Artist 赤い公園

Album 『公園デビュー』

Tracklist
01. 今更
02. のぞき穴
03. つぶ
04. 交信
05. 体温計
06. もんだな
07. 急げ
08. カウンター
09. 贅沢
10. くい

右手にポップス、左手にクソ ・・・今年、ANATHEMAの『Distant Satellites』と並ぶ傑作となった『Redwater Park』こと赤い公園の2ndアルバム『猛烈リトミック』は、例えるなら右手に赤色の”ポップス”を、左手に黒色の”クソ”を持って、「これ以上ポップになったら誰も聴かなくなる」←この”超えちゃいけないライン”の上を命綱なしで綱渡りするかのような、その”ポップス”と”糞”の絶妙なバランス感覚を保った名盤だった。その”超えちゃいけないライン”の見極め力の高さは、ひとえにバンドの中心人物である津野米咲の才能としか思えなかった。
『紅の華』 ・・・で、こうなると過去作を聴いてみたくなっちゃうのが自然の流れで、さっそく昨年リリースされた1stフルアルバム『公園デビュー』を聴いてみた。僕が赤い公園の存在を初めて知ったのは丁度この頃で、『猛烈リトミック』でも書いたように、今作『公園デビュー』の一曲目を飾る”今更”のMVを見たのがキッカケだった。その当時は初期相対性理論みたいな、ちょっとサブカル臭くて「ちょっと音楽知ってる私らマジカッケー(ドヤア)」みたいな気取った雰囲気を醸し出してて、正直なところ条件反射で飛び膝蹴り食らわしたくなるほど気に食わない存在だった。そんな僕が名盤『猛烈リトミック』に魅了された今、赤い公園を知るキッカケとなった曲や過去の作品を聴いてみたらどうだろう?というお話で、結果として→やっぱり初期相対性理論に通じるシティ・ポップ感やユル~いファンキーさだったり、持ち味であるオシャンティなリズム感を意識したArt-Rock/Post-Progressiveなセンスはこの頃から既に完成されていて、そして初期衝動に伴う音の荒々しさや漫画『惡の華』のヒロイン仲村さん顔負けのナニカが蠢くような混沌とした焦燥感が絶妙な毒味となっている。その”今更”や”のぞき穴”からリアルに伝わってくるハードコア/パンキッシュな勢いはデビュー作ならではだし、この”洗練”や”大衆性”という言葉からかけ離れたアンダーグラウンドな生臭さは、まさしく2ndアルバム『猛烈リトミック』には無いものだった。
津野米咲≒仲村佐和 ・・・当然ながら、あざといくらいのキャッチーさやkawaiiポップネスを内包した『猛烈リトミック』、そのコンセプトである「売れたい、売りたい」という”意思”は微塵も感じなくて、このデビュー作では”自分たちが本当にやりたい音楽”を、言うなれば垢抜けない田舎の女子高生のように少し尖ったガールズ・ロックをドヤ顔でやってる。一聴した限りでは、正直なところ部分的に優っている点はあるが、トータルで見るとやはり『猛烈リトミック』には遠く及ばない作品というか、ありとあらゆる部分で猛烈に足りてない。その足りない音の隙間を埋める(補足する)ように、モーレツな音を詰め込んだのが亀田誠治氏や蔦谷好位置氏らのプロデューサーで、あらためて『猛烈リトミック』におけるプロデューサー陣の存在の大きさを思い知らされた。それくらい、なぜこの赤い公園にあの『猛烈リトミック』が作れたのか?プロデューサーの腕だけでこうも変わるのか?もしくは津野米咲のコンポーザー能力が奇跡的に爆発したのか?このデビュー作を聴いたら余計にわからなくなった。どちらにせよ、この僕には奇跡的な出来事にしか思えなかった。つうか、まだ信じてねー。いや冗談じゃなしに、ちょっとありえない進化の仕方っつーか、この『公園デビュー』から『猛烈リトミック』に生じている変化は、もはや進化じゃなくて突然変異としか他に例えようがない。なんでコイツらが”ひつじ屋さん”をはじめ、”私”みたいなANATHEMAの”Lightning Song”とAlcestの”Voix sereines”が融合したような曲が書けるんだ?って、ホント謎過ぎる・・・赤い公園の闇は深い・・・。はたしてソングライターの津野米咲に一体ナニが起こったのか?ちょっと津野ちゃんにインタビューして聞いてみたいくらいだ。
