Welcome To My ”俺の感性”

墓っ地・ざ・ろっく!

2014年02月

Cynic 『Kindly Bent to Free Us』 レビュー

Artist Cynic
Cynic

Album 『Kindly Bent to Free Us』
Kindly Bent to Free Us

Tracklist
01. True Hallucination Speak
02. The Lion's Roar
03. Kindly Bent To Free Us
04. Infinite Shapes
05. Moon Heart Sun Head
06. Gitanjali
07. Holy Fallout
08. Endlessly Bountiful

【レジェンド】・・・2011年にリリースされた前作のEPCarbon-Based Anatomyといえば→伝説の1stアルバム『Focus』から15年ぶりに目覚めた奇跡の復活作『Traced In Air』のファンタジックかつオリエンタルな方向性を更に深く掘り下げたような作風で、サウンド的にも持ち前のボコーダーを駆使したスペーシーかつドリーミーな神秘性や理系くさいメタリックでテクニカルなヲタメタル色は希薄となり、比較的オーガニックな音作りとポストロッキンなアプローチを強めると同時に、より多彩な民族音楽を用いたウッホウッホホなオルタナへと深化した、言うなればポストプログレッシブ的なスタイル、言うなれば『未知なる部族との遭遇』だった。悪く言えば日和ってエモくなった。で、2ndの『Traced In Air』『もののけ姫』のシシ神様をモチーフにした作品だとするならば、このEP『Carbon-Based Anatomy』は同作のタタリ神をモチーフにしたような作品だった。そんな、(今では珍しくも何ともないが)ジャズ/フュージョンとデスメタルをクロスオーバーさせたバンドの先駆けであり、今流行りのDjent界隈に多大なる影響を及ぼしたUSのレジェンドことCynic。フルアルバムとしては約6年ぶりとなる待望の3rd『Kindly Bent to Free Us』は、エンジニアにロブ・ゾンビの作品で知られるJason Donaghyを迎えてレコーディングされている。

【オーガ(シ)ニック】・・・まず、オープニングを飾る#1”True Hallucination Speak”のまるでPorcupine Tree『Fear Of A Blank Planet』ライクなイントロから、この手の好き者ならばニヤリとしてしまうだろう。近年Mastodonライクなジュクジュクしたキザミリフ主体の”オーガニック”なクラシック・ロックに→「ポール・マスヴィダルの新プロジェクトかな?」と面食らい、中盤からジョン・ペトルーシ顔負けのスリリングな速弾きGソロからのツーバスドコドコを使った緩急を織り交ぜながら、実にシニックらしいアート性をもってプログレスに展開していく。もはや、この一曲だけでUKプログレおよびUSプログレを掌握するかのような一曲だ。それぐらい、恐ろしいほどの音の密度を感じる。その流れから、近年Baronessを彷彿とさせるストーナー風の”オーガニック”なリフ回しで始まる#2”The Lion's Roar”は、UKのIt BitesやスウェーデンのA.C.Tらのシンフォ/プログレハードを連想させるコーラスとポップなボーカルが織りなす爽やかなハーモニーとA Kamikaze seedとかいう謎の歌詞がポイントで、これにはA.C.Tも「えっ、僕たちクソ久しぶりに新譜リリースしたんですがそれは・・・」と訴訟不可避。で、ここまでの”オーガニック”な序盤の流れを聴けば分かるように、少なくとも今作は2ndの『Traced In Air』ではなく、前作のEP『Carbon-Based Anatomy』のオルタナ路線を素直に踏襲した作風だと理解できる。当然、2ndみたいなアンビエンスがかった音響ライクな音作りではなくて、とにかくリフからソロからプロダクションまで”オーガニック”を意識したクラシックな音作りで、まるでネフェルピトーの”脳みそクチュクチュ”、もしくは花京院のハイエロファントグリーンが脳幹に侵入して結界を張り巡らせていくような刺激的なキザミリフを主体に、本来のシニックらしいテクニカルなプログ・メタルではなく、いわゆる”クラシック”な”プログレッシブ・ロック”というものを現代風の解釈で描き出している。まさかあのシニックが”あのキザミ”リフを取り入れてくるなんて想像してなかったし、Gソロに関しても大きな特徴だったフュージョン色は皆無で、もはやDTジョン・ペトルーシばりにピロピロ弾きまくってて笑う。

【俺がプログレだ】・・・そして表題曲の#3”Kindly Bent To Free Us”のイントロからテクニカルな低音キザミリフまで、シニックの一番弟子に当たるScale the SummitThe Collectiveライクな小回りの効いたリフ回しを耳にした時は→「まぁ、弟子だから多少はね?」とか思いながら、ここに来てようやく本来のシニックらしいジャジーで幻想的なムードを高めていく。が、ここでも寂寥感を煽るタイトなベースの音使いに、二番弟子であるIntronautを想起させる。で、まるでOpeth『Damnation』ライクな哀愁よろしゅうイントロで始まる#4”Infinite Shapes”は、ポールのサイドバンドÆon Spokeっぽくオルタナ風に仄暗い空間を演出しつつ、トドメにThe Rasmusライクなエモい転調から闇夜に響き渡る狼の鳴き声の如し泣きのGソロまで、トコトンOpethリスペクトな曲。で、ドイツのThe Oceanを筆頭としたポスト界隈からの影響が伺える#5”Moon Heart Sun Head”、遂には兄弟分のExiviousライクな#6”Gitanjali”まで、序盤の”オーガニック”な始まりとは一転して、中盤はシニック自身やポールのサイドプロジェクトを含む現代的なプログレ/オルタナからの影響が顕著に表れた楽曲が続いていく。で、終盤の流れは→いわゆるATMS界の初代王者たる所以を見せつける#7”Holy Fallout”、そして本編ラストを飾るのは#8の”Endlessly Bountiful”で、あのレジェンドがまるでクリスマス・ソングみたいな、ここまであざといぐらいのエモい曲を書くなんて・・・僕はもう何も信じられなくなった。

ピッチフォークとニューヨークタイムズからの寄稿

【プログレッシブ・デス・ピッチ】・・・正直、今作がPitchforkでフルストリーミング配信された時から嫌な予感はしてた。まずリフがクソつまらないです。もう一回言うけど、リフがクソつまらないです。とにかく既聴感しかない。でもリフはパクリだらけだけど、異常に高い曲の構成力に無意識のうちに惹き込まれ、ふと気づいたらその世界に入り込んでいる辺りは、さすがレジェンドらしいシニックの【ATMS】に対する意識の高さゆえだと。これがレジェンドの作品じゃなければ、手放しでプログレマニアに高く評価されたんだろうけど、現にシニックの約6年ぶりのフルアルバムとして考えると、正直物足りなさが否めない。このアルバムで唯一評価できる所を挙げるとすれば→それは「えぇ!?レジェンドがそれやっちゃう!?」という”意外性”だけです。つうか、ある意味”禁じ手”やっちゃってるわけだから、これ以上はもう解散しかなくね?って、そんな一抹の不安を感じてしまった。なんつーか、ピッチみたいなニワカ御用達メディアを口説くには、最近のマストドンみたいなクラシックな音を出しときゃいいんでしょとメタル界隈が学んでしまった感。あらためて、やはり現代アメリカン・ヘヴィメタルの雄であり現代プログレの中心に位置するマストドンの存在は無視できないものがあったんだろう。

