2. Keep It Healthy
3. Love Is To Die
4. Hi
5. Biggy
6. Teese
7. Disco//Very
8. Go In
9. Feeling Alright
10. CC
11. Drive
12. Son
13. Love Is To Die - Extended Alternate Mix
14. Love Is To Die - The Line Of Best Fit Live Session
13. Love Is To Die - Extended Alternate Mix
14. Love Is To Die - The Line Of Best Fit Live Session
【ウォーペイント】・・・このUSはロサンゼルス出身のWarpaintといえば→2009年にリリースされたEP『Exquisite Corpse』でデビューを飾り、その翌年にメジャーレーベルのRough Tradeから1stフル『The Fool』をリリースするやいなや、その翌年の2011年に(自分が予想したとおり)フジロックで初来日を果たしたりと、今や世界中で爆発的な人気を博する存在となったウォーペイント。初期の頃こそ、ベーシストのジェニーの姉で女優のシャニン・ソサモンやレッチリのジョシュが在籍するバンドとして大きな注目を浴びていたが、しかしその二人が脱退した今の”真・ウォーペイント”にとっては、もはやそんなんどーでもいい事なのかもしれない。
【愚者】・・・2010年にリリースされた1stフル『ザ・フール』を聴いた時は結構な衝撃だった。(一応)フロントマンのエミリー・コーカルと元クソDT野郎ことジェイムス・ブレイクのガールフレンドであるギタリストのテレサ・ウェイマンによるサイケデリックかつメランコリックなヤンデレ系の歌声とギターのメロディが、まるでグリム童話のようにメルヘンチックで仄暗く幽玄な【ATOMSフィールド】を形成しながら、ゆるふわオッパイ姉ちゃんことジェニー・リーのタイトなベースラインと当時ドラマーのデイビッドによるリズム隊、そして女子三人によるコーラス/ハーモニーが妖しく交わる心地よい浮遊感と共に、まだ少しあどけない乙女心のような衝動的かつ焦燥的なリズム&グルーヴを刻みながら、デビュー作にして既に自身の”バンド・サウンド”を確立していた。
【プロデューサー=シガーロス&ミキシング=レディオヘッド】・・・それでは、その前作から約四年ぶりとなる待望の新作で、セルフタイトルを掲げた今作の『ウォーペイント』はどうだろう?結論から言っちゃえば→「こいつら一体どこに向かってんだ・・・」というお話。で、まずオープニングを飾るのは→メンバー四人が仲むつまじくセッションする様子が目の前に映しだされるイントロの#1、そのインストのRadioheadや中期ANATHEMAを連想させる、いわゆる【ATOMS】に対する意識の高いゆるふわ系の耽美な空気感を引き継いで、存外アッサリとしたラフなノリで展開する#2”Keep It Healthy”こそ、ウォーペイントらしいアンニュイでありながらも童話のようにポップな世界観と、まるで思春期を迎えた乙女心のように不規則で不安定なリズムを刻んでいく、実に”バンド・サウンド”然とした曲で幕を開けるが、しかし次の#3”Love Is to Die”以降は少し話が違ってくる。それはまるでポストブラックレジェンドことAltar of Plaguesの名曲”God Alone”顔負けのアンチクライスト感が込められたノイジーなイントロから、ドコかしらナニかしらの狂気をまとった雰囲気とEPの名曲”Elephants”を彷彿とさせる中毒性の高いトリップ感を共存させながら、メインVoを担うテレサの寂寥感を誘う気だるい歌声とエミリー&ジェニーによるフェミニンなコーラス、そしてメランコリックにゆらり揺らめくリリカルでいて繊細なメロディが、シングル曲らしくキャッチーに美麗な旋律を奏でていく。この#3だけは初聴きで名曲だと思ったし、ここまでの流れは今作一番のハイライトと言っていい。で、ここまでの率直な感想としては→「なんかUKバンドっぽくなった?」という事。それもそのはず→なんと今作のプロデューサーにはU2やシガーロスなどの大物を数多く手がけたフラッドことマーク・エリスを迎え、更にミキシング(#3,#9)にはレディへのプロデューサーとして知られるナイジェル・ゴドリッチが担当・・・ってんだから、さっきまでの自分が漠然と感ていた妙な”違和感”というか微妙な音の”変化”に対して自然と納得ッが生まれた。確かに、この”俺の感性”の心臓部に直結する独特の浮遊感はUK特有のソレだ。最近だと、このウォーペイントや俺たちのアイドルローレン・メイベリーたそ率いるチャーチズと共に、来月のHostess Club Weekenderで来日するDaughterのイメージに近いかもしれない。
