Artist Alcest

Album 『Les voyages de l'âme』

Track List
メタル界のナポレオンこと、フランスの貴公子ネージュ率いるフレンチ・シューゲーザーバンドALCESTの約2年ぶりとなる通算三作目『Les voyages de l'âme』なんだけど、”ポスト・シューゲイザー・ブラック”と称されるジャンルを一躍轟かせた2007年のデビュー作『Souvenirs d'un autre monde』であらゆる界隈に衝撃を与え、続いてブラック・メタル特有の黒い成分を大きく飲み込んだ前作の2nd『Écailles de lune』をリリース、そして待望の最新作となる本作の作風としては・・・まずは1stシングル”Autre Temps”を耳にした瞬間に『俺たちのアルセが帰ってきたーーーーーーーーーーーーーーーーッ!』・・・と、こんな状態になると思うんだけど、その曲限定で言うたら、ロリコン遊牧民の日常をリアルに疑似体験させる1stの頃の”アルセらしいアルセ”に回帰しているように聴こえる。が、決して1stの焼き直しなんかではなくて、童話のようなストーリー性に満ちた2ndの幻夢世界を経由してからの、その夢物語から目覚めた先に待ち受ける、虹色に光り輝く鳳凰が色鮮やかな翼を大きく広げ”Next-黄金体験”という名の桃源郷へと羽ばたいていく神々しい姿を、よりドラマティックに、よりシネマティックに描き写す、その真のノスタルジアの心を持つ神の姿に、俺たちの灼熱の魂は熱く昂揚し続け、最後は極上のカタルシスへと到達する・・・。で、要するに1stと2ndの美味しい所を合わせ持ちつつも、これまで以上に歌モノ化したネージュの吐息を中心に、甘酸っぱい泣きメロや神々しいエピックな美メロをプログレ的に(直接的な意味ではない)かつド派手な昂揚感を放ちながら、抒情詩的なノスタルジアを追い求めていく。その”メタルに有りがち”なベタでクサい、言わばDeafheavenばりに力強く激情的にそして大胆不敵な”あざとい”展開には、如何にしてアルセというバンドが”メタル”という界隈に立ち位置を定めているのかを、改めて俺たちに理解ッさせる。しかし、そのような”メタル”的な精神性を高めているせいか、1stや2ndにはあった”凄み”や”繊細さ”というのが感じづらくなっているのも確かで、1stのような究極の癒し系メランコリアや2ndのような夢と現実を行き来する極端なメリハリを彼らに期待した部分もあったせいか、多少なりの肩透かしがないわけではなかった。悪く言えばどっち付かずで中途半端な印象なんだけど、単純な話、グッとくるメロディが過去作と比べて少ない、、、って言うたらそれまでの話だったりするんだけど。まぁ、この辺の解釈、個々の感じ方によって本作への評価が分かれそうな気がする。残念ではあるが、現時点では”2012年度BESTッ!!”とは自信を持って、ましてやドヤ顔で言うことなんてできないキリッ。少々大袈裟だが、ネージュの才能にも限りが見えてきた、と感じる人も中には居そう。俺たちのアルセが”ダサいメタル”なんかに落ちぶれてしまった・・・という具合にね。当然至極、このネガティヴな一意見は過去の名盤と比較してみての話で、これ単体で聴けばそりゃーもうネージュ氏マンセーですわ。ネージュ!(おーさ)ネージュ!(おーさ)ネージュ!(おーさ)。そのネージュの歌についてなんだが、本作ではかなりポップな歌い方で、1stと2ndの頃は内省的な薄暗さを纏った歌を披露していたが、本作ではまるで躁状態に入ったネージュが常に幸せそうに囁いている感じ。で、#2と#6で聴けるLantlôsの新作並に感情的かつ感傷的に激昂する絶叫がこれまた激しく胸を打つ。今風のドゥーム×シューゲな激しいリフが主体の曲はLes Discretsさんチックでもある。
本作を象徴するかのような、ドラマティックかつシネマティックなストーリー性とネージュの民謡調の歌が美しきメランコリアを産み落とす#1”Autre Temps”、泣きメロとヘヴィなシューゲリフを交錯させながら、ネージュの激昂や疾走パートを交錯させながらプログレッシブに展開する#2”Là où naissent les couleurs nouvelles”、ひたすら泣きまくりのタイトルトラック#3”Les voyages de l'âme”、そして#6”Faiseurs de mondes”では、リリカルに展開してから~躁状態で激情しながら疾走する実にエピックなクライマックスにはデフヘヴンに匹敵する感情の高なりと魂の解放感を得る事ができる。これらの曲から分かることは、いつになく感情の起伏が激しい楽曲が多いという所で、特に#6なんかは”メタル”以外何者でもない超絶エピックな曲。だがしかし、#4や#5などは、今までのアルセ基準で考えると少しパンチが弱いというか、”捨て曲”扱いになっちゃうんじゃねーかと。初期の面影を残す#8はなかなか。
・・・というわけで、名盤1stや2ndのような穏やかに安らかに聴かせるリスニング・ミュージックというよりは、過去最高にノリノリ&epicッ!に聴かせる、そして何よりも”メタル”の精神を強く宿らせた本作品も、今年の目玉の1つとして聴き逃しは許されない絶対的マストな一枚。個人的には、1st>>>2nd>3rdの順の評価だけども、オススメ。
B