ポール・マスヴィダルの脳ミソ

【Post-Progressiveへの憧憬】・・・少し話は戻るが、今作のような”オーガニック”もしくは”クラシック”な変化というと→Opeth『Heritage』を想像してもらうと分かりやすいかもしれない。なんつーか、昨年のRiversideKATATONIAも、ある意味でAlcestもそうなんだけど、ここ最近のメタル界隈、特にベテラン勢の作品には大きな”変化”が巻き起こっている。2ndから約6年間、ポールの意識の中にOpethHeritageMastodonの名盤Crack The Skyeや迷盤The Hunterの存在があったなんて事は知る由もないけど、少なくとも今作はクラシック・ロックに対する敬意とPost-Progressiveに対する憧憬が入り混じった、【Porcupine Tree?SW Teacher?Kayo Dot?Frost?Opeth?DT?A.C.T?Baroness?It Bites?Mastodon?Scale the Summit?Intronaut...?】それら21世紀以降の近代的な”プログレ”と称される全てを網羅した、つまり『勝手に21世紀のプログレ総括しちゃいましたテヘペロ』的な一枚。もはやKscopeに所属する全バンドが「マジかよシニック最低だな」もしくは「汚いなさすがシニックきたない」と阿鼻叫喚する様子が思い浮かぶほど(今作がポストプログレ界隈に与える影響って実は少ないと思うけどね)。そういった意味では→あのピッチフォークが「21世紀におけるアート・ロックの新しいカタチ」と言うのも至極納得できるし、UKのプログレメディアが年間BESTに挙って持ち上げそうな予感はする。しかし、近年のプログレ界隈が徐々に脱ヲタ化もといハードロック化していく流れ・・・正直嫌い。いかんせん、この悪い流れがOpethMASTODONの新作へと繋がっていきそうなのがまた何とも...。

【プログレセンター試験】・・・もはや、これはレジェンドCynicではない、至ってシンプルな”プログレ”なんだ。いい意味でも悪い意味でも”ただのプログレ”、それ以上でもそれ以下でもない。プログレ好きによるプログレ好きのためのプログレだ。どこか新しくもありどこか懐かしくもあるプログレ浪漫飛行、もしくは現代プログレ大全集だ。これは世界中のプログレヲタクが試されているのかもしれない。自分がどれだけ”プログレ通”なのかを測る、言うなれば【プログレセンター試験】だ。聴き手側のプログレに対する意識の高さが問われると同時に、今のレジェンドに対して”らしさ”を求めるか”プログレ”を求めるかによって、どのような嗜好でどのような立ち位置から聴くかによって評価が大きく変わってくる作品だ。この試験の問題を解いてる時は、それこそプログレヲタクの脳みそを断面図にしたようなグロいアートワークのように、脳幹が働きまくって脳汁が溢れ出す勢いだった。自分で言うのもなんだけど、個人的にはB判定くらいは取れたんじゃあないかと。でも、唯一Toolに関する応用問題だけは解けなかったから勉強し直しかな? 何回も言うけど、今作はピッチをも巻き込んだプログレセンター試験です。今作を高く評価する奴はプログレガチ勢であると同時にニワカである証明だという...ね。しかしながら、このレジェンドに対して正しい評価を下せる俺ってやっぱカッケーわ。僕は、今作を無理くり褒め称えるようなニワカプログレヲタだけには絶対なりたくないんだ。もはや「ニワカプログレッシャーよ、俺の感性を超えてみろ」って感じだ。兎にも角にも、まるでハンターのパリストンばりに有能なポールの大胆な発想と器用さに驚きと賞賛を。

【ヒニック】・・・それこそ映画『もののけ姫』のラストでシシ神様が死を迎えたように、これにてレジェンドが築き上げてきた孤高の創造神話は無残にも崩れ落ちてしまった。当然ながら、2010年にグロウル担当のTymon Kruidenierが脱退しているため、初期のデスメタルらしき要素は微塵も存在しない。そして、ただただ驚いた。伝説の1st、15年の眠りから覚めシシ神化した2ndと革命的なスタイルでシーンに多大な影響を与えてきたレジェンドが、今度は逆に影響を与えた弟子から影響を受けていることに対して。例えるなら→銀河の果ての存在であるシシ神様が土臭い地上へと降り立ち、平民と同じ目線で日々の暮らしを体験してみた、みたいな。なんて皮肉なことなのだろう。これぞまさにヒニックだな!

Kindly Bent to Free Us
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Cynic
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Alcest 『シェルター』 レビュー

Artist Alcest
Alcest

Album 『Shelter』
Shelter

Tracklist
01. Wings
02. Opale
03. La Nuit Marche Avec Moi
04. Voix Sereines
05. L'Eveil Des Muses
06. Shelter
07. Away [feat. Neil Halstead]
08. Délivrance
09. Into The Waves

【元々ブラックメタルなんか興味なかったのさ、あの頃の僕はどうかしてたんだ】・・・そんなネージュのホンネが込められているような、先行シングルとなる”Opale”をこの世に解き放ち、自身が生み出したポストブラックなる一つのジャンルに終止符を打った、ポストブラ界のアイドルことネージュ率いるAlcestの約二年ぶり通算四作目となる『Shelter』がリリースされた。まず、この実にShoegazer然としたラブいジャケが暗示するとおり、あのANATHEMAとのツアーを経験し、あの名盤Weather Systemsが発する黄金色に光り輝く生命エネルギーをズキュゥゥゥン!!と浴びてしまったLove & Peaceなアートワークから全てを察する事ができるんだが、結論から言ってしまうと→ネージュ「俺はポストブラックをやめるぞジョジョー!」と高らかに宣言するような、いわゆるポストブラックと称されるジャンルの一時代を築き上げてきた自身の過去との決別を宣言するかのような、北国からの風をうけて新たに生まれ変わったアルセストが奏でる極上のサウンドスケープが、そよ風にのって優しく心の中に吹き込んでくるかのような一枚となっている。