・・・「ゲスニックマガジンの西条です!赤い公園のリーダー津野米咲さんに質問です!デビュー作の『公園デビュー』と比べて『猛烈リトミック』の出来が良すぎるんですが!もしかして今流行のゴーストライターとしてPorcupine Treeのスティーヴン・ウィルソンでも雇いましたぁ?」
・・・「誰?」
・・・「ゲスです!新作の『猛烈リトミック』って・・・完全に”メタル”を意識した作品だよねぇ?」
・・・「あんた誰?」
・・・「ゲスです!新作の『猛烈リトミック』って赤い公園じゃなくて、もはや『クリムゾン・キングの公園』だよねぇ?」
・・・「だからあんた誰?」
・・・「はい!はい!ゲスニックマガジンの西条です!『猛烈リトミック』の”私”って間違いなくANATHEMAとALCESTからのinfluenceあるよねinfluence?」
・・・「ANATHEMA?ALCEST?・・・誰?」
・・・「それはそうと、DIR EN GREYの”サVカル系男子”こと京率いるsukekiyoと今後対バンする予定とかあります?」
・・・「灰色と赤色だけに・・・?って、やかましいわw」
・・・「ゲスです!『猛烈リトミック』の”いちご”とか”お留守番”みたいな曲って、明らかにNHK教育番組への楽曲提供を狙ったゲスい下心がありますよねぇ?」
・・・「(ギクッ)ちょ、ちょっと警備員!」
・・・「なーにするんだよ!あーにするんだよ!(警備員に連行されながら)取材拒否かよぉ~!!」
スッピンの赤い公園 is ブス ・・・久石譲チックな心躍るピアノをフューチャーした”交信”や”体温計”そして”贅沢”などのアート・ロック然とした楽曲なんかは、ガールズ・ロックバンドならではの”ユルさ”があるし、驚くほどメタリックなギターで始まる6曲目の”もんだな”はCMソングっぽい既聴感のあるポップなサビが印象的だし、なお且つスティーヴン・ウィルソン的な陰鬱な音使いをさり気なく垣間みせたり、その流れで俄然SW感増々な#7”急げ”のイントロでは、もはやポストブラック...あるいはKayo Dotを彷彿とさせる赤い公園のアヴァンギャリズム(変態性)を垣間みせたりと、これはもう”ひつじ屋さん”の前身と言っていいし、そして#8”カウンター”で聴けるような衝動的/本能的な粗暴さは『猛烈リトミック』では体験できない。それらの楽曲を筆頭に、要所で津野さんのギター・フレーズが冴え渡っている所がまたニクい演出で、これは『猛烈』同様に津野ニー不可避です。しかし、特にどこかで盛り上がるといった場面はなくて、どちらかと言えば全体を通してジワジワ浸透してくる感じの、言うなればスルメタイプの楽曲/アルバムという印象。なんつーか→「やりたいことやってるんで、それでいいです...」みたいな、それこそ【自己完結】という言葉がよく似合うアルバムだ。なんだろう、この『公園デビュー』でソロ活動(オナニー)するよりもセックスのほうが気持ちいい事に気づいちゃったというか、田舎の化粧を知らないクソブサイクな女子高生が化粧を覚えてTOKYOに上京からの大学デビューからのキョロ充化したのが『猛烈リトミック』みたいな感覚? なんだろう、この『公園デビュー』が”本能的”な作品だとすると、あの『猛烈リトミック』は俄然”理性的”な作品と言えるのかもしれない。少なくとも、ちょっと背伸びして色気づいていた『猛烈リトミック』には無い、等身大の赤い公園すなわちスッピンの赤い公園が堪能できる、いい意味で本当に”ブサイク”な一枚だ。このアルバム、一般的というかサブカルクソ野郎からは評価が高いらしいけど、あの名盤『猛烈リトミック』を聴いた後では、どうしても過大評価にしか思えなかった。とはいえ、ある程度聴き込んでいく内に、なんだかんだ『猛烈リトミック』の”原形”あるいは”ルーツ”とも取れる要素に溢れたアルバムだって気づいちゃうと、全然過大評価なんかじゃあなくて、むしろ普通にスゲーいいアルバムなんじゃあねぇかって。
最後に→あのミカエル・オーカーフェルト率いるスウェーデンのOpethは、かのスティーヴン・ウィルソンがプロデュースした『黒水公園』の前に『Still Life』とかいう名盤を出しているが、でもこの『公園デビュー』は赤い公園の『Still Life』にはどう考えてもなりえなかった(ジャケこそ赤いけど)。そう考えると、やはりあの『猛烈リトミック』が生まれた事は奇跡に近い。でもって、やっぱ『猛烈リトミック』って”売れなきゃいけないアルバム”だよなーって、あらためて思うわけです。

