Welcome To My ”俺の感性”

墓っ地・ざ・ろっく!

2014年12月

【ワンコイン】DIR EN GREY 『ARCHE』【レビュー】

-これは『呪い』を解く物語-

はたしてレビューは売れるのか!?

・・・ということで、DIR EN GREYの約三年4ヶ月ぶりの新作『ARCHE』のレビューをnoteにアップしました。通常では冒頭の部分だけ観覧できる状態ですが、500円で全部見れるようになります。とりま実験みたいなもんで、それなりに売れたらブログにアップする予定ですが、売れなかったらそのままお蔵入りです。で、その内容としては→

【主なレビュー内容】
★”and Zero”と”てふてふ”を含む全曲コメント
キーワードとなる【シンプル】【V系回帰】【Post-系】【sukekiyo】について
★-これは『呪い』を解く物語-
★テーマである『根源』について
★ANATHEMAの『Distant Satellites』と赤い公園の『猛烈リトミック』と『ARCHE』の親和性
★薫≒津野米咲
★京≒佐藤千明
★『アルケー』のDIR EN GREY=『ジョジョリオン』の東方定助


以上について、約二万文字です。恐らく世界で最も『ARCHE』を理解している自信はアルケーだから売るケー(そんなわけアルケー)。あっ、しばらくは誤字脱字の編集作業するんでご了承です。このレビューを読んで他の虜に差をつけちゃおう!・・・ってなわけで、来年は2月のsukekiyoABCの新譜レビューから始める予定です。それでは~★

The fin. 『Days With Uncertainty』

Artist The fin.
The fin.

Album 『Days With Uncertainty』
Days With Uncertainty

Tracklist

  • 01. Illumination
  • 02. Night Time
  • 03. You Can See It In The Blue
  • 04. Curtains
  • 05. Silver From Over The River
  • 06. Thaw
  • 07. Veil
  • 08. Without Excuse
  • 09. The End Of The Island
  • 10. Till Dawn
  • 11. Days With Uncertainty



・・・驚いた。国内にこんなバンドが存在するなんて、、、更新停止してる場合じゃねぇ!このMVのたった数十秒のスポット映像を目にした瞬間、いわゆる"俺の感性"にズキュウウゥン!!と衝撃が走った。「なんだこいつらッ!?」・・・てっきり初めて聴くバンドだと思いきや、数カ月ほど前に何気なく耳にした"Glowing Red On The Shore"と同じバンドだと知ってリアルに驚いたというか、まさかこんな所で再び出会うなんて思いもしなかった。とにかく、それこそキタノブルーじゃあないが、バブル期というか90年代の邦画というか、それこそ岩井俊二映画をイメージさせる無国籍感のあるエキゾチックでノスタルジックな甘酸っぱい青春ロードムービー風の映像美と、海外のインディ・ロックやシンセ・ポップ、チルウェイヴやシューゲイザーからの強い影響下にある、まるでセピア色に光り輝くドリーム・スケープに、その懐かしい郷愁を纏った白昼夢の中をたゆたうような音世界に、僕は一瞬にして魅了されてしまったのだ。まるで発煙筒の煙のように淡く幻想的な音が空間を支配していくが、しかしサビではボーカルのYuto Uchinoによるフェミニンな歌声と心臓の鼓動のように力強いビートを刻むシンセで音の骨格を現してグッと"聴かせる"。そして、何といってもギタリストのRyosuke Odagakiが奏でる、 (そのコワモテの顔からは想像できない)USガールズ・バンドWarpaintの1stアルバムThe Foolの名曲"Undertow"を彷彿とさせるスウィーティでメランコリックなメロディ/フレーズには(ニヤリ)とせざるを得なかったというか、それもそのはず…なんと本作のマスタリングにはWashed OutWarpaintを手がけたJoe Lambertを迎えてるってんだから話は早い。"俺の感性"にズキュウウゥン!!とキタ理由はコレだったのか・・・どおりで、若干22歳の若者にしては一つ一つの音の完成度やUKミュージック的な音の再現度が新人離れしてるし、このレトロフューチャーなMVからも垣間見れる徹底したビジュアル/コンセプト作りには、彼らの"クリエイティブ!!"に対するリベラル意識の高さが伺える。で、このMVを手がけたのは、映画をはじめ大手企業のCMやミスチルのMVなど数多くの作品で知られる関根光才監督で、ヒロインのガール役を演じているのはEmmaとかいうViViモデルらしく(ポスト玉城ティナといった所か)、このMVでは本場の女優かってくらい、触れられそうで触れられない仲間内のマドンナ的な存在、近くて遠いアンニュイな存在感を刹那的に演じきっている。なんだろう…誰の女でもないんだけど、将来は俳優やってそうなボーカルと恋仲になりそうでならない"あの感じ"というか、あの"絶妙な距離感"で保たれたリア充グループとでも言うんだろうか、男なら誰しもが憧れる青春オーラに色々な意味で胸が張り裂けそうになる。さすがに実績のある監督作品なだけあって、音楽性と映像が絶妙にマッチした、何度もリピートしたくなる中毒性があるし、そして何よりもEmmaちゃんの仕草や表情に、そのkawaiiに胸キュン不可避だ。ともあれ、今年のMV大賞と言っても過言じゃあないアナログフィルムとリンクするような楽曲からは、次世代の邦楽界を担うホープとして期待させる、確かなポテンシャルを感じさせる。