【Post-Black is DEAD】
・・・まず、翼の生えた天使が舞い降りてくるかのような、まるで気分は「パトラッシュ、僕はもう疲れたよ...」な神々しいイントロの#1で幕を開け、その流れで始まる#2”Opale”が今作の『シェルター』を象徴していると言っても過言じゃあない。”オパール”という名の【幸運の石】が意味する→【人生の暗闇に希望をもたらすような明るさに満ちた石であり、憂鬱を払い、何事にも囚われない柔軟さや人に左右されない自分自身の核を作る】・・・そんなオパールに秘められたヒーリング効果をフルに発揮するかのような、これまでの少し内向的だったAlcestとは一線を画した、まるでSigur Rós直系の優雅なグロッケンシュピール(鉄琴)を用いたポストロッキンな音使いと、まるでANATHEMAヴィンセント&リー・ダグラス黄金コンビを想起させる、貴公子Neige【幸福】を呼び寄せる清らかな歌声とBillie Lindahlの天使のようなコーラスが織りなす黄金のハーモニーと共に、まるで生まれたての赤子のように純粋無垢なメロディとLove & Peaceな多幸感に満ち溢れた、眩いくらいの音の洪水にMy Heart is Happy!! しかし、なぜこの『シェルター』がここまでシガロリスペクトなのか?その答えは至って簡単だ→なんと今作のミキシング&プロデューサーには、数多くのシガロ作品を手がけてきた重鎮Birgir Jón Birgissonを迎え、そのシガロをはじめSólstafirKontinuumらのアイスランド勢の作品を世に送り出してきた、アイスランドが誇るSundlaugin Studioでレコーディングされた作品だからだ。更に、チェロやヴァイオリンなどのストリングス勢もヨンシーの親衛隊として知られるAmiinaの4人組を起用しており、様々な面においてシガロ界隈でお馴染みの人材で揃えてきている所に、もうワンランク上のおっさんを目指したいという、アルセすなわちネージュのクリエイティヴ!!な音楽に対する貪欲な姿勢と揺るぎない強い意志、そして今作に対する本気度を伺わせる。ちなみに、今作のマスタリングにはDIR EN GREYやくしまるえつこの新曲でも知られる、世界一の売れっ子エンジニアことテッド・ジェンセン擁する世界最高峰のマスタリングスタジオ、STERLING SOUNDJoe LaPortaが担当している。まさしく最強の布陣だ。

 地球のみんな!オラに力を分けてくれ!

【最後のノイズ・・・そんな、今作を象徴する”オパール”が解き放つ、まるで水晶球のように一点の曇りのない光がこの世界を明るく照らし出しながら、次の”La Nuit Marche Avec Moi”へと物語は続いていく。この曲では、ほのかに前作の匂いを感じさせるアンニュイでありながら優しく繊細なメロディをもって、極上のリヴァーヴを効かせた美しきドリーム・スケープを展開していく。そして、今作のハイライトであり、アルセストの過去と今を象徴かつ証明するかのような#4の”Voix sereine”は、まるで朝日が登り始める合図(イントロ)から、情緒感に溢れたネージュの歌声とヨンシー親衛隊による優美なストリングスや鉄琴、それらの繊細なタッチで丁寧に紡がれていくリリカルなメロディをもって、まるで「地球のみんな!オラに力を分けてくれ!」と言わんばかりの『愛』『勇気』『希望』が込められた活力みなぎる力強い音の生命エネルギーを蓄積させながら、まるで過去との別れを惜しむかのような、まるで『ジョジョ』のツェペリ一族が最期に「JOJOーーーおれの最後の波紋(ノイズ)だぜーーーうけとってくれーーッ」という魂の叫びが込められた『人間の魂』と、まるでX次元へようこそでネコ化したやくしまるえつこと同調するかのようなネージュの「ニャ~ニャ~ニャ~♪」というコーラスを交えながら、押し寄せる恍惚感とepicッ!!な胸の高鳴りと共に、中盤からクライマックスにかけてエモーショナルな感情を爆発させていく圧倒的なダイナミズムは、まさしくANATHEMAの名曲”Untouchable, Part 1”に直結するドラマティックでシネマティックなソウル・ソサエティを形成し、この世の【不幸】を洗い流し、そして全てを浄化していく...。この世界中から呼び込んだ生命エネルギーを一つにした元気玉こそ、ネージュが歩んできた音楽人生すなわち物語の一つの終着点であり、この北風と太陽のような『光』の塊こそネージュの黄金の精神』なんだと僕は悟った。

メディアブック

黄金期のジャンプ】・・・あらためて、この#4”Voix sereine”で披露している、初期のポストメタルミュージックへの回帰が込められた、これまで内側に溜め込んでいたヒキコモリエネルギーを、これみよがしに一気に外側に解放するかの如しノイジーなギターは、過去の自分を捨てて、『希望』に向かって未来へと一歩前へ踏み出すような、今にも溢れ出しそうなネージュの内向きではなく前向きな願いと想いが込められている。僕はこのノイズという名の幸福の渦に身を任せ、そのノイズの渦に贅沢に溺れる中で、Alcestとの出会いから今までの思い出が走馬灯のように頭を駆け巡り、そして気づくと僕は→「ありがとう」...それしか言う言葉が見つからない...と呟きながら、ただただ流れる涙を抑えることができなかった。それほどまでに、今までネージュが心の奥底に密かに封印しておいた『シェルター』という名の『ココロのトビラ』を開き、ネージュが求めていた輝かしき栄光の光を掴み取る瞬間・・・すなわちナポレオンの復活!を目の当たりにしているような感動すら憶えた。そして僕は、この”Voix sereine”が解き放つ恍惚感あふれるエモーションと「左手はそえるだけ...」みたいな桜木花道的なアートワークに、ジョジョ8部『ジョジョリオン』の最終話もしくはラストシーンを垣間見たような気がした。要するに、今作のテーマは→さしずめ黄金期のジャンプ』ミュージックといった所か。

【Shoegazerへの憧憬】・・・過去のAlcestに別れを告げ、リバーブの効いた冷たい北風が地肌を儚く刺激するドリーム・ハウスの中で、再びネージュとBillie Lindahlによる黄金のハーモニーを披露する#5”L'Eveil Des Muses”、まるで太陽のような輝きを放つイントロからアコースティックな音色を使ってハートフルなエネルギーを放出する表題曲の#6”Shelter”、そしてネージュのShoegazerに対する意識の高さ、すなわち『LOVE』を#7の”Away”で再確認する事となる。デフヘヴンの2nd『サンベイザー』にネージュを迎え入れたように、それこそネージュの『シェルター』を開く鍵すなわち黄金の回転エネルギーとして、マイブラと並んでShoegazerというジャンルの絶対的アイコンである伝説のシューゲイザー・バンド、Slowdiveニール・ハルステッドをリードボーカルとして迎え、ヨンシーの追っかけことAmiinaの優美なストリングスとアコースティックなフォーキーな音色を引き連れて、アイスランドの雄大な大地と情緒に溢れた自然豊かな『メランコリア』を描き出している。その、まるでネージュが「貴方が僕の『シェルター』の鍵です。私の心の扉を開くのはあな~た~♪」と言わんばかりのエモい流れから、本編ラストの約10分ある大作の”Délivrance”へと物語は進んでいく。終盤のハイライトを飾るこの曲は、まるで映画『メランコリア』の壮大かつ壮絶なラストシーンをリアルに体感しているかのような、それこそネージュという一人の人間の『真実の物語』を深裂に描き出すかのような名曲で、ネージュによる民謡風のコーラスや真綿のように繊細緻密なメロディをもってリリカルに展開しながら、特にクライマックスを飾る終盤での壮観なスケールを目の前にした僕は為す術がなく、燃えさかる灼熱の太陽に手をかざしながら、一刻一刻と迫りくる感動の渦にただただ身を委ねるしかなかった。まるで、この世に蠢く全てのカタストロフィを『無』にするかのような、それこそ『清らか』な遺体で構築された賛美歌を最期に、これにてネージュという名の聖人が後世に残した『人間賛歌』は堂々の完結を迎える。