Album 『Les voyages de l'âme』

Track List
01. Autre temps
02. Là où naissent les couleurs nouvelles
03. Les voyages de l'âme
04. Nous sommes l'emeraude
05. Beings Of Light
06. Faiseurs de mondes
07. Havens
08. Summer's Glory
メタル界のナポレオンこと、フランスの貴公子ネージュ率いるフレンチ・シューゲーザーバンドALCESTの約2年ぶりとなる通算三作目『Les voyages de l'âme』なんだけど、”ポスト・シューゲイザー・ブラック”と称されるジャンルを一躍轟かせた2007年のデビュー作『Souvenirs d'un autre monde』であらゆる界隈に衝撃を与え、続いてブラック・メタル特有の黒い成分を大きく飲み込んだ前作の2nd『Écailles de lune』をリリース、そして待望の最新作となる本作の作風としては・・・まずは1stシングル”Autre Temps”を耳にした瞬間に『俺たちのアルセが帰ってきたーーーーーーーーーーーーーーーーッ!』・・・と、こんな状態になると思うんだけど、その曲限定で言うたら、ロリコン遊牧民の日常をリアルに疑似体験させる1stの頃の”アルセらしいアルセ”に回帰しているように聴こえる。が、決して1stの焼き直しなんかではなくて、童話のようなストーリー性に満ちた2ndの幻夢世界を経由してからの、その夢物語から目覚めた先に待ち受ける、虹色に光り輝く鳳凰が色鮮やかな翼を大きく広げ”Next-黄金体験”という名の桃源郷へと羽ばたいていく神々しい姿を、よりドラマティックに、よりシネマティックに描き写す、その真のノスタルジアの心を持つ神の姿に、俺たちの灼熱の魂は熱く昂揚し続け、最後は極上のカタルシスへと到達する・・・。で、要するに1stと2ndの美味しい所を合わせ持ちつつも、これまで以上に歌モノ化したネージュの吐息を中心に、甘酸っぱい泣きメロや神々しいエピックな美メロをプログレ的に(直接的な意味ではない)かつド派手な昂揚感を放ちながら、抒情詩的なノスタルジアを追い求めていく。その”メタルに有りがち”なベタでクサい、言わばDeafheavenばりに力強く激情的にそして大胆不敵な”あざとい”展開には、如何にしてアルセというバンドが”メタル”という界隈に立ち位置を定めているのかを、改めて俺たちに理解ッさせる。しかし、そのような”メタル”的な精神性を高めているせいか、1stや2ndにはあった”凄み”や”繊細さ”というのが感じづらくなっているのも確かで、1stのような究極の癒し系メランコリアや2ndのような夢と現実を行き来する極端なメリハリを彼らに期待した部分もあったせいか、多少なりの肩透かしがないわけではなかった。悪く言えばどっち付かずで中途半端な印象なんだけど、単純な話、グッとくるメロディが過去作と比べて少ない、、、って言うたらそれまでの話だったりするんだけど。まぁ、この辺の解釈、個々の感じ方によって本作への評価が分かれそうな気がする。残念ではあるが、現時点では”2012年度BESTッ!!”とは自信を持って、ましてやドヤ顔で言うことなんてできないキリッ。少々大袈裟だが、ネージュの才能にも限りが見えてきた、と感じる人も中には居そう。俺たちのアルセが”ダサいメタル”なんかに落ちぶれてしまった・・・という具合にね。当然至極、このネガティヴな一意見は過去の名盤と比較してみての話で、これ単体で聴けばそりゃーもうネージュ氏マンセーですわ。ネージュ!(おーさ)ネージュ!(おーさ)ネージュ!(おーさ)。そのネージュの歌についてなんだが、本作ではかなりポップな歌い方で、1stと2ndの頃は内省的な薄暗さを纏った歌を披露していたが、本作ではまるで躁状態に入ったネージュが常に幸せそうに囁いている感じ。で、#2と#6で聴けるLantlôsの新作並に感情的かつ感傷的に激昂する絶叫がこれまた激しく胸を打つ。今風のドゥーム×シューゲな激しいリフが主体の曲はLes Discretsさんチックでもある。
本作を象徴するかのような、ドラマティックかつシネマティックなストーリー性とネージュの民謡調の歌が美しきメランコリアを産み落とす#1”Autre Temps”、泣きメロとヘヴィなシューゲリフを交錯させながら、ネージュの激昂や疾走パートを交錯させながらプログレッシブに展開する#2”Là où naissent les couleurs nouvelles”、ひたすら泣きまくりのタイトルトラック#3”Les voyages de l'âme”、そして#6”Faiseurs de mondes”では、リリカルに展開してから~躁状態で激情しながら疾走する実にエピックなクライマックスにはデフヘヴンに匹敵する感情の高なりと魂の解放感を得る事ができる。これらの曲から分かることは、いつになく感情の起伏が激しい楽曲が多いという所で、特に#6なんかは”メタル”以外何者でもない超絶エピックな曲。だがしかし、#4や#5などは、今までのアルセ基準で考えると少しパンチが弱いというか、”捨て曲”扱いになっちゃうんじゃねーかと。初期の面影を残す#8はなかなか。
・・・というわけで、名盤1stや2ndのような穏やかに安らかに聴かせるリスニング・ミュージックというよりは、過去最高にノリノリ&epicッ!に聴かせる、そして何よりも”メタル”の精神を強く宿らせた本作品も、今年の目玉の1つとして聴き逃しは許されない絶対的マストな一枚。個人的には、1st>>>2nd>3rdの順の評価だけども、オススメ。
B
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