『DESTINY』

Tracklist
01. DESTINY
02. 夜風とポラリス
03. シンクロマニカ -Mizuki Masuda Remix-

Single 『DESTINY』

Tracklist
01. DESTINY
02. 夜風とポラリス
03. シンクロマニカ -Mizuki Masuda Remix-
『深夜の馬鹿力』 ・・・ねごとの3rdアルバム『VISION』は、まさにねごとの『未来』を確信的かつ核心的に捉えた、今年の邦楽界を象徴するかのような傑作だったが、そのアルバム『VISION』から約三ヶ月ぶりとなる新曲『DESTINY』が早くも発表された。自分の中で→「ねごとはシングルよりもアルバム曲のが面白い」というイメージと、今回のシングルはアニメ『銀魂゜』のアニソンタイアップだという点から、正直過度な期待はしていなかったし、実際に伊集院光のラジオ『深夜の馬鹿力』で流れた時にサラッと聴いても→「まぁ、シングルだしこんなもんか」みたいな漠然とした印象しか持てなくて、でもこのMVがアップされて初めてフルで聴いてみたら一転、それまでの評価が180度ガラッと変わってしまった。
『裏VISION』 ・・・そんな事よりも、曲がどうとか以前に、この横スクロールアクションみたいなMVの沙田瑞紀がメチャクチャ可愛い。特にラスト演奏パート。もうなんかこれ以外の感想は必要ないくらい、俄然瑞紀推せるやん?というわけ。で、話を戻して→伊集院光のラジオでほぼ寝ながら聴いた時は、ありがちなアニソンみたいなイメージしかなかったが、前述の通りこの”DESTINY”はフル音源で聴いて初めてその真価を発揮するのだ。まるでデヴィン・タウンゼント総裁の『Addicted』を彷彿とさせるピュンピュンしたkawaii系エレクトロニカとガールズ・ロック界のYMOを襲名するかの如し俄然レトロフューチャーなキーボードの音色、つまり新しさと懐かしさ、それこそレトロとモダンがクロスオーバーした"レトロモダン"なイントロから、瑞紀らしいミニマルなフレーズで曲のシュール感を演出しつつ、”シンクロマニカ”や”GREAT CITY KIDS”を連想させる最高にハイ!ならぬ最高にデッ↑デッ↑ってヤツな蒼山幸子のボーカルが冴え渡るポスト-グリッチ・ポップ的なサビへと繋ぎ、そしてこのシングルがただのポップ・ソングじゃあないことを証明する中盤からの、それはまるでANATHEMAの”Thin Air”顔負けのPost-Progressiveなパートでは、ベースの藤咲佑とドラムの澤村小夜子によるリズム隊のジャズミュージシャンばりに大人びたグルーヴを形成し、その強靭な土台の上で星空を見上げるような幸子の哀愁を帯びたボーカル・メロディが確かな存在感を発揮、来たるクリマックスではこれぞ"日本のオリアンティ"あるいは"ガールズ・ロック界のダニー・カヴァナー"と呼ぶに相応しい瑞紀の天上を貫くようなギター・ソロから大サビへと繋がる”endless”顔負けの展開力・・・そして遂に一つの結論に行き着く→「チョトマテチョトマテ...これって『VISION』の原型じゃ~ん!」って。事実、この曲は二年前から既にストックされていた曲との事で、どおりで所々にアルバム『VISION』の鍵を握る楽曲アレンジが顔を覗かせたりするし、と言っても『VISION』のどの曲とも一線を画した雰囲気や世界観を持っているのも確かで、これはもう言わば『裏ビデオ』もとい『裏VISION』と命名したくなるほどの名曲だ。あらゆる音がせめぎ合っているのにも関わらず、全く窮屈に感じない無駄のないソングライティング、その著しい洗練が進んだねごとワールドが宇宙さながら無限に広がっていく中で、その音のワームホールを抜けた先にねごとが辿り着いた一つの境地、これまでの集大成であると同時にねごとが降り立った新種の惑星がこの『DESTINY』なのかもしれない。