アジア感・・・全体を通して聴くと、先ほどの名曲”Night Time”は少し特別な曲だという事がわかる。まず、幕開けを飾る#1”llumination”から、それこそライアン・ゴズリング主演の映画『ドライヴ』のサントラに入っててもおかしくない、80年代にトリップさせるようなエアロビ感あふれるシンセとリズミカルなクラップが、まるでレトロなナイトクラブの入り口を描き出していく。他にも、シューゲ・アプローチを効かせたエモいインディ・ロックの#3”You Can See It In The Blue”、アコギをフューチャーしたJ-POP型ドリーム・ポップの#4”Curtains”、ゆるふわ系の#5”Silver From Over The River”、再びバンド・サウンドをフューチャーしたグルーヴ感が心地よい#7”Veil”、まるでアイスランドの壮観な雪景色が目の前に広がるような#9”The End Of The Island”、まるでプラネタリウムのような浮遊感のあるシンセとクラップがゆりかごのように揺らめく#10”Till Dawn”など、強引に例えるなら→UKのCHVRCHESStill CornersあるいはスウェーデンのPostiljonenWashed OutとUSのWarpaintが融合したような、ハイブリットなJ-POPを繰り広げるそのロマンティックな姿は、今の時代とレトロな時代を繊細に紡いでいくような、古めかしいんだけどどこか新しいギャップと魅力に溢れている。とはいえ、やっぱり”Night Time”のインパクトったらなくて、事実この岩井俊二映画顔負けの"アジア"感からなる極上のノスタルジーは、洋楽バンドでは決して味わえないだろう。

リズム隊 ・・・このバンド、どうしても中心人物であるYuto Uchinoの卓越したセンス、そのカリスマ性に注目が集まるが、実はリズム隊(特にベース)も侮ることのできない存在で、それはリード・トラックの”Night Time”をはじめ、オープニングを飾る”llumination”のアウトロや#6の”Thaw”や#7の”Veil”で聴けるような、静寂的な空間すら繊細に心地よく”聴かせる”という意識を大事にしたベースとドラムが織りなす、柔らかくてそして濡れている=ソフト&ウェットなグルーヴ感は、それこそEP『Exquisite Corpse』の頃のウォーペイントを彷彿とさせる。音自体はもの凄くシンプルだし、音数も少なくて超わかりやすい、ドラムの残響音すら計算し尽くされているような、新人バンドとは思えない洗練されたバンド・サウンドに驚かされる。とにかく、バンドとして既に完成されているし、この年齢にしてはあまりにも落ち着きすぎている。そこがまた彼らの魅力でもある。