【ジェイムス・ブレイクのDT奪った結果www】・・・序盤の#1~#3までは極上のアトモスフェリック・ミュージックで申し分ないんだが・・・問題は次からだ。まるで呪術でも唱えるかの如く、シャーマニズム溢れるイーサリアルなボーカルとトリップ・ホップ然としたミニマルなリズムをもって、そこへエレクトロニカの絶妙な味付けを加えながら深い谷底に堕ちていくような展開力を見せつける#4”Hi”、その#4以上に後期The Gatheringを彷彿とさせる欧州風イーサリアルな感度とGrimesやElsianeらのカナディアン勢を連想させるファンタジックでオリエンタル、そしてエキゾチックなムードを高めた#5”Biggy”、フォーク系SSW的なアコギの語り弾きで始まると同時に幻想的なボーカルに惹き込まれる#6”Teese”までは、レディへ直系のエレクトロなアレンジを際立たせたイーサリアル/トリップ・ホップ/ダウンテンポ系のチルい楽曲が続いていく。もはや「こいつら一体どこに向かってんだ・・・」としか言いようがなかったし、これには本流のチェルシー狼もエスベンと魔女も→「ちょっと...ウチラの縄張り荒らさんといてや...」とドン引き...。確かに、デビュー作の時点で既にポストロッキンなアプローチを効かせた”ミニマル”なメロディを持ち味としたバンドではあったけれど、まさかコッチ向きに”ミニマリズム”を発揮してくるなんて思っても見なかった。その中でも、#4”Hi”の幾つもの音が複雑に重なり合う予測不能な展開力の高さに、彼女らの隠しきれない”Post-Progressive”なセンスを垣間見ることができた。
【Warpaint×Phantogram】・・・ここまでの暗鬱な空気をぶった斬るように、すっ頓狂なノリとリズムをもってダンサンブルに繰り広げる#7”Disco//very”のアヴァンギャルドな存在感にぶったまげ、再びオリエンタルなアナログ臭い匂いを醸し出すダウナー路線の#8”Go In”、そして後半のハイライトを飾る9”Feeling Alright”は、EPの”Beetles”というより...むしろPhantogramの”When I'm Small”を彷彿とさせる、それこそジェニーのゆるふわ系おっぱいがフワッフワッっとリズミカルに揺れ動く官能的な様子が脳裏に描写されるタイトなベースラインがキモとなるオルタナで、特に中盤からのプログレスな展開美とギター&低音ニカのエモい絡みを耳にしたら→「いや、これもうファントグラムそのものじゃん」って思った。まさか、まさかウォーペイントとファントグラムに親和性を感じるなんて思ってなかったから、素直に面白かった。と同時に、彼女らの音楽に対する懐の深さを思い知らされた。だから今年のサマソニかフジロックにPhantogram呼ぶべきだと思うよマジで。で、それ以降も奈落の暗黒へと誘う#10やニカ色全開の#11、そしてラストの#12まで、終盤の展開は著しくエクスペリメンタル化が進んだ曲が続き、完全に聴き手の存在を置いてけぼりにする。ちなみに、国内盤のボートラはシングルの”Love Is To Die”を比較的ストレートなバンド・サウンドで鳴らしたオルタナVerで、それこそ4年前のウォーペイントが今の『ウォーペイント』やってみた感じの曲でスゲー面白い。もう一曲はThe Line of Best Fitで披露された同曲のライブVerを収録。
【ウォーペイントの本性】・・・前作こそ、Shoegazer/Post-Rock/Gothic/Dream-Pop/Psychedelicなどの要素を取り込んだ、わりかしポップな可愛げのあるオルタナ~インディやってたが、しかし今作はトリップ・ホップ/アブストラクト・ヒップホップ/イーサリアル/エレクトロニカ/チルアウトがベースの音に、それこそ「愛とは死...愛とは死の回避...愛とはダンス...」というメンヘラ臭い歌詞の如く、まるでヤリ逃げされたオンナの怨念が込められたような、尋常じゃなく正常じゃない女の本性を垣間見せる作風となっている。もしかして・・・もしかするとコイツラの本性ってコッチなの!?って。それぐらい、まるでジェイムス・ブレイクに生気(精気)でも吸い取られたのかと勘ぐりたくなっちゃうほど、いい意味でヤサグレ過ぎてるというか、この4年の間で一体ナニがあったんだ?と心配になるくらいの変貌を遂げていたんだ。それはまるで垢抜けない田舎の女子大生が上京してあらゆる経験を積んで、いつの間にかイーサン叔父貴という名の『精神崩壊』系男子譲りの悟りを開き、漆黒色のダーティなエロスを身にまとった妖艶な4年生に成長したみたいな・・・。ま...まさか、これがあのジェイムス・ブレイクのDTを奪ったオンナの『愛のカタチ』だとぉ!?くっそ!何かわからんがジェイムス・絶倫・ブレイク許すまじ!