【キーワードはJulianna Barwick】・・・主に#1,#2,#5,#8でコーラスを担当している、スウェーデン出身のインディ・フォーク系SSWPromise and the MonsterBillie Lindahlをリードボーカルとして迎えた、世界で3000枚限定のハードカバーブック盤に収録されているボートラの#9”Into The Waves”の破壊力ったらない。本編ではネージュと共に崇高なコーラス/ハーモニーを披露することで、今作をより映画のサントラ的なスケールを与え、その聖歌隊の如し神聖なるコーラスが一つのキモとなっている所からも、USのJulianna Barwickを想起させるヒーリング・ミュージック的な意識が強い作品と言える。なんつーか、インディ寄りとでも言うのかな。そんな彼女の歌声だが、このボートラではチャーチズローレンたそを少しウィスパーにした天使のような萌声を全面にフューチャーしており、それこそCD一枚に一曲という贅沢させちゃうのにも十分納得してしまうほどの良曲となっている。正直、このボートラを聴くか聴かないかによって、今作に対する評価が180度変わってしまうんじゃあないか?ってレベル。なんにしても、アルセストの新譜といいウォーペイントの新譜といい、それらを紐解く鍵となるのが、この『シェルター』と同じBirgir Jón Birgissonがエンジニアとして携わった、新作(2nd)を昨年リリースしたジュリアナ・バーウィックってのが俄然面白いね。いつぞやに彼女のデビュー作をレビューした記憶があるが、まさかそれがこの伏線()だったなんて・・・。

  シェルター
 
【ネージュの『ユメ』『夢』】・・・あらためて、今作の『シェルター』ではBlackgaze特有の無骨なブラストやノイジーなギター、そしてネージュの怒りが込められたスクリームやプログレスな展開力も影を潜め、ありのまま素直にShoegazerやってる。まるで一種の桃源郷、いや黄金にでも迷い込んだかのような幻夢的(二次元的)な世界観は皆無に近く、その薄霧がかった幻想的な森を抜けると『シェルター』という名の現実空間(三次元)への入り口が目の前に現れ、その扉を黄金の回転を使ってこじ開けると、そこには『ユメ』ではなく『夢』の世界が広がっていたんだ。それこそ、初期作品で空想という名の『ユメ』の中で『夢』を一貫して描き続け、子供の頃から憧れ続けていたネージュの『夢』が真の意味で現実となった瞬間なんだと。正直、この『シェルター』を解き放つことを使命に、ネージュはこの世に生を受けたんだと思う。しかも、かつて”オパール”【不幸の石】と呼ばれた時代もあったってんだから尚さら面白い。この言葉の意味が、ネージュの音楽人生の全てを象徴していると言っても過言じゃあない。これぞ『人間賛歌』だと。

【Pitch-Blackへの憧憬】・・・そんなネージュのアツい想いが込められた『シェルター』だが、彼らの最も身近なピッチミュージックといえば...そう、今やiPhoneの広告塔にまで成り上がった、いわゆるファッション・サブカル系男子のアイドルことDEAFHEAVENが存在する。昨年、そのD F H V Nサンベイザーが大手音楽メディアPitchforkに高く評価された結果→言わば後輩であるハズのデフヘヴン人気が、先輩のアルセスト人気を大きく上回るという逆転現象が起こった。少なくとも前作までは、根暗のニワカブラックメタラーを相手に阿漕な商売をしながら自身の立ち位置を確立してきたアルセストだが、このまさかの逆転現象に流石のネージュも「アカン」と感づいたらしく、今作ではD F H V Nに負けじと音響ライクな音作りやメロディの質、プロデューサーやゲスト陣から録音面まで全てがリア充仕様もといメジャー仕様に合わせてきてる。この変化をナニかに例えるなら→あの頃のヒキコモリ系男子がシュガーロス・ダイエットによって生まれ変わり、まるでアニヲタが脱ヲタに成功したような、まるで田舎から上京したての大学生のような、まるでキョロ充のような雰囲気すら漂っている。要するに→いくら来日公演ができるほどの人気があると言ったって、所詮はニッチな界隈でしか評価されない...そんなインディ界隈すなわちピッチメディアに対してサイレント・ジェラシーを感じていたネージュの”メタラーとしてのコンプレックス”が炸裂してしまった作品、そんな皮肉めいた受け取り方もできなくないわけだ。あらためて、”コンプレックス”というモノは人をクリエイティヴッ!!にする大きな源だと再認識した次第で。なお、ピッチのレビューではボロクソの模様。

【Post-Black is Not DEAD】・・・自分の中で、ずっとアルセストとデフヘヴンって”全くベクトルの違うポストブラック”という認識があったから、この両者の関係を考察しようなんて気持ちは微塵も湧かなかったけれど、昨年の『サンベイザー』と今作の『シェルター』を聴き比べてみたら、その愚かな考えを改めざるを得なくなった。デフへが二作目で、アルセストがその倍の四作目にしてようやくポストブラックというジャンルにおける最終目的地『メイド・イン・デフヘヴン』に到達し、お互いに引かれ合い、影響を受け与えながらも最後は互いに笑顔で歩み寄った、その良きライバルであると同時に良き理解者、もはや師弟や兄弟というような概念を超越した関係性こそ、まるでディオとジョジョのような黄金の関係性』と言えるのかもしれない。そうなんだ、『シェルター』の中で『サンベイザー』というサウンドスケープに包まれている瞬間だけが、ぼっちの僕がリア充気分になれる唯一の瞬間なんだ。僕は今、浜辺でいちゃつくリア充カップルのようにウキウキでラブラブなんだ...。というわけで、一時はポストブラックは終焉を迎えたように見えた・・・が、どうやら間違いだったようだ→俺たちポストブラックの戦いはこれからだッ!