邦楽界の革命児 ・・・確かに、本作のアートワークおよび紙ジャケ仕様をはじめ、その音を聴くだけでは素で海外のバンドだと勘違いしちゃうくらい、ここまで海外志向の強いバンドって国内ではなかなか珍しくて、確かにこの手の音楽は海外では珍しくもなんともないし、この手のバンドはもう飽き飽きだって意見もわかる。けれども、それよりもまず日本にこのようなバンドが出てきた事に対して素直に喜ぶべきだと思うし、日本の音楽リスナーも"洋楽っぽい"とかいう偏見なしに素直に認めてやるべきだと思う。もう"日本人離れした~"という表現は飽き飽きだ。日本の音楽は遂にここまで来たってのが正しい表現だろう。久しぶりに、どうにかして天下を取らせてやりたいと思うバンドの登場だ。既に国内の大型音楽フェスへの参加や来年のSWSWに出演が決まっている事からも、その話題性や将来性は十分だし、次作あたりで大物プロデューサー迎えたら一気に化けそうな予感。。。とにかく、ガラパゴス化した日本の音楽界を次のステージに導くかのような、少し大袈裟かもしれないが邦楽界の革命児と呼ぶに相応しい一枚だ。強いて不満みたいなことを言うなら、MVとメイキングが収録された円盤つけて欲しかった感ある。あとsukekiyoノベンバの対バンがアリってんなら、そのOPアクトとしてこのThe fin.を呼ぶってのも全然アリなんじゃねぇの~?

(僕もひと気のないプールでワイワイしたかった...こんな青春送れなかった人生なんて無意味だ死のう・・・The fin.)
 
Days With Uncertainty
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The fin.
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きのこ帝国 『フェイクワールドワンダーランド』

Artist きのこ帝国
きのこ帝国

Album 『フェイクワールドワンダーランド』
フェイクワールドワンダーランド

Tracklist
01.東京
03.ヴァージン・スーサイド
04.You outside my window
05.Unknown Planet
06.あるゆえ
07.24
08.フェイクワールドワンダーランド
09.ラストデイ
10.疾走
11.Telepathy/Overdrive

脱アンダーグラウンド ・・・奇才津野米咲率いる赤い公園は、日本レコード大賞の優秀アルバム賞を受賞した2ndアルバム猛烈リトミックの中で、いわゆる"超えちゃいけないライン"の上で"売れたい、売りたい"の精神を両手に新時代の"J-POP"へと猛烈な勢いで振り切っていたが、その赤い公園のボーカルであり"ガールズ・ロック界の研ナオコ"こと佐藤千明と同姓同名の佐藤千亜紀率いる4人組、きのこ帝国の2ndアルバム『フェイクワールドワンダーランド』も、言うなれば"脱アンダーグラウンド"の方向性へと振り切っている。



東京 ・・・おいら、遠い昔は初期YUIすなわち全盛期YUIのファンで、YUIは1stアルバム以外認めないほどの人間で、そのYUIの1stアルバム『FROM ME TO YOU』にも"TOKYO"という曲がある。最近ではパスピエの2ndアルバム幕の内ISMにも"トーキョーシティー・アンダーグラウンド"とかいう曲があったりするし、他にも"東京"をテーマにした曲は山ほどある。で、先ほどの"脱アンダーグラウンド"というイメージは、『LIFE!』女優の臼田あさ美を起用したMVが話題を呼んだ一曲目の"東京"や二曲目の"クロノスタシス"のような、いわゆる"シティ・ポップ"感あふれる本作のリード・トラックを耳にすれば分かるハズだ。初めて"東京"を聴いた時は→「あり?こいつらってこんなバンドだったっけ?どうでもいいけど、こういう大衆ウケを狙った音だけど私たちノイズ/シューゲにもバリバリ精通してます(テヘペロ)みたいな、ちょっとキドった邦楽ロックもういいから・・・ホントもういいから・・・」というネガティヴな感想を持ってて、しかし心の奥底には(でもスゲーいい曲だな...)という正直な想いも確かに存在していて、そんな妙な"引っかかり"みたいなのがあって、つまり赤い公園と同じように2ndアルバムで"脱アンダーグラウンド"へと振り切ったその理由、その"意思"に僕は大いに興味を惹かれたのである。

