02. トーキョーシティ・アンダーグラウンド
03. 七色の少年
04. あの青と青と青
05. ノルマンディー
06. 世紀末ガール
07. とおりゃんせ
08. MATATABISTEP
09. アジアン
10. 誰?
11. わすれもの
12. 瞑想
【うまい】・・・今の邦楽界に一矢を報いるような、昨年のデビュー・アルバム『演出家出演』で初めてパスピエを知って、僕が真っ先に感じた事といえば→”うまい”だ。古き良き時代のJ-Popやプログレなどの数ある要素を一つにする事への”うまさ”だ。そして今回、約一年ぶりにリリースされた2ndアルバム『幕の内ISM』でも、パスピエの心臓部である鍵盤使いの成田ハネダと紅一点ボーカリストの大胡田なつきが織りなす、先人に対するリスペクトやオマージュを織り交ぜた持ち前のポップネスと和風テイストに溢れたオリエンタリズムが、奇妙キテレツなアヴァンギャリズムをもってクロスオーヴァーしていく、その”うまい”パスピエサウンドは何一つ変わっちゃあいない。
【うまい】・・・今の邦楽界に一矢を報いるような、昨年のデビュー・アルバム『演出家出演』で初めてパスピエを知って、僕が真っ先に感じた事といえば→”うまい”だ。古き良き時代のJ-Popやプログレなどの数ある要素を一つにする事への”うまさ”だ。そして今回、約一年ぶりにリリースされた2ndアルバム『幕の内ISM』でも、パスピエの心臓部である鍵盤使いの成田ハネダと紅一点ボーカリストの大胡田なつきが織りなす、先人に対するリスペクトやオマージュを織り交ぜた持ち前のポップネスと和風テイストに溢れたオリエンタリズムが、奇妙キテレツなアヴァンギャリズムをもってクロスオーヴァーしていく、その”うまい”パスピエサウンドは何一つ変わっちゃあいない。
【YES!YES!YES!】・・・前作『演出家出演』のオープニング曲の”S.S”は、”パスピエというバンドがどんなバンドなのか?”を絶妙に表現した、それこそ彼らを代表するアンセム的な楽曲だった。本作『幕の内ISM』のトップバッターを担うのは、まさに邦楽界の風雲児、新世代のニューウェーブ・ポップを自称するに相応しい、まるで「11月のYESとパスピエのライブ、どっちに行くの?YESかNOで答えてよ」的な#1”YES/NO”だ。この曲は、疾走感溢れる爽やかなギター・サウンドが、ニューウェーブな微風とともにあの頃の青春時代を運んでくるかのよう。で、ゆったりとした始まりから大胡田なつきのボーカルをフューチャーした、ほのかに哀愁を漂わせつつ焦燥感を煽るようなスピード感あふれるサビへと繋がる#2”トーキョーシティ・アンダーグラウンド”、前作の名曲”名前のない鳥”を彷彿とさせる、しかしソレよりも全然ポジティヴで前向きなメロディを押し出した力強いポップスを披露する#3”七色の少年”、その勢いのままシングルの#4”あの青と青と青”まで、序盤の流れはパスピエの右腕である大胡田なつきの哀愁を帯びた歌声を軸とした、パスピエの一つのウリである”大衆性”を意識したキャッチーなポップソングが中心で、その中でも往年のJ-Popの香り薫る”七色~”や”あの青~”のような楽曲をサラッと書けちゃう所がパスピエの強みだと改めて再確認したし、特に”あの青~”のラストの大サビへと向かっていく怒涛の展開、ある種の激情的ですらある畳みかけはバンドの今の勢いが音に憑依しているかのよう。
【サブカル界のPerfume】・・・ここまでの曲を聴けば分かるよに、前作と比較すると正直かなり印象が違う。代表曲の”S.S”や”シネマ”など、前作の『演出家出演』がバンドの中心人物成田ハネダの鍵盤による音の洪水を表現した作品だとするなら、今作の『幕の内ISM』は大胡田なつきの”うたのおねえさん”的なクセのない優しい歌声をフューチャーした作品、そんな印象を受ける。そういった意味では、前作の”フィーバー”で聴けたような声優上坂すみれさん的な、一種の電波系アニソン的なサブカルっぽさや奇をてらったロキノン臭さが消え失せて、いい意味でも悪い意味でもより普遍性が増した、より大衆的な作品と言えるのかもしれない。前作の一つの良さでもあった、デビュー作特有の青臭さというか、独特のクセというのがパスピエの大きな個性に繋がっていたが、そのアンダーグラウンドな感覚が消えた、本当にクセがなくなった。今回、より普遍的あるいは大衆的な方向性に振り切った事で、おいら、前作の時に”サブカル界のPerfume”的な事を思ったんだけど、その信ぴょう性が更に増した気がする。