遠回りこそ一番の近道

【遠回りこそ一番の近道】・・・正直、前作を聴いて”終わりの始まり”を感じたというか(だから年間BESTにも入れてない)、曲展開やメロディそのものが少しあざとく聴こえてしまい、その漠然としたポストブラックやめたい感・・・そんなネージュの心の揺らぎが顕著に表れてしまった前作は、初期の名作と比べるとどうしてもネタ切れ感が拭いきれなかった。しかし、そのメロディに込められた黄金の音エネルギーは着実に今作の楽曲に活かされていて、例えばOpethで言うところのWatershedを深く突き詰めた結果がHeritageである事と全く同じように、前作のLes voyages de l'âmeがあってこその『シェルター』だと僕は思う。だから、今作を聴いて「初めからShoegazerやっとけばよかったのに」というクソみたいなニワカ発言には一切興味なくて、それこそジョジョ7部のジャイロが放った名言のように、ネージュにとっても【遠回りこそ一番の近道】だったんだ。事実、前作と同じ意識のままだったら駄作しか生まれなかった、つまりオワコン化不可避だっただけに、そんな中で吹っ切れた、潔い行動を取ったアルセストを僕は素直に正しく評価したい。そして何よりもネージュの覚悟に敬意を表したい。

【引かれ合い】・・・このように、全ては”俺の界隈”の頂点に君臨するANATHEMA黄金の精神、すなわち俺の界隈の中心へと”引かれ合う”ように集まってくる。昨年のKATATONIAも、今年のAlcestも必然的に...いや、運命的にね。なんにせよ、後輩のD F H V Nの奇跡の再来日(伝説の名古屋公演)が再び決まったからには、このアルセストにも来日して頂かないとナニも始まらないしナニも面白くならない・・・と思った矢先に来日キター!
 
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やくしまるえつこの新曲『X次元へようこそ/絶対ムッシュ制』を聴いた。

X次元へようこそ/絶対ムッシュ制

Tracklist
1. X次元へようこそ
2. 絶対ムッシュ制
3. X次元へようこそ(off vocal)
4. 絶対ムッシュ制(off vocal)
5. X次元へようこそ(TV size)

【偶然】・・・これは全くの偶然だったんだが→つい最近、とある某サイト(ぎゃお~)でアニメ『カウボーイビバップ』が全話配信されていると知って、ずっと前から観たいと思っていたのもあって、ほぼぶっ通しで一気に全話観た。で、『闇夜のヘヴィ・ロック』や『ボヘミアン・ラプソディ』や『ヘヴィ・メタル・クイーン』とかいう各話のタイトルからして、想像してた以上にメタルやジャズ要素の濃ゆいハードボイルドなアニメで、評判どおりの作画や個性のあるキャラクターを含め話の内容も面白かった。実はその【偶然】というのは、この『カウボーイビバップ』のオープニングテーマをはじめ劇中の音楽を担当していた人物こそ、今回の記事に大きく関係する人物・・・そう、菅野よう子だったんだ。ご存知のとおり、アニメ『攻殻機動隊』の音楽も担当している菅野よう子だが、そんな彼女と相対性理論やくしまるえつこのコラボが実現した新曲『X次元へようこそ/絶対ムッシュ制』がリリースされたので、さっそく聴いてみた。

【タウン・エイジとラジオ温泉】・・・昨年にリリースされた、やくしまるえつこ関連の作品は大きく分けると2つあって、一つは相対性理論の4thアルバムTOWN AGE、もう一つはやくしまるえつこ(ソロ名義)のアルバム『RADIO ONSEN EUTOPIA』だ。そのやくしまるえつこと並びバンドの中心人物だった真部ちゃんが(Vampilliaに加入するために(大嘘))脱退し、新しい相対性理論となってから初のアルバムTOWN AGEは、新旧のファンの間で賛否両論を生んだ。確かに、真部ちゃんが在籍した頃の相対性理論とは少し匂いは違ったが、個人的には”キッズ・ノーリターン”という”Post-Progressive”な曲にドハマりしたのもあって、思いのほか楽しく聴けた。そしてもう一方の『ラジオ温泉』についてだが、昨年からずっと聴きたいと思ってはいたんだけれど、どうしても”一発撮り”というかセッション音源という仕様に抵抗感があって、結局未だに聴けずじまいのまま、遂にこの新曲を聴く羽目になってしまった。つまり僕自身、やくしまるえつこのソロ名義での楽曲は生まれて初めて聴くことになる。



【スペース☆ダンディは、宇宙のダンディである】
・・・まず、今期の冬アニメ『おっぱい★ダンディ』もとい『スペース☆ダンディ』のEDテーマとして起用されている”X次元へようこそ”は、やくしまるえつこが作曲を、菅野よう子が編曲を担当した共同プロデュース作品となっている。まず初っ端からピンクレディーの名曲UFOのオマージュやってのけるえつこの遊び心に萌えちまうんだが、それから菅野よう子星人による80sシンセ・ポップ風のレトロ感を装った、まるで武富士ガールズばりのフィットネス気分が味わえるリズミカルなシンセを筆頭に、今堀恒雄星人によるファンキーなギター、懐かしの金曜ロードショーのオープニングテーマにありそうな、男のロマンに溢れたシネマティックなストリングスと山本拓夫星人によるダンディなアヴァンギャリズムを発揮するサックス、それらの音楽(宇宙)人の先頭で指揮をとるやくしまるえつこ星人が艦長を務める宇宙戦艦『まるえつ号』が、無限に広がるこの宇宙空間を右へ左へヒュンヒュンと縦横無尽に駆け巡り、80年代から未来すなわち現在の時空の狭間で遭難そうなんです(ポケモン感)。この優雅に舞い踊る情熱的なストリングスとフリージャズ風のサックスソロこそ、自分が『カウボーイビバップ』で耳にした菅野よう子の音楽そのもので、そのデジャブ感が面白かった。どうやらこの『おっぱい★ダンディ』の制作スタジオは『カウボーイビバップ』と同じボンズらしく、しかも監督や脚本もビバップのスタッフ陣で、そして音楽面でも菅野よう子を筆頭にあの大友克洋も参加してるってんだから、もうなんか全てに納得してしまった。このスタッフ/メンツだけでも、サブカルクソ野郎が挙って持ち上げそうなアニメだw まぁ何にせよ、宇宙レストラン『ブービーズ』のウェイトレス達のオッパイやケツに注目するのもいいが、このそうそうたるメンツが手がけた音楽にも耳を傾けながら鑑賞すれば、より一層楽しむことができるハズ。