ガール「ねぇ、クロノスタシスって知ってる?」

ぼく「いや、知らない。クロノトリガーなら知ってる(どやっ!)」←モテない

ガール「時計の針が止まって見える現象のことだよ」

ぼく「DIOのスタンド攻撃かな?」←モテない



シン・シティ・ポップ ・・・このアルバム、ネクラでヒキコモリの中二病系サブカル豚野郎相手にドヤってたミニアルバムの『渦になる』やEPの『ロンググッドバイ』、そして前作の1stアルバム『eureka』とは一線を画していて、"らしさ"のあるダウナーな狂気性と前向きでポジティブな力強いエモーションがユラユラと不安定に揺れ動く"東京"は、荒波のような時の流れと焦燥感あふれる東京の街を再現するかのような轟音に、東京を舞台に"アナタ"という『光』あるいは『希望』を見出した刹那い系の歌詞を、椎名林檎は元より初期YUIや新星Aimerを連想させる、都会の孤独感や疎外感をウリにしたシンガー・ソングライター的な存在感を発揮するVo佐藤が感情を高ぶらせながら俄然エモーショナルに歌い上げる、まるでバンドを次のステージにブチ上げるかのような、もはやきのこ帝国を代表するアンセムと成りうる名曲だ。ちなみに、赤い公園猛烈リトミックにも"TOKYO HARBOR"というゲストにKREVAを迎えたシティ・ポップナンバーがあるが、二曲目の"クロノスタシス"は夢遊病患者の夢ような幻想的かつノスタルジックな世界の中で、ポエマーみたいなリリックをソウル/ラップ調のボーカルでシットリとリリカルに聴かせる楽曲で、この頭の二曲できのこ帝国なりの"シティ・ポップ"の新たなる形をシーンに掲示してみせる。

椎名林檎×YUI=きのこ帝国 ・・・このアルバム、例えるなら『勝訴ストリップ』あたりの椎名林檎初期YUIのちょうど中間に位置する、メジャーっぽくもありインディっぽくもあるサブカルみたいなスゲー面白い立ち位置にいて、特に初期Whirrを彷彿とさせるダウナー系胸キュンシューゲの#3"ヴァージン・スーサイド"や不協和音のような不快感を煽る狂ったようなノイズを放つ#6"あるゆえ"、そして今の季節にピッタリな素朴な歌詞が染みわたる#9"ラストデイ"で聴けるような初期椎名林檎を彷彿とさせるアンニュイでシニカルなボーカルを耳にすれば、フロントマンの佐藤千亜紀"ボーカリスト"としての自覚が芽生えているのがわかる。???「私は楽器じゃない!」・・・その姿は、まるで相対性理論TOWN AGEやくしまるえつこのようだ。当然、その歌唱力は決して褒められたもんじゃあないが、ほとばしる妙なヘタウマみたいな感覚はまさにYUIそのもので、中でも今は行方不明者となってしまった全盛期のYUIが現代に蘇ったかのよな#10"疾走"のインパクトったらなくて、もはや今後のきのこ帝国の方向性を見定める一曲になるんじゃあないか?ってくらい、ネクラだった奴が生まれて初めて真っ直ぐなキモチを歌った、それこそ"大衆性"に満ち溢れたポップ・チューンだ。で、もしこれが初期椎名林檎だけをイメージさせるアルバムだったなら、その辺にいるサブカルバンドとなんら変わらないし、いわゆる"俺の感性"もここまでの反応を示さなかったと思う。でも初期椎名林檎初期YUIのハイブリット型J-POPってんなら話は違ってくる。僕は赤い公園猛烈リトミックの記事の中で→「"売れたい"という"意思"を感じないきのこ帝国には興味がない(キリッ)」みたいな事を書いたが、ありゃとんだ誤解だった。今のこいつら、、、ドチャクソ面白いです。