【パスピエ流のオリエンタリズム】・・・前作同様、大胡田なつきが手がけたアートワークや飛び出す絵本仕様の立体的なパッケージをはじめ、前作でいう所の”はいからさん”みたいな、パスピエの持ち味の一つとして”オリエンタル”な要素があって、これはシングルの”あの青と青と青”のイントロからして顕著なんだけど、今作ではその”オリエンタル”な要素を著しく強めている。不協和音を駆使した、ドリーム・ポップ/サイケ・ポップ風の奇妙キテレツな#5”ノルマンディー”、ギターの三澤勝洸がその限りなく空気に近い存在感を発揮しているアニソン風の#6”世紀末ガール”を絶妙なアクセントとして間に挟んで、次の#7”とおりゃんせ”は要所で相対性理論をリスペクトしながらも、というより実はハナエっぽいムズ痒いボーカルとリズム感にブヒれる名曲だ。再びアッパーなシングル曲の#8”MATATABISTEP”を挟んで、そのえらく正直なタイトルをはじめ、レトロな鍵盤やスピッツの”空も飛べるはず”のワンフレーズをオマージュしながら、童謡”はないちもんめ”や”いろはにほへと”からの引用を交えたパスピエ節全開のユニークな歌詞をフューチャーした#9”アジアン”、これまでのパスピエにはなかったようなプログレッシブかつアヴァンギャルドな冒険活劇っぽい大胆不敵な展開を見せる#10”誰?”まで、中盤以降は序盤の流れとは打って変わって、今作のコンセプトとして掲げられたパスピエ流の”オリエンタリズム”と”アヴァンギャリズム”を発揮した楽曲が中心で、その中でも新機軸とも取れる”ノルマンディー”や”誰?”、パスピエらしい”うまさ”と”オリエンタリズム”が融合した”とおりゃんせ”は今作のハイライトだ。

【エアギター】・・・おいら、前作の『演出家出演』を聴いた時に→「ギターが面白くなればパスピエは更に化ける、だから頑張れ!頑張れ!頑張れ!」と願った。でも、ここまでの曲を聴いてもやっぱギターがパッとしないくて、しかし#11”わすれもの”を聴いて驚きとともに嬉しくなった。この曲は前作の”カーニバル”的なトリップ系の曲調に奥華子ライクな懐かしい情緒感と切ない哀愁を兼ね備えた楽曲で、そもそもナニが驚いたって→まるで全盛期Opeth、まるで中期ANATHEMAのように幽玄でアトモスフェリックなギターが形成する【ATMSフィールド】にドギモ抜かれたんだ。ここまで”ほぼ空気”・・・”ほぼ空気”と同じ存在感を発揮していたギターが主役と言っていいこの曲は、本当の意味でパスピエの新たなる一面(新境地)を感じさせた。しっかし・・・やればできるやんけ!よっしゃ!ギタリストの三澤勝洸クンはアナセマあるいはフロイド流の【ATMS】をもっと勉強して、このパスピエの音楽に積極的に取り入れれば間違いなく邦楽界の天下取れる!!・・・で、ラストを飾る#12”瞑想”は、綺羅びやかなキーボードに始まって大正ロマンを思わせる妖艶なボーカルと往年のJ-popを彷彿とさせるBメロがポイント。
【サブカル界のSEKAI NO OWARI】・・・前作同様に、各方面からの影響を東京藝術大卒の知能を駆使してパスピエの音に昇華しつつ、(前作からその傾向はあったが)今作はパスピエ流の”オリエンタリズム”を爆発させた作品となっている。確かに、前作を初めて聴いた時に受けた→「なんだ!このバンドすげえ!」みたいな衝動や意外性は皆無だし、”S.S”並に個性が突出した楽曲もないけれど、中盤から後半にかけての馬力の強さや作品のバランス感は前作以上かも。しかし、パスピエの総合演出家である成田ハネダはあくまでも脇役に徹している印象で、事実『演出家出演』ほど耳に残るキーボードのフレーズが少ない。これは前作で危惧していた”ネタ切れ”でなければいいんだけれど...一抹の不安が過ったのは確か。要するに→今作はキーボード主体ではなく、あくまでも大胡田なつきのボーカル・メロディを主役としながらも、その中でギターとキーボードの掛け合い、インストバトルもキモにした”バンド感”を強めている。事実、本作を聴き終えた後は只ならぬ”なつき感”が凄い。まるで”椎名林檎やYUKIっぽい”と言われる事に対する反抗、脱却を狙ったかのような、それくらいボーカルの充実感は前作以上と言える。これらの微妙な変化は、前作のような突き抜けた個性よりもパスピエならではのオリジナリティに重きを置いた結果なのか、それとも。なんにせよ、ここまで普遍性あるいは大衆性が増したとなると、チンカスロキノン系男子からの人気は間違いなく頭打ちになるだろうから、今後のパスピエの命運はどれだけ良いタイアップを持ってくるかに、その命運がかかっている気がしないでもない。例えばNHK教育や大衆アニメに楽曲提供を積極的に行って、最終的に目指すは”サブカル界のSEKAI NO OWARI”といった所か。正直、これ以上のステップアップを望むにはex相対性理論現Vampilliaの真部デトックス脩一をプロデューサーに迎えるしかないと思う。そして、このまま和風路線を極めれば、その先にsukekiyoとの対バンワンチャンある!ワンチャン!ワンワン!
幕の内ISM (初回限定盤) (DVD付)
posted with amazlet at 14.06.29
パスピエ
ワーナーミュージック・ジャパン (2014-06-18)
売り上げランキング: 191
ワーナーミュージック・ジャパン (2014-06-18)
売り上げランキング: 191