【えつこのニャンニャン写真流出!?】・・・これは相対性理論でも同じだが、このやくしまるえつこといえば→その言葉遊びとも言えるユニークな歌詞だ。この”X次元へようこそ”でも、アニメ『おっぱい★ダンディ』の宇宙コンセプトに沿った【エヴェレットの多世界解釈】をモチーフにした歌詞が描かれていて、その中でもAメロの「ねえエヴェレット あなたの世界で あたしは一体どうなってるの 少し覗かせて ねえエヴェレット あなたが言うには 世界がとってもたくさんあるってちょっとよくわからないの」という、まるで『ジョジョ』のファニー・ヴァレンタイン大統領を女体化させた【エヴェレット】という名の乙女心の中をジッパーで覗いたようなメルヘンチックな歌詞や、「Easy Game, Easy Game」という英詞を”異次元”とかけた言葉遊びだったり、そして「進化の過程にキャンセルボタンはないのよ おわかり?」というポケモン全否定の歌詞など、この他にもこれぞ”えつこ節”って感じのアンニュイな歌詞や独特の歌い回しは建材だ。相変わらず、哲学的なのか何なのかよくわからない感じの”らしい”歌詞ではあるが、その中でも「ニャンニャンニャンニャニャン♪ニャンニャンニャンニャニャン♪」というえつこのコーラスにドチャクソ萌える。もはや→ニャンニャンニャンニャニャン(えつこぅ!)ニャンニャンニャンニャニャン(世界一ィ!)ニャンニャンニャンニャニャン(可愛いよ!)ってコール入れながらサイリウム振り回したくなるレベル・・・というのは冗談で、近頃はNHKのドキュメンタリー番組のナレーションを担当したりと、そろそろえつこの声優デビューも時間の問題か!?というのも冗談で、この曲はチャーチズGunみたいな、まるで銀河のような輝きを放つキラびやかな音の光がハジけ飛ぶシンセと天空を駆け巡るような壮麗優美なストリングスを従えて、耳元で囁かれているようなこそばゆいコーラスを交えながら、まるでバーモント・キッスのように甘~いえっちゃんの歌メロがキャッチーなサビも一つの聴きどころだと思う。

【やくしまるえつこ≒DIR EN GREY】・・・まさしく、やくしまるえつこらしい今時の”シティ・ポップ”ミュージックと菅野よう子オバちゃんらしい80年代の金曜ロードショー・ミュージックが一つになって、摩訶不思議な化学反応を起こしながら一次元→二次元→三次元...しまいにはX次元の壁をブチ破り、多次元化する未来を切り拓いていくかのような曲だ。現代と過去の時代の音がクロスオーヴァーすることで、それこそビッグバンもしくはスーパーノヴァ級のインパクトが生じ、その時空の歪みを音像化したような、まるで映画『ゼログラビティ』ばりの超宇宙空間すなわちブラックホールを形成する中盤の展開はポイントの一つ。ちなみに、えつこ本人が手がけた銀色のジャケ絵も4次元マンションみたくなってるのがまた面白い。だから、itunesなどの配信ではなく円盤(実物)を手に取って楽しむべき作品だと思う。そんで、えつこが描いた女の子とDIR EN GREYの京が描いたゼメキス家のキャラをコラボさせて脳内で戦わせる...もとい遊ばせるw ハッ!?あのDIR EN GREYの京が新曲のSUSTAIN THE UNTRUTHで「歪みねぇ...歪みねぇ...」と歌っていたのはこの事だったのか・・・。もはや【やくしまるえつこ≒DIR EN GREY】という解釈で・・・これはもうSTAP細胞並みの大発見かもしれない。つうか、そろそろえっちゃんには歴史的快挙を果たした小保方晴子さんとコラボして、その生物細胞学をモチーフにした曲を書いてもらいたい。

【マスタリングはテッド・ジェンセン】・・・今作のマスタリングには→シガロやデブ豚、DTやマストドンなどのメタル&ロック作品を数多く手がけた、世界一の売れっ子エンジニアとして知られるテッド・ジェンセンを迎えていて、その影響なのか、やはり音の鳴り方が非常にイイ!! シンセ/ストリングス/サックス/ボーカルの分離がイイ!!まるでカーズ様のように、宇宙空間に放り出されたような錯覚を憶えるほどの、広々とした音の立体感を意識した音作りで、それこそ愛用しているIE800のポテンシャルを最大限に発揮するかのような、とにかく気持ちのいい音だ。これは(off vocal)だと顕著に感じる事なんだが→(off vocal)で聴くとストリングスの鳴り方というか音の抜け方が異様に綺麗で、もはやこの曲は”インストが主役”と言っていいほど、あらためて”菅野よう子節”全開のフリーダム過ぎるトラックに笑っちまう。まるで「暗黒物質の玉手箱やぁ~」と言わんばかりの、ノビノビとした賑やかな音を奏でている。しかもインストだと、コーラスのニャンニャンニャンニャニャン♪が一際目立つし、えつこの息継ぎにフェチ心をくすぐられる。これは人によっちゃインストのが面白く感じるかも。それくらい、こうも”良い音”を聴かせられちゃうと、本家相対性理論の曲もテッドの音で聴いてみたい、そんな欲求が膨らんでしまう。この日本では吉井和哉や斉藤和義、宇多田ヒカルやYUI、UVERworldやVAMPS、最近ではDIR EN GREYの新曲SUSTAIN THE UNTRUTHのマスタリングを担当しているテッドだが、言わずもがな、そのDIRの新曲より音はイイです。でもそれって結局、米津さんのミックスが良いだけなんじゃ・・・(小声)



【ムッシュムラムラソーセージ】
・・・完全にタイアップ曲の”X次元へようこそ”の影に隠れちゃってるが、実はもう片方の”絶対ムッシュ制”も面白い曲だ。この曲はやくしまるえつこJimanicaの共作で、イントロから真部ちゃんがいた頃の相対性理論を彷彿とさせる(MVも理論のYOU & IDOL風)、メルヘンチックなメロディとロックな激しいノリで展開するわりとシンプルなシティ・ポップ系の(聞き慣れた)曲調で、何といってもこの曲の目玉は、なにやら数年ぶりに披露されたというやくしまるえつこのギター・プレイだろう。中盤からクライマックスにかけての、まるで大友良英ばりのギター・ノイズをぶっ放すえつこに再び萌えちまうと同時に、『あまちゃん』の能年玲奈ちゃんが『笑っていいとも』に出演した際に、やくしまるえつこから電報が届けられていた謎の伏線()がようやくココで繋がった、というわけだ。これには能年玲奈ちゃんも「かっけ~」。

【やくしまるえつこ VS, ローレン・メイベリー】・・・こんな感じで、聴く前からやくしまるえつこ菅野よう子は相性良好なイメージがあったけど、実際その通りの安心した。なんだかんだ、まるえつソロも相対性理論も大きな違いはなくて、でも相対性理論みたいな独特のクセはないし、思いのほかアッサリとした曲だったから、この際(せっかくのコラボだし)もっと派手にやらかしてもよかったんじゃあないか?って。なんか真部やん不在の『TOWN AGE』で理論が”ソロっぽくなった”という人の意見に、何故だか納得してしまった。二曲ともそれほどパンチは強くないし、決して想像した以上のものではないけれど、本家の相対性理論に優るとも劣らない極上のポップ・ミュージックを提供しているし、そんなん関係なしにえつこのニャンニャン画像...もとい【えつこ×よう子】ってだけで聴く理由としては十分だ。それと最近はチャーチズのデビュー作を頻繁に聴いていたのもあって、両者に通じる80sライクなシンセ・サウンドに終始ニヤケっぱなしで、ワンチャン【やくしまるえつこVS,ローレン・メイベリー】の日英萌声対決させたくなった。うん、もはやえつこは日本のスティーヴン・ウィルソン、日本の音楽界における卑弥呼だな!