超えちゃいけないライン

猛烈リトミック』≠『フェイク~』 ・・・このアルバム、インダストリアルやアコギをフューチャーしたトリップ・ホップ系のインストをはじめ、ハーモニカを使ったカントリー調の楽曲などの新機軸的な発想を絶妙なアクセントとして落とし込んでいる。だから思いのほかゴチャゴチャしているというか、初期椎名林檎がシューゲ化したかと思いきや、一転してYUIあるいはチャットモンキー風のメジャーなJ-POPに聴こえる曲もあったりして、正直かなり"おいしい"立ち位置にいるというか、当然それは各方面からの影響を取り込んだ結果でもあって、とにかく過去最高に"私たち色んなことできますアピール"が凄いアルバムだ。良く言えば幅広い、悪く言えば曲の向いている意識がバラバラだ。でもこれを赤い公園猛烈リトミックと同じように"バラエティ豊か"なんて安直に表現するのは少し間違っているというか、あれだけ多くのジャンルが交錯しているのにも関わらず一つのアルバムとして成立しちゃってるのが『猛烈リトミック』の凄い所でもあって、逆にこの『フェイクワールドワンダーランド』は"中途半端"だから面白いというか、なんだろう"超えちゃいけないライン"を目の前にしてウジウジしてるような、まだどこか過去の自分を引きずってるような戸惑いや迷いみたいなのがあって、でも逆にそれが"らしさ"に繋がっている気がしないでもなくて、要するに"開かれている"を体現したような『猛烈リトミック』と比べたらまだまだ全然"アンダーグラウンド"だし、インディの殻をブチ破れていないってのが正直なところ。いや・・・僕はきのこ帝国を例に出してまで赤い人を持ち上げたいわけではなくて、確かに赤い人『猛烈リトミック』は日本中の音楽好きが反応してやらなきゃいけない、すなわち"売れなきゃいけないアルバム"だった。しかし、この『フェイクワールドワンダーランド』は別に"売れなきゃいけないアルバム"でもないし、日本の音楽リスナーが特別に"反応しなきゃいけないアルバム"でもなくて、一見すると双方似た境遇、似た立ち位置にあるアルバムのように見えて実は全くベクトルの違う作品なのだ。むしろ『猛烈リトミック』に対する"カウンター"みたいな解釈を持って聴くと俄然面白くなるというか、「じぇいぽっぱー?阿呆くせぇ・・・日和ってんじゃねーよブス」とでも言いたげな佐藤千亜紀の凛々しさに惚れる。実際、高揚感を煽るエピカルなオルタネーターっぷりを発揮する”You outside my window”の歌詞にある「阿呆くせぇ」と同じノリで佐藤に「イカ臭ぇ」って罵られたい系男子絶賛急増中じゃん・・・?ともあれ、赤い人は過去の自分を全て引っ括めてNEXTステージにブチ上げたが、きのこ帝国はまだまだヒキコモリのネクラ精神が抜け切れていない。だからこのアルバムは、"ブレイク"を目前にしてモジモジしてるウヴな女の子感に萌えるアルバムなのだ。

裏BESTアルバム ・・・このアルバム、これまでの洋楽志向の強い音から一転して邦楽志向の強い音に振り切ってるのが最も大きな"変化"で、正直"マニア向けのシューゲイザー"の域を抜け出せていなかった過去作よりは色々な意味で面白いです。でも技術的な面からメロディやアレンジ面、そして音作りからソングライティング面も含めて、まだまだ力量が自らの理想像に追いついていない状態で、要するに→本作が今のきのこ帝国が振り切ることのできる限界ラインと設定すると、恐らくは"超えちゃいけないライン"の上に立つであろう次のアルバムが早くも楽しみになってくるし、それはきっと"売れなきゃいけないアルバム"になるに違いない。そこで初めて『猛烈リトミック』と同じ景色が見れるんだろう。だから、もっともっと振り切っていい。例えば赤い公園津野米咲をプロデューサーとして迎えるとか、橋本愛似の端正な顔立ちからイメージされるミステリアスな雰囲気をブチ壊すような、例えば佐藤千亜紀が萌え豚アニメのコスプレしながらライブするくらい振り切っちゃっていい。まぁ、それは冗談として→結論から言えば、今のちんこ帝国もといきのこ帝国ほど面白いバンドって他にいないんじゃあないか、ってお話。つうか、なんか久々にドイヒーなレビューになってしまったので、反省の意味を込めて、ゆらゆら帝国妖精帝國を筆頭としたいわゆる"帝国系バンド"の一角を担うきのこ帝国"サVカル系男子"こと率いるsukekiyoの対バンが発表されるまで更新停止します。

フェイクワールドワンダーランド
きのこ帝国
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Esben and the Witch 『A New Nature』

Artist Esben and the Witch
Esben and the Witch

Album A New Nature
A New Nature

Tracklist
01. Press Heavenwards!
02. Dig Your Fingers In
03. No Dog
04. The Jungle
05. Those Dreadful Hammers
06. Wooden Star
07. Blood Teachings
08. Bathed In Light