Album 『公園デビュー』

Tracklist
01. 今更
02. のぞき穴
03. つぶ
04. 交信
05. 体温計
06. もんだな
07. 急げ
08. カウンター
09. 贅沢
10. くい

右手にポップス、左手にクソ ・・・今年、ANATHEMAの『Distant Satellites』と並ぶ傑作となった『Redwater Park』こと赤い公園の2ndアルバム『猛烈リトミック』は、例えるなら右手に赤色の”ポップス”を、左手に黒色の”クソ”を持って、「これ以上ポップになったら誰も聴かなくなる」←この”超えちゃいけないライン”の上を命綱なしで綱渡りするかのような、その”ポップス”と”糞”の絶妙なバランス感覚を保った名盤だった。その”超えちゃいけないライン”の見極め力の高さは、ひとえにバンドの中心人物である津野米咲の才能としか思えなかった。
『紅の華』 ・・・で、こうなると過去作を聴いてみたくなっちゃうのが自然の流れで、さっそく昨年リリースされた1stフルアルバム『公園デビュー』を聴いてみた。僕が赤い公園の存在を初めて知ったのは丁度この頃で、『猛烈リトミック』でも書いたように、今作『公園デビュー』の一曲目を飾る”今更”のMVを見たのがキッカケだった。その当時は初期相対性理論みたいな、ちょっとサブカル臭くて「ちょっと音楽知ってる私らマジカッケー(ドヤア)」みたいな気取った雰囲気を醸し出してて、正直なところ条件反射で飛び膝蹴り食らわしたくなるほど気に食わない存在だった。そんな僕が名盤『猛烈リトミック』に魅了された今、赤い公園を知るキッカケとなった曲や過去の作品を聴いてみたらどうだろう?というお話で、結果として→やっぱり初期相対性理論に通じるシティ・ポップ感やユル~いファンキーさだったり、持ち味であるオシャンティなリズム感を意識したArt-Rock/Post-Progressiveなセンスはこの頃から既に完成されていて、そして初期衝動に伴う音の荒々しさや漫画『惡の華』のヒロイン仲村さん顔負けのナニカが蠢くような混沌とした焦燥感が絶妙な毒味となっている。その”今更”や”のぞき穴”からリアルに伝わってくるハードコア/パンキッシュな勢いはデビュー作ならではだし、この”洗練”や”大衆性”という言葉からかけ離れたアンダーグラウンドな生臭さは、まさしく2ndアルバム『猛烈リトミック』には無いものだった。
津野米咲≒仲村佐和 ・・・当然ながら、あざといくらいのキャッチーさやkawaiiポップネスを内包した『猛烈リトミック』、そのコンセプトである「売れたい、売りたい」という”意思”は微塵も感じなくて、このデビュー作では”自分たちが本当にやりたい音楽”を、言うなれば垢抜けない田舎の女子高生のように少し尖ったガールズ・ロックをドヤ顔でやってる。一聴した限りでは、正直なところ部分的に優っている点はあるが、トータルで見るとやはり『猛烈リトミック』には遠く及ばない作品というか、ありとあらゆる部分で猛烈に足りてない。その足りない音の隙間を埋める(補足する)ように、モーレツな音を詰め込んだのが亀田誠治氏や蔦谷好位置氏らのプロデューサーで、あらためて『猛烈リトミック』におけるプロデューサー陣の存在の大きさを思い知らされた。それくらい、なぜこの赤い公園にあの『猛烈リトミック』が作れたのか?プロデューサーの腕だけでこうも変わるのか?もしくは津野米咲のコンポーザー能力が奇跡的に爆発したのか?このデビュー作を聴いたら余計にわからなくなった。どちらにせよ、この僕には奇跡的な出来事にしか思えなかった。つうか、まだ信じてねー。いや冗談じゃなしに、ちょっとありえない進化の仕方っつーか、この『公園デビュー』から『猛烈リトミック』に生じている変化は、もはや進化じゃなくて突然変異としか他に例えようがない。なんでコイツらが”ひつじ屋さん”をはじめ、”私”みたいなANATHEMAの”Lightning Song”とAlcestの”Voix sereines”が融合したような曲が書けるんだ?って、ホント謎過ぎる・・・赤い公園の闇は深い・・・。はたしてソングライターの津野米咲に一体ナニが起こったのか?ちょっと津野ちゃんにインタビューして聞いてみたいくらいだ。