【UKミュージック】・・・極端な話→1stの”ロック”なノリというかグルーヴ&リズムにノッてキャッキャウフフと盛り上げるというよりは、むしろ逆にトリップ・ホップやポスト・パンク色の強い”ミニマル”な一定のリズムを意識した、いわゆるアブストラクトなトリップ・サウンドをベースに、そこへ某プロデューサー&某ミキサーの腕による実にUKミュージック然とした洗練された音作りと絶妙なニカアレンジが交わった、あのイーサン叔父貴もついつい(ニッコリ)しちゃうほどのダーク・ミュージックやってるわけ。そもそも、このウォーペイントって元々UKミュージックとの親和性が高い、もしくは相性の良いバンドだったけど、今作で遂に本家本元のレディへ界隈の大物を味方につけた結果→二作目にして早くも驚異的な深化を遂げている。ヘタにポップ化するのではなくて、このウォーペイントの根幹にある独創性を更に深く突き詰めた結果というか。それこそ、スウェーデンのCarbon Based Lifeformsや昨年の俺的年間BESTの実質一位にランクインしたアブストラクト・ヒップホッパーSadistikの『Flowers for My Father』が、この『ウォーペイント』への伏線()だったんだと自分勝手に納得してしまった。そして上記に貼った”Biggy”のBaardsen Remixを聴いて、遂にナニカを確信した(正直ボートラはこれがよかった)。だから今作がUKチャートでトップ10入りしたと知っても別に驚かなかった。
【真・ウォーペイント】・・・新機軸の#7をはじめ、この一枚でホントーに多種多様な”流行りの音”にトライしているので、当然作品の統一感や俗にいう”キャッチーさ”というのは皆無に近いが、その音が持つポテンシャルは前作と比じゃないレベルの高さを誇っている。それこそメンバー4人が奏でる音の残像、その音のシルエットという名の線が点で重なり合う決定的瞬間を表したような、ジェニーの旦那である変態映像作家ことクリス・カニンガムが手がけた今回のジャケが全てを物語っていると言っても決して過言じゃあなくて、メンバーひとり一人が奏でる木綿のように繊細で緻密な音が表裏一体化した結果が、まぎれもない今の『ウォーペイント』なんだという、それを直に証明するかのような作品だ。そう考えると、あの#7はある意味で最も”今のウォーペイントらしい”曲と言えるのかもしれない。それと国内盤のライナーノーツにも記されているように、二回のレコーディングを延期する合間に、ロスから二百キロ離れたジョシュア・トゥリーに一軒家を借りて一ヶ月間の共同生活を送り、メンバー全員でジャムり合って音を互いに高め合った結果→気のせいか”スタジオ・アルバム”というよりも、ある意味で”ライブ・アルバム”的な、まるで目の前で演奏しているかのような音の臨場感と生々しさがある。それにより、ウォーペイントの持ち味である、体にまとわりつくような粘り気のあるグルーヴ感により厚みが増したようにも。もはや謎の貫禄すらある。少なくとも、いわゆる”ガールズ・バンド”と呼ばれるバンドの中では他の追従を許さないレベルにまでキテるのは確か。