UKの相対性理論 ・・・アイスランドのマイルドヤンキーことSólstafirと対バンすると聞いた時は、魔女が"俺の界隈"の一員である事を証明しているようで面白かったんだが、そんな"ナイトメアポップ"を称するUKはブライトン出身の三人組、Esben and the Witchの約一年ぶりとなる3rdアルバム『A New Nature』は、音楽専門クラウドファンディングPledgeMusicにて制作資金を募り、プロデューサーにはNirvanaやPJ Harveyとの仕事で知られる重鎮スティーヴ・アルビ二を迎えてレコーディングされた作品で、自身で新たに立ち上げたレーベルNostromo Recordsからリリースされている。で、前作のWash the Sins Not Only the Faceでは、それこそ"イギリス郊外でパラレルワールド"ならぬ"イギリス郊外でねるねるねるね"やってて、言うなればUKの相対性理論みたいなシティ・ポップ作品だった。

!!! ・・・その前作から一年ぶりの3rdアルバム『A New Nature』は、プロデューサーにスティーヴ・アルビニというだけあって、前作とは確実に一線を画した作風にガラッとその姿を変えている。初っ端から10分を超える#1"Press Heavenwards!""!"の部分からも垣間見える(えっ)、自らの"ルーツ"であるGodspeed You! Black EmperorSwansへのアツいリスペクトが込められた、まるで一本のロードムービーを観ているかのようなポストロック然とした音のスケール感とノイズロック然とした荒々しい轟音ヘヴィネスが一体化した作風となっている。それは前作の幾つかの曲を聴けば分かるように、もともと轟音ポストロックライクな嗜好を持っていた彼らだが、本作ではその"Post-系"に対する"憧れ"みたいなナニカが露骨に表面化している。中でも、Subrosa顔負けのシブいトランペットをフューチャーした14分を超える大作の#4"The Jungle"では、Earth界隈直系のダーティなムードと自然マジリスペクトなスケール感を併せ持つ昂然たるポストロックやってて、続く#5"Those Dreadful Hammers"ではUlver&Sunn O)))顔負けのドローン/ドゥーム系の歪んだ轟音ヘヴィネスにド肝を抜かれる。そして徐々にシブ味が増していくようなミニマルなメロディで聴かせる#6"Wooden Star"までの流れは本作のハイライトで、それはまるで聖地巡礼へと向かう崇高な旅路を、朽ち果てた荒野を一歩一歩力強く踏みしめていくような、人間の尊厳を深裂に描き出していくような重厚かつ荘厳な音に只々圧倒される。まるで気分は映画『ザ・ロード』のヴィゴ・モーテンセンだ。

Post-系 ・・・とにかく、前作のメルヘンチックなメンへラ系サブカル音楽からは到底想像できない、一線を超えちゃったエクスペリメンタルでオーガニックな、アメリカンナイズされた骨太な轟音とのギャップに"ねるねるねるね"のババアも→「エスベンと魔女は、ヘっへっへ。ねればねるほど色が変わって...ギョエエエエエエエエエ!?」ってなるくらい様変わりしている。例えるなら→か弱いサブカル女子が屈強な女ボディビルダーに変貌したような感覚あるし、そして何よりもエスベンと魔女のアーティストとしてのポテンシャルに驚かされる。要するに、いわゆる"俺の界隈"とは少し距離のあるノイズ/ドローン界隈の立ち位置から音を鳴らしている。個人的な嗜好は置いといて、その完成度は前作を遥かに凌駕している。確かに、そもそも魔女がこれをやる必要があるのか?という疑問は残る。が、むしろ魔女がやるからこそ"面白さ"が見出だせるアルバムなんじゃあないかと思う。特に、UKミュージック愛に溢れた2:54The Other Iと聴き比べると俄然面白い事になる。しっかし、これだけヘヴィでアグレッシヴな、それこそIsisにも精通しそうな音響系ヘヴィロック、ある種の"ポストメタル"とも取れる音を出している所を見ると、あのマイルドヤンキーと対バンするのにも自然と納得がいく。
 
A New Nature
A New Nature
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Esben and the Witch
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