スッピンの赤い公園 is ブス ・・・久石譲チックな心躍るピアノをフューチャーした”交信”や”体温計”そして”贅沢”などのアート・ロック然とした楽曲なんかは、ガールズ・ロックバンドならではの”ユルさ”があるし、驚くほどメタリックなギターで始まる6曲目の”もんだな”はCMソングっぽい既聴感のあるポップなサビが印象的だし、なお且つスティーヴン・ウィルソン的な陰鬱な音使いをさり気なく垣間みせたり、その流れで俄然SW感増々な#7”急げ”のイントロでは、もはやポストブラック...あるいはKayo Dotを彷彿とさせる赤い公園のアヴァンギャリズム(変態性)を垣間みせたりと、これはもう”ひつじ屋さん”の前身と言っていいし、そして#8”カウンター”で聴けるような衝動的/本能的な粗暴さは『猛烈リトミック』では体験できない。それらの楽曲を筆頭に、要所で津野さんのギター・フレーズが冴え渡っている所がまたニクい演出で、これは『猛烈』同様に津野ニー不可避です。しかし、特にどこかで盛り上がるといった場面はなくて、どちらかと言えば全体を通してジワジワ浸透してくる感じの、言うなればスルメタイプの楽曲/アルバムという印象。なんつーか→「やりたいことやってるんで、それでいいです...」みたいな、それこそ【自己完結】という言葉がよく似合うアルバムだ。なんだろう、この『公園デビュー』でソロ活動(オナニー)するよりもセックスのほうが気持ちいい事に気づいちゃったというか、田舎の化粧を知らないクソブサイクな女子高生が化粧を覚えてTOKYOに上京からの大学デビューからのキョロ充化したのが『猛烈リトミック』みたいな感覚? なんだろう、この『公園デビュー』が”本能的”な作品だとすると、あの『猛烈リトミック』は俄然”理性的”な作品と言えるのかもしれない。少なくとも、ちょっと背伸びして色気づいていた『猛烈リトミック』には無い、等身大の赤い公園すなわちスッピンの赤い公園が堪能できる、いい意味で本当に”ブサイク”な一枚だ。このアルバム、一般的というかサブカルクソ野郎からは評価が高いらしいけど、あの名盤『猛烈リトミック』を聴いた後では、どうしても過大評価にしか思えなかった。とはいえ、ある程度聴き込んでいく内に、なんだかんだ『猛烈リトミック』の”原形”あるいは”ルーツ”とも取れる要素に溢れたアルバムだって気づいちゃうと、全然過大評価なんかじゃあなくて、むしろ普通にスゲーいいアルバムなんじゃあねぇかって。
最後に→あのミカエル・オーカーフェルト率いるスウェーデンのOpethは、かのスティーヴン・ウィルソンがプロデュースした『黒水公園』の前に『Still Life』とかいう名盤を出しているが、でもこの『公園デビュー』は赤い公園の『Still Life』にはどう考えてもなりえなかった(ジャケこそ赤いけど)。そう考えると、やはりあの『猛烈リトミック』が生まれた事は奇跡に近い。でもって、やっぱ『猛烈リトミック』って”売れなきゃいけないアルバム”だよなーって、あらためて思うわけです。
赤い公園
EMI Records Japan (2013-08-14)
売り上げランキング: 43,713
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