X次元へようこそ/絶対ムッシュ制
やくしまるえつこ
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DIR EN GREYの新曲『SUSTAIN THE UNTRUTH』を聴いた。

Artist DIR EN GREY
DIR EN GREY

Single 『SUSTAIN THE UNTRUTH』
猿

【sukekiyo】
・・・おいら、ずっと前から【DIR EN GREY≒℃-ute】という解釈を自分の中に持っていて、そのBABYMETALBiSらの通称【アイドル界のDIR EN GREY】が昨年のCDJに出ることが決まり、しかし肝心のDIR EN GREYが出演しないと知って、とても残念に思っていた・・・が、ここからが話の本題で→なんとベビメタが出演する30日のメンツに”sukekiyo”なる謎のベールに包まれたバンドが、実はDIR EN GREYのメンバーが関係するプロジェクトなんじゃあないか・・・?そんな噂がまことしやかに囁かれていた。その真相は→噂どおりDIR EN GREYの絶対的フロントマンのサイドプロジェクトだという事が明らかとなった。この驚愕の事実を知って、なおさら【DIR EN GREY≒℃-ute】という謎の解釈および理論を持っている自分は、昨年のCDJに落選祭りの末結局行けなかった事を、つまりベビメタ~℃からのsukekiyoで回せなかった事を、今でも後悔しても後悔しきれないでいる。まぁ、そんな自分語りは置いといて→そんなDIR EN GREYが前作の新作ミニアルバムTHE UNRAVELINGから約9ヶ月ぶりに放つ新曲『SUSTAIN THE UNTRUTH』を聴いた感想なんだけど。

【DIR EN GREY=Djent】・・・あの8thアルバム『DUM SPIRO SPERO』以降、活動休止や京の喉ボロなどの困難を乗り越えて、昨年1月にリリースされた『輪郭』を片手に地獄の底から蘇った彼らの姿は、なんとDIR EN GREYという名の『進撃の巨人』に変貌を遂げていた。その驚くべき進化は、倒されれば倒されるほどナニを漏らして強くなるジャングルの王者ターちゃん♡ならぬ、自傷すれば自傷するほど巨人化していくDIR EN GREY、といった感じだ。そして、そのDIR EN GREYという名の『進撃の巨人』は、この最近の進撃の巨人風メイクを予感させた『輪郭』から3カ月後にリリースされた『THE UNRAVELING』で、更なる深化を遂げる事となる。この作品は、過去の楽曲をリメイクすなわち再構築する事を目的としたミニアルバムで、そのアルバムに収録された新曲の”Unraveling”には、DIR EN GREYという名の『ジェントの巨人』が皇帝KATATONIAを喰らい尽くすような”凄み”が込められていた。まさかDIR EN GREYがジェントやるなんて...誰もが驚いたかもしれない。がしかし、2012年に行われたライブIN SITUの開演前BGMに流れたKATATONIATesseracTの曲を伏線()として理解ッした僕は、特別驚きはしなかった。でもやっぱ驚いた。



【嘘を継続する】・・・そんな『THE UNRAVELING』から約7ヶ月ぶりのシングル『SUSTAIN THE UNTRUTH』は、リーダーの”シンプル””カッコイイ曲”・・・そのような事を雑誌のインタビューなどで頻繁に語っていて、正直聴く前から期待感そのハードルは高かった。その”シンプル”というフレーズからDIR EN GREY屈指の名曲”THE FINAL”なんかを想像していた。でも実際は想像したものとは違うものだった。

【音の良さ】・・・第一印象こそ良かった。まず”音”がイイ。それもそのはず、今回のミキシングにはマソソソ・マソソソやディスターブドなどのヌ~・メタル勢の作品で知られるベン・グロッセを、そしてマスタリングにはやくしまるえつこの新曲『X次元へようこそ / 絶対ムッシュ制』を手がけた、世界一の売れっ子エンジニアことテッド・ジェンセンを迎えている。その音の相性も影響しているのか、インダストリアルなアレンジを効かせながら、コーンなどの90sヌー・メタルもしくはパンテラのダレルリスペクトなモダンヘヴィネス、グランジもしくは前作譲りのDjent的なギョーン成分配合のグルーヴィにウネりにウネるリフ回しからは、過去のDIR EN GREY(Nu-Metal)と今のDIR EN GREY(Djent)を繋ぐ栄光の架け橋のような、そんな深い意味合いを感じ取る事ができる。正直ここまで”モダン”な音を極めたヘヴィネス、ここまでエゲツナイ音が出せるギタリストってメシュガーのフレドリック・トーデンダルDIR EN GREYを含めて世界でも数えるほどしないないだろう。他にも、イントロのギター・メロディの入り方がDream Theater”Home”『Last Fair Deal Gone Down』『The Great Cold Distance』あたりのKATATONIAを、ジェント成分配合のギョーンリフやキザミリフ的にもDT”The Enemy inside”を彷彿とさせた。まぁ、それらからの影響は何一つないと思うが。

【サビ】・・・ここ最近のシングルにはサビらしいサビというのがなかった。しかし、まるで『DSS』という重圧と呪縛から解き放たれたかの如く、まるでモノリスに初めて触れた猿のように『喜』びを全裸で表現する京が伸び伸びと歌い上げるキャッチーなサビのメロディは、ここ最近のシングルの中では久々に京の本領発揮ってやつだし、この”SUSTAIN THE UNTRUTH”の大きなセールスポイントとなっている。極端な話→この曲の歌メロはほぼサビの部分だけ。なんだけれど、こういう派手目なサビって様式美的な曲にこそ映えるサビというか、つまりイントロ~Aメロ~Bメロとジックリ段階を踏んで、そして最後にドラマチックなサビへと繋ぐベタな構成/曲調でこそ映えるサビだと思うから、この【イントロ~Aメロ~Bメロはキング・クリムゾンですっ飛ばしてからのサビ】...こんな不自然な曲調では、このサビの真価が発揮できるわけがない。だから、結果的に取ってつけたような煮えきらないサビとして聴こえてしまい、もはや曲として成り立っているのかすら疑問に思う。なんつーか、【歪みねぇな~歪みねぇな~サビ~サビ~サビ】みたいなイメージ。どんだけこのサビ好きなんだお前ら...どんだけこのサビ聴かせれば気が済むんだ...ってくらい、極端だが再生すると同時にイントロからサビに瞬間移動する感じ。ここまで京のボーカル/サビを蔑ろにする曲では、京お得意の「ほっちゃーん! ほ、ほーっ、ホアアーッ!! ホアーッ!!」という声豚リスペクトなスクリームも虚しく響くだけだ。