【成長性A】 ・・・傑作『VISION』で培ったバンドのアンサンブルはより強固に、より靭やかさが増し、持ち前のメジャー感溢れるポップさと『VISION』という傑作を作り上げたことで芽生えた自信、そしてバンドの成熟感に裏打ちされたアンサンブルが絶妙なバランスで保たれた、そのサウンドスケールが突如としてサウンドスケープと化す音のダイナミズムに只々圧倒される。アルバム『VISION』から数ヶ月という短期間で、自らのサウンドを著しくアップデイトし続けるねごとの音楽に対するひたむきな姿勢、優等生過ぎるほど貪欲な探究心にリスペクト不可避だ。なんだろう、ジョジョの身上調査書的に例えると、ねごとメンバーの成長性は間違いなくAランクだ。もはや今のANATHEMAに肩を並べる成長スピードだわ。なんかもうこいつらスゲーわ。こいつら本当に後ろ(過去)を振り返る気ねーわ。今はもう前しか見えてない、それこそ『VISION』で指し示した未来へと突き進んでいる感、無敵感がハンパねーわ。同時に、もうなんか『5』は意地でも聴かねーわと決意した瞬間だった。もうなんか公園に引き篭もって"椎名林檎ごっこ"してるどっかのメンヘラクソ女に聴かせてやりたい気分だ。
邦楽界のANATHEMA ・・・ねごとの成長性、それ即ちバンドメンバーの成長性に繋がっている。その実力はGLAY界隈でも折り紙つきの小夜子のドラムは、いつものように足の裏から変な汁が出るくらいテクいリズムを刻むというわけではなくて、今回はむしろ過去最高に派手さや手数を抑えた、パッと見地味に聴こえるようでいて、しかし随所で小夜子らしいというか小夜子にしか叩けないセンスフルなドラミングを披露していて、同時にドラムの音も過去最高にオーガニックかつナチュラルな音像で、俄然タイトかつヘヴィに聴かせる。佑との絶妙なコンビネーションも相まって、俄然リズム隊の骨太感マシマシだ。幸子は幸子で、一曲の中で哀愁と激情の間で最高にハイ↑から最高にロー↓まで(ハンティン↑ハイアンロー↓的な)、繊細に聴かせる所はシッカリとメロディを聴かせ、ブチアゲ↑る所ではシッカリとエピカルにブチアゲ↑る、まるでANATHEMAのヴィンセント・カヴァナーの如く変幻自在に歌いこなし、一人のボーカリストとして着実なステップアップを感じさせる。瑞紀は瑞紀で、カップリング曲の”夜風とポラリス”の中で、海外ノイズ・ポップ/ギター・ポップ風のオルタナ然としたギターを主体に、夏っぽいカラッとした雰囲気で軽快かつ爽やかなテンポで聴かせる曲で、これまでのねごとにはなかったような、しかし随所にねごとらしさを強く感じさせる今風の新感覚サウンドを展開していく。そして三曲目の”シンクロマニカ -Mizuki Masuda Remix-”は、初期Porcupine Treeをはじめとした今のPost-Progressive勢にも通じる、言うなればSF映画『メトロポリス』の世界観にも通じるアトモスフィアーでダークな雰囲気を持ったミニマル/ダブ・テクノ風のリミックスとなっている。目指すはJ-POP界のChvrchesといった所か。そしてアルバムに引き続き、かのテッド・ジェンセンをマスタリングとして起用しており、俄然プロフェッショナルな音を提供してくれている。特に今回の小夜子のドラムの音は理想的と言える。ちなみに、歌詞カードはきのこ帝国の『桜が咲く前に』と同じく一枚づつのカード仕様で、初回限定盤のDVDには先日大団円を飾った『お口ポカーン?!初の全国ワンマンツアー2015』の初日密着ドキュメンタリー編が収録されている。
今最も評価されるべきバンド ・・・ともあれ、"今最も評価されるべきバンド"という俺的評価に俄然説得力を持たせるような、一方で【なぜ日本におけるPost-Progressiveが女性的なジャンルであるのか?】という昨今の疑問に対する答えのようなシングルだった。つうか、シングル曲でこれだけハイレベルな一種の実験的な曲が書けちゃう今のねごとに怖いものなしだろう。マジでもうねごとがNEXT-ステージにステップアップするには、ANATHEMAの”Distant Satellites”みたいな究極のミニマル・ミュージックが書けるか否かにかかってるんじゃあないか。それができなきゃねごとはそれまでのバンドだったというだけの話で、それ以上でもそれ以下でもない。なぜならそれができるのは、少なくとも今の邦楽界ではねごとしかいないからだ。しかし現に、三曲目の”シンクロマニカ -Mizuki Masuda Remix-”はその伏線()だと確信しているので、俺たちの瑞紀なら、俺たちの瑞紀ならきっとやってくれるハズだ・・・ッ!
DESTINY(初回生産限定盤)(DVD付)
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