【イントロが全て】・・・デビュー作のイメージで本作を聴くと、あまりの変わりように肩透かしを食らうこと必須だし、その完成度は文句なしに高いが、いかんせんデビュー作と比較すると圧倒的にツカミが弱い気がする。なんか自分たちの世界に、内に内に引きこもってる感じ。でもチャーチズのローレン・メイベリーちゃんが好きって言うんなら僕も好き!ボニョ、ローレン好き!・・・というのは冗談で→わりとマジな話、いわゆる【ATMS】や【Post-Progressive】にある程度の理解ッがないと厳しいかもしれない。しかし、それらに対する理解ッがあれば1stの『愚者』より好きになること請け合い(ソースは俺)。個人的には→いわゆる【ATOMS】に対するウォーペイントの意識の高さ、そのATMS空間表現力の異常なセンスが垣間見れた事が一番の収穫だったし、それと同時に自分の審美眼は決して間違っていなかったと再確認できた。結局のところは、イントロの#1に対して”ナニを感じ取ることができるか”が鍵のような気がする。またライナーノーツの中でテレサが→「100%現在のラインナップで作り上げたのは今回が初めて。だからこそ、バンド名をタイトルに掲げるのが自然に思えた。このアルバムは一つの大きなリセットだと思うの。」と語るように、実質これが”デビュー・アルバム”すなわち”スタートライン”に立った事を証明するかのような、それこそ一ヶ月間引きこもってジャムった様子を身近で体感させるような、たった1分51秒程度の”イントロ”が今の『ウォーペイント』、その全てを象徴する重要な一曲と言えるのではないか。僕自身、これほど存在意義のある”イントロ”を聴いたのは生まれて初めてかもしれない。
【カロリーOFF】・・・それにしても、このWarpaintといいAlcestといいVampilliaといい(一つだけ明らかに浮いてる...)、ここ最近の”俺の界隈”の一部ではアイスランド式のシュガーロス・ダイエットが流行ってるらしい。おいら、実はシガロとか興味ないし一切聴かないんだが...まぁ何にしても興味深い現象ではある。でも中期ANATHEMAがレディへライクで、近年ANATHEMAがシガロライクだという事を考えると・・・「なるほど納得ッ」といった感じ。あと、これもライナーノーツに書かれていた事に関するんだが→シングルの”Love Is To Die”や”Teese”を筆頭とした、”LOVE”すなわち”愛”をテーマとした曲からしても、いわゆる”俺の界隈”の皇帝ANATHEMAを頂点とするKscopeが信念として掲げるLove &Peaceな、精神的な面も含めてあらゆる意味でPost-Progressive Sound的なアルバムと言えるのかもしれない。少しベクトルは違うが、KATATONIAのBサイドとかね。
【ピッチフォークへの憧れ】・・・そもそも、エミリーではなくテレサがメインボーカルを担当してる時点で、あの1stとはまるで違った作風になることは予想できたし、だから今作は「もうギターいらねーんじゃねーか?」ってくらい、ギターの存在感が薄い。その一方で、ゆるふわ系オッパイ姉ちゃんことジェニーのベースライン特別意識してなくても自然と耳に入ってくるくらい、一際に目立った作風でもある。要するに→Julianna BarwickみたいなSSW系にありがちなインディ・フォークっぽさ、すなわちピッチフォーク臭が著しく強くなった作品。だから今作に高評価を与えられる人ってピッチフォーカー並みの音楽ツウだと思うわ(なお、ピッチのレビューではボロクソの模様)。つうか、これ評価できるのって非DTの奴しかいないと思うわマジで・・・。でも個人的には、相対的な評価以上の”面白さ”を感じ取った作品ではあるし、正直ここまで楽しんで聴いてるのって俺だけじゃねーの?ってくらい。なにはともあれ、今年の上半期はこのWarpaintとPhantogramの新作に期待を寄せていたが、その期待に真正面から答えるような、意外なほど自分のツボをピンポイントに突いてくる伏線()回収作品で、これ以上ない幸先の良さです。