【シンプル】・・・確かに...”シンプル”だ。個人的に、”シンプル”という言葉を聞いて連想するのは→KATATONIA”Forsaker””The Longest Year”そして”Deliberation”だったりするんだが、しかしこの”SUSTAIN THE UNTRUTH”はソレラの”様式美”的な曲とは似ても似つかないものであった。むしろ”様式美”のソレとは真逆で、展開や場面に繋がりがないというか・・・そうだ、展開に”リズム”がないんだ。展開に”リズム”がないことで、サビが本来のサビとして機能していないんだ。むしろ前作の”Unraveling”のが様式美的かもしれない。なんか無理に”シンプル”という言葉を意識し過ぎた結果→少し展開が強引というか雑のような気がする。できる限り余計な音を削ぎ落とした京のボーカル、薫&ダイのギター、トシヤのベース、シンヤのドラムを聴けば分かるように、これまでとは明らかに音の情報量が少ない。そういった”音”的な意味では”シンプル”な曲だと言えるし、余計な音すなわち全ての毛を毟り取られたジャケの猿に対して納得が生まれる。まるで【カテゴライズ不能かつ不要】とアオリ続けてきたDIR EN GREYの化けの皮が剥がれ落ちたその姿こそ、丸裸のイエローモンキー・・・という今のDIR EN GREYが置かれた裸の王様的な状況を暗示しているかのようだ。これが良曲と言える人は堂々と信者すなわち虜を名乗っていいけど、この新曲を褒めてる批評家およびライターは信用しない方がいいです。つうか、前々から思ってたけど、【カテゴライズ不能】とか言いつつ【不要】ってホント謎だよな・・・。でも正直、前のライブでMACBRE再構築を生で観て衝撃を受けた身としては、今のDIR EN GREYに”シンプルさ”なんか求めて、その先に一体何があると言うのか?という疑問にブチ当たった。

【戦犯ギターソロ】・・・この曲のマイナス要素はこれだけではなくて、もう一つある。それはギターソロだ。この曲は基本的に90年代のヘヴィロックを猿マネしたシンプルな曲調だが、そのシンプルな中にも、ちゃっかりギターソロだけは入っている。ここ最近の曲にもソロは入っていたけれど、それらの場合は曲展開の中で必要不可欠な存在としてその価値を見出していた。しかし、今回に限ってはGソロの必要性が微塵も感じられなかった。それこそ”取ってつけた”ような、何とも言えないような”やっつけ感”というか、とにかく蛇足感がハンパない。もはや某ブルルンに「Gソロ入れないとインタビュー記載してあげないよ?」って脅されてるのかと一瞬勘繰っちまうほど、あまりにも酷いソロだ。のリフセンスやギターの音作りは日本でもトップクラスだと言い切れるが、しかしGソロに関しては擁護しようがないくらいドイヒーだ。なんかもうKATATONIAのアンダースに弟子入りしたほうがイイんじゃねーか?ってアドバイスしたいレベル。薫のリフセンスが良いと褒めてみても、この曲のリフもわりと単純(シンプル)なリフが主体だし、薫→「やっべwリフ思いつかねーからワチャワチャてきとーに頼むわ京w」 京「お、おう。歪みねぇ...歪みねぇ...」みたいな投げやり感ある。

【猿の惑星】・・・結論から言って→名盤『ウロボロス』以降のシングルの中では一番ピンと来なかった。確かに、オーストラリアのKarnivoolに肩を並べる”モダニズム”を極めたギターのグルーヴ&ヘヴィネスは、どこか単調さを感じた『DSS』とは比べ物にならないほどの色気があるし、そのヘヴィネスを最大限活かす事にだけ特化したミキシング/マスタリングも申し分なく(唯一サビの部分だけは否定的だが)、京による明確に”聴かせるサビ”というのはホントーに久しぶりだったから、色々な意味で興味深く聴くことができた。このように、部分部分で評価できる所は沢山あるんだけれど、ただ”楽曲”としての完成度は過去最低と言わざるをえない。ここ最近のシングルと比べても、何度もリピートしたくなるような中毒性は至極薄い。皮肉だが全てが”シンプル”なだけあって、必要以上に聴き込む要素が一切ないというか・・・そう考えると、やっぱり”つまらない”曲なのかもしれない。それこそ”音は面白いけど曲はつまらない”という、至って”シンプル”な答えに行き着くわけです。ホント、それぞれの素材は良いだけに、つくづく”もったいない”曲だと思う。いや、これは決して”SUSTAIN THE UNTRUTH”が悪いというわけではなくて、前シングルの『輪郭』『Unraveling』の完成度が高すぎたってだけで、ここ最近不足していたサビらしいサビだけでも聴く価値は十分にあるし、その二曲に勝るとも劣らないDIR EN GREY『今』が体感できるのは確かです。でも、THE BAWDIESクレイジーケンバンドのジャケ/デザインを担当している吉永祐介さんが手がけた猿ジャケに曲が完全に食われちゃってる、という本音は禁句ですw

BiS EN GREY
BiS EN GREY


【BiS EN GREY】・・・そーえば【アイドル界のDIR EN GREY】ことBiSの新曲『STUPiG』と同発だった事をスッカリ忘れていた。このフラゲ日のオリコンランキングは、念願の【BiS EN GREY】が誕生した瞬間だった(なお、週間では数百枚差でDiR EN GREYBiSを上回った模様)。この順位を見れば分かるように、BiSに売上で喰われて【BiS EN GREY】になった瞬間がDIR EN GREYの全盛期と言われかねない。まぁ、それはそうとして→こうやって新曲がリリースされるたびに、リスナーの間で賛否というか議論を巻き起こすDIR EN GREYってやっぱ面白いバンドだと再確認した。と同時に、今思うと『DSS』が出る前のシングル『激しさと、この胸の中で絡み付いた灼熱の闇』~『LOTUS』~『DIFFERENT SENSE』の流れって凄かったんだなって。ちなみに、”流転の塔”のアコースティックVerは、Opeth”The Throat of Winter”を彷彿とさせるスパニッシュなアコギをフューチャーした曲で、京のボーカルも新録となっている。が、去年にKATATONIA『死の王』リメイクこと『Dethroned & Uncrowned』を聴いている身からすると、イマイチ好きになれなかった。

【イ ン テ ル 長 友】・・・最後に→この新曲”SUSTAIN THE UNTRUTH”が、来たる次のフルアルバムへの不安要素として聴こえるか、それともポジティブな要素として聴こえるかは人それぞれだが、この僕は”不安要素”として聴こえてしまった。前作の”Unraveling”のレビューの時に、ドヤ顔で「次のアルバムはウロボロス並みの傑作になる(キリッ)」と言ったが、残念ながら・・・その前言を撤回せざるをえなくなった事を、今ココに報告したい。

               薫よ、余計なことはやめておけ。 
         今はまだ、自分の技術の向上のみに専念する時。 
              そんなことをするのは10年早い。 

(しかし、薫は精神的に油断が生じているのか?だとしたら、先は長くないぞ)
 
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